年金を63歳で受け取るのと65歳で受け取るのでは、年間どのくらいの差が生まれるの?

配信日: 2022.01.21

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年金を63歳で受け取るのと65歳で受け取るのでは、年間どのくらいの差が生まれるの?
現在、年金の受け取り開始は65歳からとなっていますが、申し出ることにより、それよりも早く受給を開始できます。この制度を繰上げ受給といいますが、この場合、繰り上げた期間に応じた割合が減額されます。
 
では、63歳から受け取りを開始するのと65歳から受け取るのでは、年間にどのくらいの差が生じるのでしょうか。
新井智美

執筆者:新井智美(あらい ともみ)

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
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繰上げ受給

年金は希望することで60歳から65歳までの間に受け取りを開始できます。ただし、繰上げ請求月から65歳になる月の前月までの月数に0.5%を乗じた額が減額されることになります。
 
また、減額された額はその後一生涯変わることはありません。仮に63歳で受け取りを開始した場合、65歳までの24ヶ月に0.5%を乗じた12%が減額されます。ただし、この減額率は2022年4月より0.4%に改定されます。
 
(参考:日本年金機構「年金の繰上げ受給」(※))
 

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老齢基礎年金の差額

令和3年の老齢基礎年金の満額受給額は78万900円です。65歳から85歳までの20年間受け取る場合の総額は、1561万8000円です。
 
63歳から受け取る場合、この額から12%減額された68万7192円が年間の受給額となります。そして、85歳まで22年間受け取った場合の総額は1511万8224円で、65歳から受け取りを開始した場合と比べ49万9776円少なくなることが分かります。
 

■改定後の差額は?

もし、繰上げ受給の開始が2022年4月以降だった場合はどうなるでしょうか。
 
減額率が0.5%から0.4%となるため、24ヶ月×0.4=9.6%が減額されます。そうなると、受取額は70万5934円です(満額受給額については令和3年度の額を適用)。すると、85歳まで受け取る場合の合計額は1553万548円となり、差額は8万7452円になります。
 

老齢厚生年金の差額

老齢厚生年金の場合も、申し出ることにより繰上げ受給を行うことができます。この場合は老齢基礎年金と併せて繰上げ受給を申し出る必要があります。また、この場合も老齢基礎年金と同様に、繰上げ請求月から65歳になる月の前月までの月数に0.5%を乗じた額が減額されます。
 
では、以下のケースでどのくらいの差が出るのか、試算してみましょう。

<試算ケース>

22歳から勤務開始(初年度年収200万円)
60歳で定年退職(定年退職時年収1000万円)

*今回の試算において、経過的な繰上げ支給年齢は考慮しないものとします。

この場合65歳から受け取れる老齢厚生年金額は125万円です。65歳から85歳までの20年間もらい続けた場合の総額は、2500万円です。もし、63歳から受け取るとするとこの額から12%を減額した額を受け取ることになり、その額は110万円です。85歳までの22年間に受け取る総額は2420万円となり、65歳から受け取った場合よりも80万円少なくなります。
 
したがって、老齢基礎年金と老齢厚生年金の差額を合わせると、約152万円の差となることが分かります。
 

■改正後の差額は?

こちらも改定後の差額を見ていきましょう。
 
老齢基礎年金と同様に計算すると、改定後の受取額(年額)は113万円、85歳までの22年間での受取総額は2486万円となり、差額は14万円になることが分かります。
 

繰上げ受給の注意点

繰上げ受給を行うことで、本来よりも早く年金を受給できるという点はメリットですが、その分年金額が減額される点がデメリットです。それ以外にも、繰上げ受給を行うにあたり、注意しておかなければならないことがあります。

●繰上げの請求を行った後の裁定の取消しはできない
●寡婦年金の受給権者の場合、繰上げ請求を行うことにより寡婦年金は受け取れなくなる
●繰上げの請求を行い、受給権が発生した後にケガや病気で一定の障害になった場合、その初診日が受給権発生後であるときは、障害基礎年金を受給できない
●65歳前に遺族年金の受給権が発生した場合は、老齢基礎年金と遺族年金のどちらかを選択することになる
●繰上げの請求を行い、受給権を得た人は、国民年金の任意加入制度を利用することができない

 

まとめ

2022年4月から年金制度改正法の適用が開始され、繰上げ受給の際の減額率が少なくなります。その分差額も少なくなりますが、繰上げ受給においてはほかに注意すべきこともあります。
 
特に、障害基礎年金の受給ができなくなることや、遺族年金の額にも反映してくることから、繰上げ受給に対しては慎重に判断する必要があります。
 
(※)日本年金機構「年金の繰上げ受給」
 
執筆者:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

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