更新日: 2022.02.10 その他年金

遺族年金を受給していた人が再婚や事実婚をしたら遺族年金はどうなるの?

執筆者 : 柘植輝

遺族年金を受給していた人が再婚や事実婚をしたら遺族年金はどうなるの?
遺族年金を受給されている方が再婚したり、婚姻届は出さずとも同棲して事実婚状態となることもあるでしょう。そういった場合、遺族年金の取り扱いはどうなるのでしょうか。
 
遺族年金と再婚、事実婚の関係について確認していきます。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

遺族年金は再婚や事実婚によって支給が停止される

早速結論から述べてしまいましょう。遺族年金は、再婚や事実婚(内縁関係)によって受給権を失います。
 
事実婚とは婚姻届を出していないが、社会通念上、夫婦として共同生活していると認められるような関係をいいます。事実婚について明確な定義を示すことは難しいのですが、おおむね下記のような定義に合致する場合は事実婚と見なされます。


・当事者間に社会通念上、夫婦の共同生活と認められる事実関係を成立させようとする合意があること

・当事者間に社会通念上、夫婦の共同生活と認められる事実関係が存在すること

要は婚姻届を出していないだけで、当事者の意志も、他人から見た場合でも、夫婦と変わらないというような場合は、事実婚として婚姻している夫婦のように扱う、ということです。
 
遺族年金には、国民年金に加入していた方に生計を維持されていた一定の遺族が受けられる遺族基礎年金と、厚生年金に加入していた方に生計を維持されていた一定の遺族が受けられる遺族厚生年金とがありますが、どちらも遺族の生活を保障するためのものです。
 
そのため、遺族の方が再婚や事実婚などによって別の方に生計を維持されることとなった、あるいは自身が生計を維持するようになった場合、遺族年金の受給権を失って支給が停止されるのです。
 

遺族年金の受給者が再婚したり、事実婚となった場合の手続きは?

遺族年金を受けている方が再婚、あるいは事実婚と見なされる状況となった場合、遺族年金の支給が直ちに停止されるわけではなく、基本的に受給者本人からの申し出によって停止となります。
 
再婚など受給権を失う事由に該当した日から、遺族基礎年金の場合は14日以内に、遺族厚生年金の場合は10日以内に、「遺族年金失権届」と年金証書を最寄りの年金事務所や街角の年金相談センターへ提出することが必要です。
 
この手続きを行わないと、本来は停止されるべきであった遺族年金の支給が続き、不正受給に該当してしまう恐れもあります。
 

復氏や復籍、姻族関係の終了では遺族年金の支給は停止されない

配偶者との死別後、婚姻前の姓に戻す「復氏」や婚姻前の戸籍に戻る「復籍」のほか、いわゆる死後離婚により、亡くなった配偶者の親など親族との関係を終了させる手続きをして、新しい人生をスタートさせようとする方もいらっしゃるでしょう。
 
ここで気になるのが遺族年金との関係です。亡くなった方との関係を消滅させる手続きに類される復氏や復籍、姻族関係の終了といった手続きをしてしまうと、遺族年金を受けられなくなるように感じられますが、実際にはそうではありません。
 
復氏や復籍、姻族関係の終了手続きをしても、それによって遺族年金を受けている方の生活基盤や収入、生計に影響が及ぶものではないため、遺族年金の支給は停止されません。
 

まとめ

遺族年金の受給中に再婚をした場合(事実婚関係を含む)、受給者の収入や相手方の資力などに関係なく遺族年金の受給権を失います。再婚や事実婚後も遺族年金失権届を提出せず、遺族年金の支給が継続されると、不正受給となる可能性があることを知っておいてください。
 
出典
日本年金機構 遺族年金を受けている方が結婚や養子縁組などをしたとき
厚生労働省 生計維持関係等の認定基準及び認定の取扱いについて〔国民年金法〕
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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