更新日: 2021.10.18 国民年金

学生時代に猶予された年金を「追納」。節税対策にもなるって本当?

執筆者 : 廣重啓二郎

学生時代に猶予された年金を「追納」。節税対策にもなるって本当?
日本国内に住む全ての人は、原則、20歳になったら国民年金の被保険者となり、保険料の納付が義務付けられます。しかし、学生の間は一定の条件の下、在学中の保険料の納付が猶予される制度があります。
 
これを「学生納付特例制度」といいます。今回は学生納付特例制度と、年金保険料の追納制度について解説します。
廣重啓二郎

執筆者:廣重啓二郎(ひろしげ けいじろう)

佐賀FPオフィス 代表、ファイナンシャルプランナー、一般社団法人日本相続支援士会理事、佐賀県金融広報アドバイザー、DCアドバイザー

立命館大学卒業後、13年間大手小売業の販売業務に従事した後、保険会社に転職。1 年間保険会社に勤務後、保険代理店に6 年間勤務。
その後、コンサルティング料だけで活動している独立系ファイナンシャルプランナーと出会い「本当の意味で顧客本位の仕事ができ、大きな価値が提供できる仕事はこれだ」と思い、独立する。

現在は、日本FP協会佐賀支部の副支部長として、消費者向けのイベントや個別相談などで活動している。また、佐賀県金融広報アドバイザーとして消費者トラブルや金融教育など啓発活動にも従事している。

国民年金保険料の学生納付特例制度とは?

学生納付特例制度とは、国民年金保険料の納付が困難な学生の方が、一定以下の所得など条件を満たした場合に在学中の保険料の納付が猶予される制度です。猶予期間中は、将来年金を受け取るために必要な受給資格期間に含まれます。
 
対象となる条件は以下のとおりです。
 

(1)令和3年度の所得基準(申請者本人のみ)

前年所得128万円(目安)+扶養親族等の数×38万円+社会保険料控除等の額以下
 

(2)学生の基準

大学(大学院)、短期大学、高等学校、高等専門学校、特別支援学校、専修学校および各種学校、一部の海外大学の日本分校に在学する方(夜間・定時制課程、通信課程も含む)
 
※各種学校は、修業年限が1年以上の課程に在学していること
※海外大学の日本分校は、日本国内にある海外大学の日本分校など
 
所得基準について家族の所得の多寡は問われず、上記の条件を満たすことで誰でも対象となります。
 
ただし、学生納付特例は申請の上、承認を受けることが必要ですので、住所地の役所の担当窓口、最寄りの年金事務所、在学中の学校(代行事務が認可されている場合)のいずれかで手続きを行います。
 

追納の条件は?

学生時代、学生納付特例による国民年金保険料の納付猶予の申請をした方は、保険料の追納制度があることをご存じでしょうか。
 
学生納付特例の承認を受けた期間がある場合、老齢基礎年金の受給資格期間には含まれるものの、全額の保険料を納付した場合と比べて将来受け取れる年金額は少なくなります。
 
この点を解消するために、猶予期間の保険料を後から納付できる「追納制度」が設けられています。追納により将来の年金額を増やすことができますが、下記の点に注意が必要です。


(1)追納が可能なのは、追納が承認された月の前10年以内の免除・猶予期間のみ
(2)学生納付特例を受けていた期間のうち、古い期間分から納付
(3)猶予期間の翌年度から3年度目以降の追納に関しては、経過期間に応じた加算額が上乗せ

 

追納すると節税できる?

納付猶予を受けていた国民年金保険料を追納するメリットは、将来受け取れる年金額を増やし、満額に近づけることだけではありません。追納した保険料は全額が社会保険料控除となるため、現在、一定の収入があって税負担をされている方は追納することで節税できるというメリットもあります。
 
例えば、年収500万円の方が、学生納付特例を受けていた2年間分(24ヶ月)の保険料約40万円を追納する場合、以下のとおり、年間8万円ほど節税できることになります。


所得税:40万円×10%(所得税率)=4万円
住民税:40万円×10%(住民税率)=4万円

なお、追納した場合は納付書・領収証書を保管しておき、年末調整か確定申告で社会保険料控除を適用するための手続きを忘れず行いましょう。
 

まとめ

学生納付特例制度を利用した方の中には、納付を猶予されていた期間の保険料を追納するかどうか迷われている方もいるかもしれません。追納について、将来受け取れる年金額だけで考えている方は、ぜひ、追納による節税効果がどのくらいか計算してみましょう。
 
ただし、追納可能な期間には10年以内と期限があるので注意してください。
 
出典
日本年金機構 国民年金保険料の学生納付特例制度
 
執筆者:廣重啓二郎
佐賀FPオフィス 代表、ファイナンシャルプランナー、一般社団法人日本相続支援士会理事、佐賀県金融広報アドバイザー、DCアドバイザー

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