更新日: 2022.01.16 その他年金

公的年金の繰り上げ受給。70歳から受給する場合とどれくらい差が出る?

公的年金の繰り上げ受給。70歳から受給する場合とどれくらい差が出る?
人生100年時代といわれる今、年金を何歳から受け取るのかは重要な事柄です。原則どおり65歳からとするか、または受給開始年齢を60歳に繰り上げるか、それとも70歳まで繰り下げるか、頭を悩ませている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
 
そこで、65歳より前に年金を繰り上げ受給すると、70歳まで繰り下げた場合と比較してどれくらい差が出るのか検証します。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

年金の繰り上げ受給と繰り下げ受給

現在、公的年金は65歳からの受給が原則とされています。しかし、人によっては年金をもう少し早く受け取りたい、逆にもう少し遅らせて受給したいと考える人もいらっしゃいます。
 
それに応じ、受給開始年齢については国民年金、厚生年金ともに最短で60歳まで繰り上げ、最長で70歳まで繰り下げができるようになっています。
 
繰り上げをすると早期に年金を受けられる反面、受給を1ヶ月早めるごとに0.5%減額された年金を将来にわたって受け取り続けることになります。つまり、60歳まで(60ヶ月)繰り上げた場合、本来の65歳からと比較して年金は30%減額されるということです。
 
逆に、65歳以降に受給を繰り下げする場合は、1ヶ月繰り下げるごとに0.7%増額され、最長の70歳まで繰り下げると、最大で42%増額された年金を受け取ることができます。
 
なお、2022年4月からは受給開始年齢を75歳まで繰り下げられるようになり、この場合は年金額が最大84%増額されます。
 

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繰り上げと繰り上げ、実際にどれくらい差がつくのか

60歳への繰り上げで30%減少、70歳までの繰り下げで42%増加といっても、それが実際の年金額にどの程度反映されるのか、国民年金と厚生年金で確認してみましょう。
 

国民年金の場合

国民年金の支給額は、令和3年度の満額で月額6万5075円、年額では78万900円です。
 
仮に最大限繰り上げて60歳から受給した場合、年金額は54万6630円にまで減少します。逆に70歳まで繰り下げた場合は、年金額は110万8878円に増額されます。60歳からの繰り上げ受給と70歳からの繰り下げ受給では、受け取れる年金額で2倍以上の差がつきます。
 

厚生年金の場合

厚生年金は国民年金に上乗せ支給されるものですが、厚生年金の受給額はそれまでの給与額によって変動するため、ここでは日本年金機構が提示する平均的な収入(賞与を含めて月額換算した平均標準報酬43万9000万円)で40年間就業した場合に受けとれる、年額186万5052円(月額15万5421円)を基準に考えます。
 
すると、60歳まで繰り上げたときに受け取れる年金額は国民年金を含め、約130万5536円に減少します。対して、70歳まで繰り下げた場合は約264万8374円に増加します。こちらも国民年金と同様、2倍以上の差がつくことになります。
 

年金の繰り下げと繰り上げ、どうするべきか

年金は繰り上げるにしろ、繰り下げるにしろ、どちらも一長一短です。繰り上げた場合、年金額が減少してしまうというデメリットを負う反面、早期に受けられるというメリットがあります。
 
また、繰り下げる場合は年金額が大きく増額すると反面、受給する前に亡くなってしまったり、受給期間が短くなってしまうなど、想定どおりに年金を受けられないという可能性もあります。
 
例えば、国民年金を60歳から繰り上げ受給した場合、75歳で亡くなっても15年間で総額819万9450円を受け取れます。一方、70歳まで繰り下げて75歳で亡くなってしまうと5年間で受け取れる総額は554万4390円で、繰り上げた場合よりも少ない受給額となります。
 
こうした点を考えると、年金の繰り上げ・繰り下げは単に年間で受け取れる年金額だけにとらわれることなく、長生きや早死にといったリスクを踏まえて年金を必要とする理由も加味し、ライフプランの一環として総合的に考えることが必要といえます。
 

まとめ

年金の受給開始を60歳に繰り上げた場合と、70歳まで繰り下げた場合とでは、受け取れる年金額に2倍以上の差がつきます。
 
しかし、これは単純な計算・比較の結果です。実際に損をするか得をするか、どれくらい差が出るのかは、何歳まで生きて年金を受け取れるかによるため、繰り上げと繰り下げ、一概にどちらがよいとまでは言い切れません。
 
今回のシミュレーションを1つの参考として、自身のライフプランにおいては何歳で年金を受給するのがいいのか考えてみてください。
 
出典
日本年金機構 令和3年4月分からの年金額等について
日本年金機構 老齢基礎年金の繰上げ受給
日本年金機構 老齢基礎年金の繰下げ受給
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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