更新日: 2022.02.17 その他年金
2022年4月、年金の繰り上げ・繰り下げ制度が変更。でも対象外の人もいるって本当?
ここでは、年金の繰上げ・繰下げ受給制度の概要や、2022年4月からの変更点を解説するとともに、制度を利用した際の年金額の変化も紹介します。新しい制度内容をもとに、老後に年金をどのように受給するか、イメージしてみましょう。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
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目次
繰上げ受給・繰下げ受給の仕組み
年金の繰上げ受給とは、原則65歳に受給が開始する老齢年金を、年齢を繰り上げて受給できる制度です。
現行(2022年1月時点)の制度では、最大で60歳まで受給開始年齢を繰り上げ可能です。繰上げ受給すると、繰り上げた期間に応じて一定の割合(現行制度では最大30%)が年金から減額され、減額された年金を一生受け取ることになります。
一方の繰下げ受給は、老齢年金の受給開始年齢を66歳以降に繰り下げて受給できる制度です。
現行の制度では最大70歳まで繰り下げ可能です。繰下げ受給をすると、繰り下げた期間に応じて一定割合(現行制度では最大42%)が増額されます。増額された年金額は生涯変わりません。
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繰上げ受給・繰下げ受給の制度変更の内容
年金の繰上げ受給・繰下げ受給制度は、2020年の税制改正により、2022年4月からの制度内容変更が決まっています。
ただし、制度の仕組み自体に変更はありません。今回変更されるのは、以下の2点です。
●繰下げ受給の上限年齢
●繰上げ受給の減額率の引き下げ
繰下げ受給の上限年齢は、従来の70歳から75歳まで引き上げられます。これにより、繰下げ受給時の増額率が現行の最大42%から最大84%に大きく上がることも、改正のポイントです。
高齢になっても就労する人が増えていることなどを背景に、高齢者が自身の状況に合わせてより柔軟に年金受給の方法を選択できるよう、今回の見直しが行われました。
また、繰上げ受給の減額率は、従来の0.5%から0.4%に引き下げられます。
なお、繰上げ受給の下限年齢60歳や、老齢年金の支給開始年齢65歳は、今回の改正では変更されません。
新制度の対象になる人
繰下げ受給の受給開始年齢の上限引き上げ、繰上げ受給の減額率引き下げは、すべての人に適用されるものではないため注意しましょう。
繰下げ受給の受給開始年齢上限引き上げの対象は、2022年4月1日以降に70歳になる人のみです。生年月日で言うと、1952年4月2日以降に生まれた人が対象となります。
2022年4月1日までに70歳を超えてすでに受給を開始している人が、改めて75歳に受給を繰り下げることはできません。2022年に70歳になる人でも、1月1日〜4月1日生まれの人は改正前の制度に従って、70歳までに受給を開始する必要があります。
繰上げ受給の減額率引き下げの対象は、2022年4月1日以降に60歳になる人です。生年月日で言うと、1962年4月2日以降生まれが該当します。
75歳まで受給開始年齢を繰り下げた場合の年金受給額の変化
新制度が始まって75歳まで受給開始年齢を繰り下げた場合、年金額はどのくらい増えるのでしょうか。
受給開始年齢ごとの増額率と、令和元年度の会社員の平均的な老齢年金額14万6000円をもとにした増額後の年金月額を、図表1でみてみましょう。
図表1
受給開始年齢 | 増額率 | 年金月額 |
---|---|---|
65歳 | 0% | 14万6000円 |
66歳 | 8.4% | 15万8264円 |
67歳 | 16.8% | 17万528円 |
68歳 | 25.2% | 18万2792円 |
69歳 | 33.6% | 19万5056円 |
70歳 | 42% | 20万7320円 |
71歳 | 50.4% | 21万9584円 |
72歳 | 58.8% | 23万1848円 |
73歳 | 67.2% | 24万4112円 |
74歳 | 75.6% | 25万6376円 |
75歳 | 84% | 26万8604円 |
※厚生年金と基礎年金を同時に繰り下げた場合。
65歳で受給開始すると14万6000円の年金をもらえる人が、現行制度の上限年齢70歳まで受給開始を繰り下げた場合、年金額は42%アップした20万7320円です。
制度改正で75歳まで受給開始年齢を繰り下げられるようになると、増額率が最大84%となるため、さらに6万円ほど上乗せした26万8604円の受給が可能になります。年金受給を65歳で開始する場合と75歳で開始する場合では、月額およそ12万円以上も受給額に差がつく計算です。
新しい繰上げ受給・繰下げ受給の制度では年齢の選択幅が広がる
老齢年金の繰り上げ・繰下げ受給制度の改正によって、受給開始年齢の選択幅が60~75歳に広がります。そのため、今後はより高い増額率で年金を受給することも可能です。
就労・収入の状況や、健康状態などを考慮しながら、自身にとってベストな年齢で年金の受給を開始できるよう、よく検討しましょう。
出典
日本年金機構 年金の繰上げ受給
日本年金機構 年金の繰下げ受給
厚生労働省 年金制度改正法(令和2年法律第40号)が成立しました
厚生労働省 厚生年金保険・国民年金事業年報 結果の概要
厚生労働省 厚生年金保険・国民年金事業年報 結果の概要より「令和元年度」
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
監修:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員