更新日: 2021.10.22 厚生年金

厚生年金の保険料はどうやって決まる? 保険料の平均は?

執筆者 : 小山英斗

厚生年金の保険料はどうやって決まる? 保険料の平均は?
会社員や公務員の人が加入している厚生年金。その厚生年金の保険料が、どうやって決まるのか知っていますか?
 
給与明細には厚生年金といった名目で、支給額から年金保険料が天引きされていると思います。その金額がどう決まるのか確認していきましょう。
小山英斗

執筆者:小山英斗(こやま ひでと)

CFP(日本FP協会認定会員)

1級FP技能士(資産設計提案業務)
住宅ローンアドバイザー、住宅建築コーディネーター
未来が見えるね研究所 代表
座右の銘:虚静恬淡
好きなもの:旅行、建築、カフェ、散歩、今ここ

人生100年時代、これまでの「学校で出て社会人になり家庭や家を持って定年そして老後」という単線的な考え方がなくなっていき、これからは多様な選択肢がある中で自分のやりたい人生を生涯通じてどう実現させていくかがますます大事になってきます。

「未来が見えるね研究所」では、多くの人と多くの未来を一緒に描いていきたいと思います。
https://miraiken.amebaownd.com/

厚生年金とは?

厚生年金は公的年金の1つです。もう1つの公的年金に国民年金があります。いずれも老後の生活を支えることが大きな目的となりますが、加入者が障害を負ったときや、万が一、亡くなったときなどにも生活の支えとなる制度です。
 
公的年金制度は「2階建て」となっており、厚生年金は年金の「2階部分」といわれています。対して国民年金は、年金の基礎的な位置づけから「1階部分」といわれています。
 
厚生年金が2階部分と表現されているのは、厚生年金保険料には1階部分の国民年金保険料も含まれ、将来、年金を受け取る際にも国民年金と合わせて受給することになるからです。
 
また、国民年金が20歳から60歳未満の全ての人に加入義務があるのに対して、厚生年金は厚生年金保険の適用を受けている会社で働く場合、70歳未満まで原則加入となります。
 
つまり、20歳未満の人でも会社員として働く場合は、厚生年金に加入することになります。なお、公的年金以外に確定給付企業年金や個人型確定拠出年金(iDeCo)などがある人の場合は、「3階建て」の年金に加入しているともいわれます。
 
1階部分の国民年金、2階部分の厚生年金、そして3階部分が企業年金やiDeCoなどとなり、将来の受給額をより増やすためには複数の年金に加入することが手段の1つといえます。
 

厚生年金の保険料はどうやって決まるの?

厚生年金の保険料は「標準報酬月額」と「標準賞与額」のほか、「保険料率」によって決まります。厚生年金の保険料率は、平成29年9月からは18.3%で固定されています。


毎月の保険料額 = 標準報酬月額 × 保険料率(18.3%)
賞与の保険料額 = 標準賞与額  × 保険料率(18.3%)

なお、各保険料額は労使折半となりますので、実際に給与・賞与から負担する保険料は上記の保険料額の半分になります。
 

標準報酬月額とは?

厚生年金においては、報酬月額(毎月給与)を数千円から数万円の幅で32の等級に区分した標準報酬月額に置き換えます。そのため、報酬月額と標準報酬月額が同じとは限りません。
 
厚生年金保険料額表から、報酬月額がどの等級に該当するのか知ることができます。
 


※日本年金機構 「令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表(令和3年度版)」より筆者作成
 
例えば、報酬月額が29万5000円だった場合は19等級に該当し、標準報酬月額は30万円です。なお、等級は32等級が上限となっていて、報酬月額が63万5000円以上でどんなに高額でも標準報酬月額は65万円となります。
 

標準報酬月額が見直される定時決定と随時改定

報酬月額の対象となる報酬には、以下のようなものが含まれます。
 
基本給、能率給、役付手当、家族手当、通勤手当、住宅手当、早出残業手当など
 
基本給に変更はなくても、例えば残業が多くなった月はその分の残業手当が支給され、給与も多くなるかもしれませんが、標準報酬月額も給与の増減に応じて毎月見直されるのかというと、そうではありません。
 
標準報酬月額は毎年9月に、4月から6月の報酬月額(3ヶ月の平均)を基に改定されます。これを「定時決定」といいます。
 
また、定時決定の算定月以後に報酬月額の基となる固定的賃金に大幅な変動(標準報酬月額で2等級以上)があった場合でも、標準報酬月額の改定が行われます。これを「随時改定」といいます。
 
固定的賃金の変動があったことが条件の1つのため、残業手当などの非固定的賃金だけの変動は対象となりません。なお、標準報酬月額の決定には上記以外にも「資格取得時の決定」「育児休業等終了時の改定」「保険者決定」といった方法もあります。
 

標準賞与額とは?

標準賞与額の対象となる賞与は、年3回以下の回数で支給されるもので、賃金や手当、賞与といった名称は問われません。
 
一般的にボーナスや期末手当、年末手当、夏(冬)季手当などと呼ばれるものです。一時的に支給されるものも対象となるほか、自社製品などの現物支給も含まれます。
 
標準賞与額は、支給1回(同じ月に2回以上支給されたときは合算)につき、150万円が上限となります。なお、年4回以上支給される賞与は標準報酬月額の対象となり、標準賞与額の対象とはなりません。
 

厚生年金保険料の平均はどれくらい?

先に見てきたように、厚生年金の保険料は標準報酬月額や標準賞与額によって決まります。一般的に厚生年金保険料をどれくらい負担しているのか、その平均は標準報酬月額や標準賞与額の平均から求めることができます。
 
厚生労働省の令和元年度の「厚生年金保険・国民年金事業年報」によれば、令和元年度末の標準報酬月額の平均は31万5000円(男性35万7000円、女性24万7000円)、標準賞与額1回当たりの平均は45万1000円(男性52万7000円、女性31万7000円)となっています。
 
例えば、男性の平均報酬月額を35万7000円とすると、その標準報酬月額は22等級の36万円です。
 
36万円に保険料率18.3%を掛けると6万5880円で、これを会社と折半して保険料を払うことになるため、厚生年金に加入している男性が毎月負担している平均の厚生年金保険料は3万2940円を目安として考えられます。同様に、女性の場合は平均2万1960円となります。
 

支払う保険料が多い分、将来の年金も増える

保険料が一律の国民年金と違い、厚生年金は給与や賞与が多くなれば保険料の負担も増えるわけですが、その分、将来の年金額も増えることになります。
 
また、厚生年金の場合は会社と保険料を折半しているため、実際には給与などから天引きされている額の2倍の保険料が支払われています。こういったことから、厚生年金と国民年金では年金受給額にも以下のような差があります。
 
年金受給者の平均年金月額(令和元年度末)

厚生年金 約14万6000円
国民年金 約5万6000円

※厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業年報」より筆者作成
※受給資格期間を25年以上有する場合の額
 
保険料が増えることの負担もありますが、その分、将来の年金額が増えるというメリットがあることも忘れないようにしましょう。
 
出典
日本年金機構 令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表(令和3年度版)
厚生労働省 厚生年金保険・国民年金事業年報
 
執筆者:小山英斗
CFP(日本FP協会認定会員)

ライターさん募集