更新日: 2021.11.09 その他年金
妻が家計を支えている家庭。妻の死後、夫は遺族年金を受け取ることはできる?
例えばこれが「妻が家計を支えている家庭」の場合であればどうでしょう。夫は遺族年金を受け取ることができるのでしょうか。今回は、こういったケースについて解説します。
執筆者:中村将士(なかむら まさし)
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー
私がFP相談を行うとき、一番優先していることは「あなたが前向きになれるかどうか」です。セミナーを行うときに、大事にしていることは「楽しいかどうか」です。
ファイナンシャル・プランニングは、数字遊びであってはなりません。そこに「幸せ」や「前向きな気持ち」があって初めて価値があるものです。私は、そういった気持ちを何よりも大切に思っています。
遺族基礎年金の受給要件と対象者
受給要件
遺族基礎年金は、以下のいずれかの要件を満たしている方が死亡したときに、受け取ることができます。
●国民年金の被保険者である間に死亡したとき
●国民年金の被保険者であった60歳以上65歳未満の方で、日本国内に住所を有していた方が死亡したとき
●老齢基礎年金の受給権者であった方が死亡したとき
●老齢基礎年金の受給資格を満たした方が死亡したとき
今回の例では、妻はこの要件を満たしているものとします。
受給対象者
遺族基礎年金は、死亡した方に生計を維持されていた以下の遺族が受け取ることができます。
●子のある配偶者
●子
なお、「子」とは、18歳になった年度の3月31日までにある方、または20歳未満で障害年金の障害等級1級もしくは2級の状態にある方を指します。
ここでのポイントは、「子のある配偶者が遺族基礎年金を受け取っている間や、子に生計を同じくする父または母がいる間は、子には遺族基礎年金は支給されない」ということです。つまり、今回の例では、子がいる場合には夫が遺族基礎年金を受け取るということです。
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遺族厚生年金の受給要件と対象者
受給要件
遺族厚生年金は、以下のいずれかの要件を満たしている方が死亡したときに、受け取ることができます。
●厚生年金保険の被保険者である間に死亡したとき
●厚生年金の被保険者期間に初診日がある病気やけがが原因で初診日から5年以内に死亡したとき
●1級・2級の障害厚生(共済)年金を受け取っている方が死亡したとき
●老齢厚生年金の受給権者であった方が死亡したとき
●老齢厚生年金の受給資格を満たした方が死亡したとき
今回の例では、妻はこの要件を満たしているものとします。
受給対象者
遺族厚生年金は、死亡した方に生計を維持されていた以下の遺族のうち、最も優先順位の高い方が受け取ることができます。
●第1順位:妻
●第2順位:子
●第3順位:夫
●第4順位:父母
●第5順位:孫
●第6順位:祖父母
なお、「子」とは、遺族基礎年金の項目の「子」と同じです。「夫」とは、妻が死亡当時に55歳以上である夫に限られます。
ここでのポイントは、「子のある妻または子のある55歳以上の夫が遺族厚生年金を受け取っている間は、子には遺族厚生年金は支給されない」ということです。つまり、今回の例では、優先順位としては夫よりも子の方が高いのですが、その場合であっても「子のある55歳以上の夫」として、夫が遺族厚生年金を受け取ることになります。
子がいない場合は「子のない55歳以上の夫」として、夫は遺族厚生年金を受け取ることができます。
まとめ
以上のことから、妻が家計を支えている家庭において、妻の死後、夫は遺族年金を受け取れるのは、以下のような場合であることが分かります。
●遺族基礎年金については、夫は子がいる場合に受け取ることができる。
●遺族厚生年金については、夫は妻の死亡当時に55歳以上である場合に受け取ることができる。
また、夫が遺族年金を受け取る際には、以下の点にも注意が必要です。
●遺族厚生年金の受給開始は、原則として60歳から
●遺族基礎年金を併せて受給できる場合は、60歳より前から遺族厚生年金を受け取ることができる
つまり、「妻が家計を支えている家庭」の夫も、基本的には「夫が家計を支えている家庭」の妻と同様に遺族年金を受け取ることができます。ただし、夫が遺族年金を受け取るためには、妻が遺族年金を受け取る場合よりも少し条件がある、ということをご留意いただく必要があります。
出典
日本年金機構 「遺族年金」
日本年金機構 「遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)」
日本年金機構 「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)」
執筆者:中村将士
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー