更新日: 2022.03.20 その他年金
公的年金制度の現状。世代間格差で若者が損をするって本当?
現在の年金保険料の納付と給付の実態、将来的な給付の見通しについて調べると、日本の年金制度の維持をしていくためには、現役世代がどうしても増える負担を支えなければならない状況にあることが分かります。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
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目次
日本における年金保険料の負担者の人口推移と保険料の金額の推移について
日本の年金制度は、年金保険料を納めている現役世代が、年金の給付を受けている受給世代を支える「賦課方式」となっています。現在の日本における人口構成のバランスをみると、日本の総人口に占める65歳以上の割合と、保険料を納付する20歳以上の現役世代の占める割合に差がある、いわゆる「つぼ型」となっています。結果として、年金受給者1人を支える現役世代の人数が減ってしまい、支える側1人への負担が増す状況となっています。
また、厚生年金や国民年金の保険料の推移をみると、昭和45年7月では、厚生年金の保険料率は6.2%(男性被保険者)、国民年金の保険料は月額450円だったものが、令和3年4月ではそれぞれ18.3%(平成29年9月以降固定)、1万6610円まで徐々に増加しています。そこで、日本の年金制度を維持するために、平成16年の法律改正に基づいて、保険料引き上げを一定段階で固定し、その範囲内で給付を行うこととしました。
しかし、受給者が増えるのに対して、財源となる保険料が固定されたことで、将来の給付のための財源はどうなるのか、給付額はどうなるのかなど、見通しが立ちにくく、現役世代が年金制度に対して持つ不安は解消が難しい状況となっているといえます。
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やはり、公的年金制度における受給世代と現役世代との世代間の格差はある!
保険料納付をしている現役世代が、将来、受給できるタイミングでの年金額の見通しについて、社会保障審議会年金部会で5年ごとに検証がされています。この財政検証結果として公表された資料からみえてくるのは、納付した保険料と受給できる年金額との比率が、現役世代では小さくなるということです。
公表されてから時間が経過していますが、厚生年金の世代間における給付と負担との比率について、2005年に70歳を迎える人の受給額は5600万円、保険料負担額が680万円なので8.3倍、同じく2005年に30歳となる人の受給額は9600万円で、保険料負担額が3900万円となり2.4倍となります。その後に行われた2015年における試算についても、年金受給額に同様の世代間格差が生じてしまうことが示されました。
以上のように、受給世代と現役世代とを比べると、現在の受給額と現役世代の将来の受給額との間に差があります。このことが、公的年金における世代間格差の問題として、若い世代の年金制度に対する不満につながっています。
親の扶養を取り巻く社会状況も含めて考える
公的年金における世代間格差については、必ずしも受給の面だけで論ずるべきではないという見方があります。例えば、過去の高齢者を扶養する仕組みは、年金制度の支えだけでは十分ではなかったため、子が親を経済的に支える私的扶養も積極的に行われていました。親と同居する子や近隣に住む多くの兄弟とで、強力に支援することができていたのです。
しかし、現在は兄弟も少なく、親と子が離れて暮らすのが当たり前となり、直接的に支援をすることができなくなりました。年金を含めた公的な支援が充実したことや、日本全体の社会インフラの整備に伴う老齢世帯の生活水準の向上により、私的扶養の負担も少なくなる方向で変わってきたと考えることができます。
公的年金制度の将来について議論と行動することが大切
年金の給付額については、日本経済の状況に左右されることから、将来的に景気が上昇すると、給付水準が上向くことも想定されます。
よって、現時点での給付額における世代間格差の問題を議論するだけではなく、将来の日本における暮らしやすさや経済状況について、よい方向に向かうよう行動することが大切です。その結果、誰にとってもよいと思える年金制度を持続していくことが可能になるといえるのではないでしょうか。
出典
日本年金機構 国民年金保険料の変遷
日本年金機構 厚生年金保険料率と標準報酬月額等級の変遷表
厚生労働省 厚生年金、国民年金の財政
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
監修:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員