更新日: 2022.03.14 その他年金

「在職老齢年金制度」の改正後、65歳未満の働き方はどう変わる?

執筆者 : 柘植輝

「在職老齢年金制度」の改正後、65歳未満の働き方はどう変わる?
在職老齢年金の制度が令和4年より変更になります。これによって65歳未満の働き方が変わっていくのでしょうか。在職老齢年金の改正後の内容について調査し、考えてみます。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
◆お問い合わせはこちら
https://www.secure-cloud.jp/sf/1611279407LKVRaLQD/

2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

在職老齢年金とは

在職老齢年金とは、厚生年金を受け取りながらも就労し、厚生年金に加入して厚生年金保険料を支払う人に適用される制度です。
 
具体的には、給与(総報酬月額相当額といわれる、その月以前1年間の標準賞与額の合計÷12+その月の標準報酬月額で導かれる金額)と年金額(基本月額といわれる加給年金額を除いた特別支給の老齢厚生年金・共済年金の月額)の合計が一定額を超えたときに、年金の全部ないし一部が支給停止となります。
 
令和4年2月現在、在職老齢年金が適用される基準額は65歳未満で28万円、65歳以上で47万円となります。この28万円、47万円という基準は令和4年4月から、65歳未満についても65歳以上と同様に47万円へと引き上げられることになります。
 
この47万円という金額は現役男子被保険者の平均月収(ボーナスを含む)を基準として設定されたものになります。
 

在職老齢年金によって65歳未満の働き方はどう変わる?

在職老齢年金制度の改正があっても、長期的にみれば、大多数の65歳未満の働き方には影響しないでしょう。その理由は主に下記のようなものになります。

●現在年金は65歳から受け取るのが主流であること
●雇用主には65歳までの雇用継続が義務付けられていること
●在職老齢年金は厚生年金独自の制度であること
●65歳未満における在職老齢年金の基準額の引き上げは男性が2025年、女性が2030年までの経過的措置であること
●65歳より前に年金を受け取り始めると支給される年金額が減額されること

ただ、短期的には65歳未満の働き方に、多少なりとも影響を与えることが想定されます。在職老齢年金の基準額が28万円のときに支給停止の対象となる人が約37万人のところ、47万円に引き上げられた場合、約11万人にまで減少するからです。
 
在職老齢年金の改正によって、年金を受け取りながら就労していたが、在職老齢年金により時間を制限していた方が働く時間を延ばす、また、早期に年金を受け取っているため無職であった方が在職老齢年金の範囲内で働くようになるといった働き方の変化が想定されます。
 

在職老齢年金の制度変更後、65歳未満でも年金を受けながら働くべき?

可能であれば、65歳より前に年金を受けている方は、今回の改正を機に就労してみるのもよいでしょう。
心身の状態と仕事の内容次第ではありますが、適度な就労は社会とのつながりを保ち、心身を健康的なものとするなど、老後の人生を豊かに彩るものになり得るからです。
 
しかしながら、無理に年金の受給を前倒しする必要はありません。在職老齢年金の基準が47万円となったとしても、前倒しによる年金額の減少は存在するからです。
 
基本的に、お金が必要である、死亡後は受け取れないため早めに年金を受け取り始めたいという方、改正前の在職老齢年金によって働く時間を制限しているというような方以外は、無理に働き方を変える必要はないでしょう。
 

在職老齢年金の改正によっても大きく働き方は変わらないことが想定される

前述のとおり、2022年4月より、65歳未満の在職老齢年金の基準額が28万円から47万円へと大幅に引き上げられます。
 
しかし、65歳より前に年金を受け取ることによる年金の減少や基準額の引き上げが一定期間のみの措置であることから、長期的にみれば65歳未満の働き方を大きく変えることは想定されません。
 
現在すでに在職老齢年金の影響を受けている方、在職老齢年金によって就労を制限していたというような65歳未満の方は、これを機に働き方について今一度考えてみてはいかがでしょうか。
 
出典
日本年金機構 60歳台前半(60歳から65歳未満)の在職老齢年金の計算方法
日本年金機構 65歳以後の在職老齢年金の計算方法
厚生労働省 年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律の概要
 
執筆者:柘植輝
行政書士

ライターさん募集