更新日: 2022.02.23 その他年金

会社員の夫が亡くなった場合、妻が受け取れる年金とは?

会社員の夫が亡くなった場合、妻が受け取れる年金とは?
会社員の夫が亡くなったとき、残された妻はどのような年金をいくらくらい受け取れるのでしょうか。具体例(夫・年収500万円、妻・専業主婦、子1人)を示してご説明します。
三藤桂子

執筆者:三藤桂子(みふじけいこ)

社会保険労務士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、FP相談ねっと認定FP、公的保険アドバイザー、相続診断士

大学卒業後、公務員、専業主婦、自営業、会社員、シングルマザーとあらゆる立場を経験した後、FPと社会保険労務士の資格を取得し、個人事業主から社会保険労務士法人エニシアFP を設立。

社会保険労務士とFP(ファイナンシャルプランナー)という二刀流で活動することで、会社側と社員(個人)側、お互いの立場・主張を理解し、一方通行的なアドバイスにならないよう、会社の顧問、個別相談などを行う。

また年金・労務を強みに、セミナー講師、執筆・監修など首都圏を中心に活動中(本名は三角桂子)。

https://sr-enishiafp.com/

遺族年金とは

公的年金は高齢期の老齢年金だけでなく、亡くなった場合の保障として、遺族年金があります。
 
日本に住んでいる、20歳以上60歳までの人が加入する国民年金の被保険者等であった人が亡くなった場合に支給される遺族基礎年金と、会社員や公務員など、厚生年金保険の被保険者等であった人が亡くなった場合に支給される遺族厚生年金があります。
 
遺族基礎年金は一定の要件に当てはまる場合、亡くなった人に生計を維持されていた「子のある配偶者」、または18歳に到達した最初の3月31日までの「子」もしくは20歳未満で障害等級1級または2級の障害の状態にあり、いずれも婚姻していない子が受け取ることができます。子のセーフティーネットであるといえます。
 
遺族厚生年金は、厚生年金保険の被保険者または被保険者であった人が亡くなった場合、一定の要件を満たした人によって生計維持されていた配偶者・子、父母、孫、祖父母が対象で、最も優先順位の高い人が受け取ることができます。最も順位が高い人は、「配偶者・子」です。
 

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どのような年金を受給できる?

Aさん(夫・年収500万円※40歳、妻・専業主婦35歳、子1人10歳)を例に説明します。
 
Aさんは厚生年金保険の被保険者である間の死亡のため、受給要件と保険料納付要件を満たしています。妻は死亡した夫に生計を維持されていた配偶者であるため最も優先順位の高い受給対象者です。
※平均標準報酬額は41万円、被保険者期間を216月とします
 
Aさん妻が受け取る遺族年金としては、遺族基礎年金と遺族厚生年金です。図表1は、Aさんの夫が亡くなってから妻と子がいつまで、どのような年金を受け取れるのかを図に表したものです。
 
【図表1】


 

1. いくらくらい受け取れる?

前段で示した図表1の、1から3のタイミングで受け取る金額を考えてみましょう。
 
1の時点において、遺族基礎年金の計算は子のある配偶者であるため、次のように計算します。
 
78万900円+22万4700円(子の加算額1人)=100万5600円→ア
 
加算金額は1人目および2人目の子の加算額各22万4700円、3人目以降の子の加算額は各7万4900円です。
 
配偶者がいない場合、子が受け取るときは78万900円+2人目以降の子の加算額を子の数で割った額が、1人あたりの金額となります(2021年度額)。
 
遺族厚生年金の年金額は、亡くなった人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3です。なお、受給要件が厚生年金保険の被保険者である間に亡くなった場合の遺族厚生年金は、報酬比例部分の計算において、厚生年金の被保険者期間が300月(25年)未満の場合は、300月とみなして計算します。

【遺族厚生年金の計算式】

遺族厚生年金の額=(A+B)×3/4
A: 平均標準報酬月額×9.5~7.125/1000×被保険者月数(平成15年3月以前の実月数)
B: 平均標準報酬×7.308~5.481/1000×被保険者月数(平成15年3月以後の実月数)
300月みなし=(A+B)÷全被保険者月数×300×3/4

Aさんの被保険者期間は216月のため300月みなし、平成15年3月以後の被保険者期間で計算します。
 
遺族厚生年金の額=41万円×5.481/1000×216月÷216月×300月×3/4
=50万5622円(小数点以下四捨五入)→イ
ア+イ=151万1222円となります。
 
(参考:日本年金機構「遺族年金ガイド 令和3年度版」(※1)、日本年金機構「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)(※2))
 

2. いくらくらい受け取れる?

図表1の2のタイミングで受け取れる年金は1から大きく変化します。子どもが原則18歳になった年度末で子の加算が終わり、遺族基礎年金は終了します。その際、妻が40歳以上であると、中高齢寡婦加算が加算されます。
 
中高齢寡婦加算は40歳から65歳までの加算で、老齢基礎年金の満額の4分の3に相当する金額を受け取ることができます。
 
58万5700円※(中高齢寡婦加算)+50万5622円(遺族厚生年金)=109万1322円
※2021年度額
 

3. いくらくらい受け取れる?

図表1の3のタイミングでは、妻が65歳になり自身の老齢年金を受け取るようになります。65歳以上の場合は、老齢基礎年金と遺族厚生年金の一部または全部を併せて受け取ることができます。
 
妻自身に老齢厚生年金と遺族厚生年金を受け取る権利がある人は、自分の老齢厚生年金に相当する額が支給となり、遺族厚生年金は老齢厚生年金に相当する額は支給停止となります。
(引用・一部抜粋:日本年金機構「遺族年金ガイド 令和3年度版」(※1))
 
【図表2】

出典:日本年金機構「65歳以上の遺族厚生年金の受給権者が、自身の老齢厚生年金の受給権を有する場合」
 

まとめ

年金は「1人1年金」であるため、65歳までは老齢・障害・遺族の異なる2つ以上の年金を受け取るときには、1つの年金を選ぶことになります。
 
万が一の公的な保障が、どのような年金を、いくらくらい受け取れるのかを知っておくと、不足する部分を民間の保険を活用するなど、ライフプランを立てるうえで必要な情報となります。
 
出典
日本年金機構「遺族年金の制度」
 
(※1)日本年金機構 遺族年金ガイド 令和3年度版
(※2)日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)
 
執筆者:三藤桂子
社会保険労務士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、FP相談ねっと認定FP、公的保険アドバイザー、相続診断士

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