更新日: 2022.01.11 その他年金

働く高齢者にメリットのある「在職定時改定」。どんなメリットがある?

働く高齢者にメリットのある「在職定時改定」。どんなメリットがある?
令和4年4月から「在職定時改定」が適用されます。この制度の対象者は、65歳以降も働かれる方です。在職定時改定は、年金を受け取りながら働く方にとって、メリットのある制度です。
 
以下では、在職定時改定の概要とメリットについて解説します。
中村将士

執筆者:中村将士(なかむら まさし)

新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー

私がFP相談を行うとき、一番優先していることは「あなたが前向きになれるかどうか」です。セミナーを行うときに、大事にしていることは「楽しいかどうか」です。
 
ファイナンシャル・プランニングは、数字遊びであってはなりません。そこに「幸せ」や「前向きな気持ち」があって初めて価値があるものです。私は、そういった気持ちを何よりも大切に思っています。

在職定時改定の概要

厚生労働省の「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律の概要 」によると、改正の趣旨は以下のとおりです。

より多くの人がより長く多様な形で働く社会へと変化する中で、長期化する高齢期の経済基盤の充実を図るため、短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大、在職中の年金受給の在り方の見直し、受給開始時期の選択肢の拡大、確定拠出年金の加入可能要件の見直し等の措置を講ずる。

在職定時改定の導入は、上記趣旨の中の「在職中の年金受給の在り方の見直し」に当たります。
 
現行の制度は、「退職改定」といわれています。その内容は、65歳以降(老齢厚生年金の受給権を取得時以降)に就労した場合、退職時または70歳到達時(資格喪失時)に、受給権取得後の被保険者であった期間を加えて、老齢厚生年金の額を改定するというものです。
 
つまり、退職などにより厚生年金被保険者の資格を喪失するまでは、老齢厚生年金の額は改定されませんでした。「在職定時改定」は、65歳以上の在職中の老齢厚生年金受給者について、年金額を毎年10月に改定し、それまでに納めた保険料を年金額に反映する制度です。
 


 

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在職定時改定のメリット

以上のことから、在職定時改定のメリットは、年金を受給しながら働くことを選択した場合であっても、年金額の改定が定時に行われるため、家計が助かるということではないでしょうか。
 
厚生労働省の「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律の概要」によると、65歳以降に標準報酬月額20万円で1年間就労した場合、改定時に年金額が年間で1万3000円程度(月1100円程度)増えるという試算があります。
 
この金額を多いと捉えるか少ないと捉えるかは人それぞれとなりますが、年を重ねるごとに標準報酬月額が少なくなってしまう場合、その差額を埋め合わせることは難しいこともあり、年金額が増えるのであれば、やはり家計は助かるといえます。
 
現行の制度では、65歳以降の収入が減っていったとしても、退職するまで(または70歳まで)年金額の改定はありませんので、この点が在職定時改定のメリットといえるでしょう。
 

まとめ

今回の年金制度改正法は、目的を「年金制度の機能強化のため」としています。これを私たちは老後資金対策として捉えるべきでしょう。人生100年時代といわれる今、65歳で定年退職をしたとすると、老後を35年間と想定するのは非現実的でも何でもありません。
 
ただ、老後の35年間を貯蓄と年金のみでやりくりできるかどうか、という問題があります。リタイアしても問題ない場合もあれば、65歳以降も働いた方が良い場合もあるでしょう。65歳以降も働いた方が良いと思われたとしても、ずっと同じように働くことは難しいでしょう。
 
そんなとき、在職定時改定によって、年金額が少しでも増えるのであれば、安心して働くことができるのではないでしょうか。
 
出典
厚生労働省 「年金制度改正法(令和2年法律第40号)が成立しました (3)在職中の年金受給の在り方の見直し(在職老齢年金制度の見直し、在職定時改定の導入)」
厚生労働省 「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律の概要(2.①在職定時改定の導入)」
 
執筆者:中村将士
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー

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