更新日: 2021.10.25 国民年金

「年金が満額もらえない…」60歳から年金額を増やす方法とは?

執筆者 : 辻章嗣

「年金が満額もらえない…」60歳から年金額を増やす方法とは?
老齢基礎年金は、20歳から60歳になるまでの40年間(480月)の全加入期間の保険料を納めた場合に、満額の年金を受け取ることができます。
 
今回は、保険料納付済月数が480月に満たず、満額の年金をもらえない方が60歳以降に老齢基礎年金の年金額を増やす方法を解説します。
辻章嗣

執筆者:辻章嗣(つじ のりつぐ)

ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士

元航空自衛隊の戦闘機パイロット。在職中にCFP(R)、社会保険労務士の資格を取得。退官後は、保険会社で防衛省向けライフプラン・セミナー、社会保険労務士法人で介護離職防止セミナー等の講師を担当。現在は、独立系FP事務所「ウィングFP相談室」を開業し、「あなたの夢を実現し不安を軽減するための資金計画や家計の見直しをお手伝いする家計のホームドクター(R)」をモットーに個別相談やセミナー講師を務めている。
https://www.wing-fp.com/

老齢基礎年金の仕組み

老齢基礎年金(国民年金)は、受給資格期間(保険料納付済期間と保険料免除期間などを合算した期間)が10年以上ある場合に、原則65歳から受け取ることができます。
 
そして、20歳から60歳になるまでの40年間、保険料を納付した月数が480月である場合に満額を受け取れますが、保険料を免除された期間の年金額は一定の割合で減額され、未納期間は年金額の計算の対象とはなりません(※1)。
 

1. 老齢基礎年金額の計算方法

令和3年度の老齢基礎年金額は、以下の計算式で算出されます。
 


(※1)を基に筆者作成
 
ただし、平成21年3月分までは、4分の1免除は5/6、半額免除は2/3、4分の3免除は1/2、全額免除は1/3でそれぞれ計算します(※1)。
 

2. 被保険者の区分と保険料納付済月数

国民年金の被保険者は、自営業者や学生などの第1号被保険者、会社員や公務員などの第2号被保険者、第2号被保険者に扶養される配偶者の第3号被保険者に区分されており、それぞれの区分に応じて国民年金保険料を納付します(※2)。
 


(※2)を基に筆者作成
 
従って、老齢基礎年金の算定基礎となる保険料納付済月数には、第1号被保険者として国民年金保険料を納付した期間に加えて、第2号および第3号被保険者であった期間が含まれます。
 

3. 保険料の免除と納付猶予

第1号被保険者が、収入の減少や失業などにより国民年金保険料を納めることが経済的に困難な場合は、保険料の免除や納付の猶予を受けることができます。
 
また、学生については、申請により在学中の保険料の納付が猶予される制度があります(※3、4)。保険料の免除や猶予を受けた場合、老齢基礎年金の受給資格期間には含まれますが、年金額の計算では免除期間は一定割合で減額され、猶予期間は反映されません。
 
なお、免除や猶予を受けた期間の保険料については、10年以内であれば保険料を後払い(追納)することで、老齢基礎年金の年金額を増やすことができます(※5)。
 

年金額を増やす方法とは

国民年金の加入義務は60歳になるまでですが、60歳以降でも老齢基礎年金額を増やす方法があります。
 

1. 免除や猶予期間があれば保険料を追納

まず、先に説明したとおり、10年以内に国民年金保険料の免除や猶予を受けた期間があるときは速やかに保険料を追納しましょう。追納する保険料には、経過年数に応じて追納加算額が加算されますが、3年以内の追納には追納加算額はありません(※5)。
 

2. 国民年金に任意加入

60歳になる時点で40年の保険料納付済期間がない場合は、60歳以降65歳になるまで国民年金に任意加入することができます。ただし、老齢基礎年金の繰上げ支給を受けている方、厚生年金の被保険者の方は任意加入することはできません(※6)。
 
例えば、保険料の未納期間が5年以上ある方が、60歳から65歳になるまでの5年間(60月)で任意加入をしたとすると、令和3年度の年金額で約9万7000円を増やすことができます。
 
78万900円×60月/480月≒9万7613円
 
任意加入は、お住まいの市区町村役場、またはお近くの年金事務所などで60歳の誕生日の前日から申し込むことができます。ただし、申し込みのあった月からの加入となり、さかのぼって加入することはできません(※6)。
 

3. 付加保険料を納付

国民年金に任意加入している方は、定額の保険料に月額400円の付加保険料を上乗せして納めることができ、「200円×付加保険料納付月数」の付加年金額(年額)を受け取ることができます(※7)。
 
例えば、60歳から65歳になるまでの5年間(60月)で付加保険料を納付した場合、年額1万2000円の付加年金を受け取れます。
 

追納できる保険料や未納期間を確認する方法

追納できる保険料や、保険料の未納期間の有無を確認する方法について解説します。
 

1. ねんきん定期便で確認

毎年、誕生月に送付される「ねんきん定期便」では、保険料の未納期間の有無を確認できます。特に、節目の年(35歳、45歳、59歳)に届く封書形式の「ねんきん定期便」には、過去の未納月数が記載されています(※8)。
 

2. ねんきんネットで確認

日本年金機構のインターネットサービス「ねんきんネット」を利用すると、過去の未納月数を確認できるほか、今後、保険料を追納できる月数と保険料の金額を確認することが可能です(※9)。
 

まとめ

老齢基礎年金は、20歳から60歳になるまでの40年間に保険料の免除または猶予期間がある場合や、保険料の未納期間があると満額の年金を受け取ることができません。
 
年金額を増やすためには、免除や猶予された保険料を追納したり、保険料の未納期間がある方は60歳以降も国民年金に任意加入しましょう。
 
出典
(※1)日本年金機構 老齢基礎 年金(昭和16年4月2日以後に生まれた方)
(※2)日本年金機構 公的年金の種類と加入する制度
(※3)日本年金機構 国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度
(※4)日本年金機構 国民年金保険料の学生納付特例制度
(※5)日本年金機構 国民年金保険料の追納制度
(※6)日本年金機構 任意加入制度
(※7)日本年金機構 付加保険料の納付のご案内
(※8)日本年金機構 大切なお知らせ、「ねんきん定期便」をお届けしています
(※9)日本年金機構 ねんきんネット
 
執筆者:辻章嗣
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士

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