更新日: 2022.01.05 その他年金

年金額はどうして毎年変わるの? その理由、説明できる?

執筆者 : 植田周司

年金額はどうして毎年変わるの? その理由、説明できる?
高齢者等に支給されている年金、その額は毎年変わるということをご存じでしょうか。
 
毎年送られてくる年金額改定通知書を見ると、年金額が少しずつ変わっていることがわかります。年金の仕組みは非常に複雑ですが、今回は年金額が毎年変わる理由を、できるだけわかりやすくご説明します。
植田周司

執筆者:植田周司(うえだ しゅうじ)

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士、円満相続遺言支援士(R)

外資系IT企業を経て、FPとして「PCとFPオフィス植田」を起業。独立系のFPとして常に相談者の利益と希望を最優先に考え、ライフプランをご提案します。
お客様に「相談して良かった」と言っていただけるよう、日々努力しています。

なぜ年金額が毎年変わるの?

受け取る年金額が、生涯変わらない場合を考えてみましょう。
 
年金で暮らしている人は、物価が上がると生活が苦しくなり、逆に物価が下がると生活は楽になります。しかし、物価が下がると、一般的に会社員の平均賃金も下がります。会社員の賃金が下がると年金保険料収入は減り、継続した年金の支払いが難しくなります。
 
やはり、物価や賃金の上下に連動して年金額を変えないと、年金で生活する人の生活が安定しないことがわかります。今の年金制度は、物価や賃金の変化に合わせて、年金額の調整が行われています。これを「賃金・物価スライド」といいます。
 

超高齢社会への対応

若い人たちは「自分たちは年金がもらえないのでは?」と不安になっている方も多いようです。財務省の推計では、2025年には65歳以上の人口は3657万人に達し、65歳以上のひとりを、20歳から64歳の1.8人で支えることになると推計されています(※1)。
 
年金制度は、このような人口の変化にも対応する必要が出てきました。
 


(出典:厚生労働省 いっしょに検証!公的年金「マクロ経済スライドってなに?」(※2))
 
そこで、年金制度を維持するために、年金額の調整(減額)をおこなう制度が2004年にできました。
 
図1のように「公的年金制度を支える力(現役世代の人数)の減少」と「平均余命の伸びに伴う給付費の増加」というマクロで見た給付と負担の変動に応じて、給付水準を自動的に調整します。これを「マクロ経済スライド」と呼んでいます。
 

マクロ経済スライドの調整方法

年金額の減額で高齢者の生活に支障が出ないよう、図2のような調整を行います。
 


(出典厚生労働省 いっしょに検証!公的年金「マクロ経済スライドってなに?」(※2))
 
例えば、中央の賃金・物価の伸びが小さい場合は、年金額を前年と同じ額に調整します。この時反映できなかった調整率は来年以降に持ち越します。
 
また、一番下の賃金・物価が下落した場合は、調整率を来年以降に全部持ち越します。このような微調整を行いながら、年金財政が安定するまで減額が行われます。
 
実際には、物価・賃金スライド、過去の未調整分の持ち越し分の調整により、その年の調整率が決まります。また、年金を受け取っている人と、初めて受け取る人によっても調整率が異なります。
 
興味のある方は、参考資料にあるマクロ経済スライド計算式のサイト(※3)をご覧ください。
 

マクロ経済スライドはいつ終わる?

マクロ経済スライドは基礎(国民)年金と厚生年金のどちらにも適用されています。そして、年金財政が100年にわたって均衡すると見込まれるまで、継続することになっています。
 
2004年当初は、どちらも2023年に終了する予定でしたが、2019年の試算によれば、厚生年金は2025年度で終わるのに対し、基礎年金はそれより22年も長い2047年度となっています。
 
基礎年金はその名のとおり、老後生活の礎として期待されていて、基礎年金しか受給していない年金生活者も少なくありません。そのため、基礎年金のマクロ経済スライドの終了時期を前倒しする方法が検討されています。
 

まとめ

今回はマクロ経済スライドによる年金額の減額について説明しましたが、スライド調整期間が終了するまで年金は少しずつ目減りすると考えたほうが良いでしょう。そのため、iDeCoなどを利用して、少しでも自分自身で老後資金の準備を行うことが大切です。
 
また、個人の受け取る年金額は、加給年金の有無や法律の改正など、さまざまな理由で変わります。ご不明な点はお近くの年金事務所にご確認ください。
 
(※1)財務省「2025年、高齢者1人を現役世代何人で支える?」
(※2)厚生労働省 いっしょに検証!公的年金「マクロ経済スライドってなに?」
(※3)厚生労働省「年金制度改正について/(参考2)年金額の調整の仕組み -「マクロ経済スライド」を少し詳しく」
 
(参考)
東京財団政策研究所 ホームページ
 
※2022/1/5 出典に一部誤りがあったため、修正いたしました。
 
執筆者:植田周司
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士、円満相続遺言支援士(R)
 

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