更新日: 2021.10.05 その他年金

年金にまつわる年数をもう一度整理(1)「10年」に関するもの

執筆者 : 井内義典

年金にまつわる年数をもう一度整理(1)「10年」に関するもの
公的年金の受給において、年数ごとに条件が定められているものがあります。何が何年必要かというところですが、全4回に分けて年数ごとにそのポイントを整理したいと思います。第1回目の今回は「10年」にまつわるものを取り上げます。
井内義典

執筆者:井内義典(いのうち よしのり)

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー

専門は公的年金で、活動拠点は横浜。これまで公的年金についてのFP個別相談、金融機関での相談などに従事してきたほか、社労士向け・FP向け・地方自治体職員向けの教育研修や、専門誌等での執筆も行ってきています。

日本年金学会会員、㈱服部年金企画講師、FP相談ねっと認定FP(https://fpsdn.net/fp/yinouchi/)。

老齢基礎年金を受け取るための10年の受給資格期間

20歳以上60歳未満の人は国民年金に加入義務がありますが、65歳からの老齢基礎年金の受給のためには10年の受給資格期間が必要です。その受給資格期間は【図表1】のABCを指しています。
 
【図表1】


 
Aは国民年金第1号被保険者(20歳以上60歳未満の自営業・学生等)、任意加入被保険者(国内に住む60歳以上65歳未満、20歳以上65歳未満の海外在住者等を対象)として各月の国民年金保険料を納付した期間や、第2号被保険者(厚生年金被保険者になっている会社員等)として厚生年金保険料を負担した20歳以上60歳未満の期間、第3号被保険者(20歳以上60歳未満で第2号被保険者の被扶養配偶者)だった期間等が該当します。
 
Bは国民年金第1号被保険者で保険料免除等を受けた期間、Cは国民年金に加入義務がなかった時期に任意加入しなかった期間や保険料が未納だった期間、20歳前・60歳以降の第2号被保険者期間などを指します。
 
A.保険料納付済期間、B.保険料免除期間を足して10年あれば受給できますが、AとBで合計10年足りない場合はC.合算対象期間を足して10年足せば受給できるようになります。国民年金に加入義務があるのに未納だった期間はこれらには含まれません。
 
以前は老齢基礎年金の受給資格期間は25年必要でしたが、2017年8月より10年に短縮され、10年あれば年金が受給できることになっています。未納期間が多く、受給資格期間が10年未満の場合は、1円も受給できません。
 

厚生年金加入もあれば2階建ての年金

まずは10年の受給資格期間を満たすことが必要です。そして、日本の公的年金制度は2階建てとなっていますが、この受給資格期間10年を満たした上で、厚生年金被保険者期間が1ヶ月以上あれば65歳から老齢厚生年金も受けられます。
 
10年以上の受給資格期間は第1号被保険者(任意加入被保険者含む)や第3号被保険者だけの場合は老齢厚生年金を受けられませんが、第2号被保険者期間が含まれていれば、当該期間は厚生年金被保険者期間となりますので、老齢厚生年金も受給できます(【図表2】)。
 

 
また、受給資格期間が10年あり、厚生年金被保険者期間が1年あれば、生年月日によっては60歳台前半で特別支給の老齢厚生年金が受けられます。
 

「10年で良い」というわけではない

10年の受給資格期間が必要ですが、当然、長く年金保険料を掛けたほうが老齢基礎年金や老齢厚生年金の受給額は高くなります。ちょうど10年では金額も少なくなるでしょう。
 
また、10年の受給資格期間を満たしていても、10年だけでは病気やけがで障害が残った場合の障害年金や、死亡した場合の遺族への遺族年金は要件が足りず、受けられない可能性も出てきます。それぞれ、初診日(障害年金の場合)・死亡日(遺族年金の場合)の前日時点で、

ア.初診日・死亡日の前々月までの被保険者期間のうち3分の2以上保険料納付済期間・免除期間があるか、
イ.初診日・死亡日の前々月までの直近1年以内に未納なし(※)か、

※初診日や死亡日時点で65歳未満が対象。2026年3月までの時限措置。

いずれか満たさないと受けられない場合があります。
 
10年が1つのポイントとなりますが、年金は老齢年金だけではないこともよく理解した上で、10年よりできるかぎり多く保険料を納付し、未納期間は作らないようにしておくことが望ましいでしょう。
 
出典
国民年金法
厚生年金保険法
厚生労働省ホームページ
国民年金機構ホームページ
 
執筆者:井内義典
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー

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