更新日: 2022.01.04 厚生年金

年金の受給開始年齢の拡大でより複雑に? 受給開始年齢はいつが良いの?

執筆者 : 飯田道子

年金の受給開始年齢の拡大でより複雑に? 受給開始年齢はいつが良いの?
私たちの働き方が変わるとともに、それに伴う経済環境や働く層にも変化が見られるようになりました。その結果、年金制度も見直しをされることとなり、改正案が成立し、年金の加入対象者が拡大され、受給開始時期の選択肢も広がりが出てきました。
 
今まで以上に複雑になってしまいそうな年金受給なのですが、何がどのように変わるのか、どのように選択すれば良いのか、考えてみましょう。
飯田道子

執筆者:飯田道子(いいだ みちこ)

ファイナンシャル・プランナー(CFP)、海外生活ジャーナリスト

金融機関勤務を経て96年FP資格を取得。各種相談業務やセミナー講師、執筆活動などをおこなっています。
どの金融機関にも属さない独立系FPです。

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厚生年金の被保険者(被用者保険)は段階的に拡大する

働き方が変わり、働く時間数にも変化が見られるようになりました。さまざまな働き方をする人が広く年金に加入できるよう、被保険者になる基準を広げられることになります。
 
具体的には、20時間の被用者保険の適用対象の事業所の企業規模を現行、従業員数500人超から段階的に引き下げることです。令和4年10月からは100人超規模、令和6年10月からは50人超規模となります。
 
賃金要件は月額8.8万円以上、労働時間要件は1週間の労働時間が20時間以上、学生除外要件は、現行のままです。ただし、勤務期間要件の現行、1年以上は、実務上の取り扱いの現状も踏まえて撤廃することとなり、フルタイムの被保険者と同じように、2ヶ月超の要件を適用します。
 
さらに、強制適用の対象となる5人以上の個人事業所の適用業種に、弁護士、税理士等の士業を追加することになっています。
 

受給開始時期は自由になる?!

現行では、年金の受給開始年齢は原則65歳となっていますが、個人が60歳から70歳の間で自由に選ぶことができるようになっています。例えば65歳よりも早く受給するときには繰上げ受給ができますし、65歳よりも後に受給するときには繰下げ受給ができます。
 
繰上げ受給をするときには、ひと月あたり▲0.5%、最大▲30%。繰下げ受給するときには、ひと月あたり+0.7%、最大+42%です。
 
今回の見直しにより、令和4(2022)年4月からは、70歳まで可能だった繰下げ受給は75歳まで引き上げられることになりました。これにより、受給開始時期は60歳から75歳の間で選択することが可能になります。
 
繰上げ受給をするときには、ひと月あたり▲0.4%、最大▲24%に改正予定なので、年金の減り幅は少なくなります。繰下げ受給をするときには、ひと月あたり+0.7%と変わりはないものの、繰下げ期間が5年延びたことにより、最大+84%となります。
 
また、令和5(2023)年4月からは、「70歳以降に請求する場合の5年前時点での繰下げ制度」が新設されることになっています。
 
これは、70歳以降80歳未満の間に請求し、かつ請求時点で繰下げ受給を選択しないときには、年金額を算定するときの計算では、5年前に繰下げ申出があったものとして年金を支給するというものです。
 
いずれにしても、60歳になったら、いつからでも受給することができるようになると覚えていて問題ないでしょう。そして、年金の受給開始年齢を先送りする、つまり繰下げ受給することで、今まで以上に年金受給額は増えるようになります。
 

年金を受給するタイミングは働き方しだい

企業では、定年退職の年齢を65歳にしたり、さらに70歳以上にするのではないかと思われる動きも見られるようになってきました。また、アルバイトやパートタイマーとして働く場合にも、60歳以上の求人も増えているようですので、年齢を重ねても収入を得やすい環境が整ってきています。
 
とはいえ、年齢を重ねたことでできる仕事は限られますし、若いときと同じように働くことは難しいのは明らかでしょう。今回の改正により、年金受給額は最大で84%増えることになります。
 
ただ、これは75歳で受給した場合に限ります。いつから受給すれば良いのか、迷ってしまいそうですが、要は自分がどのように働いて収入を得ていくのかを決めることからスタートする必要があるのではないでしょうか?定期的に収入を得られれば、繰下げ受給もできます。
 
今までは年金受給額を増やすための投資に注目が集まっていましたが、預貯金額が少ない、できるかぎり受給する年金額を増やしたいという人ならば、繰下げ受給をするためにも、いかに健康を維持し、働き続けるかがポイントになってくるのではないでしょうか。
 
受給開始年齢を決めるときには、いつまで働くのかとともに、健康状態も大いに影響があると考えられます。自分の健康状態を考慮して、受給するタイミングを選んでも良いかもしれませんね。
 
(参考)
厚生労働省「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律の概要(令和2年法律第40号、令和2年6月5日公布)
 
執筆者:飯田道子
ファイナンシャル・プランナー(CFP)、海外生活ジャーナリスト

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