更新日: 2022.03.18 厚生年金

年金等の計算に用いる標準報酬月額とは? 対象となる報酬や決定・改定事項

執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部 / 監修 : 新井智美

年金等の計算に用いる標準報酬月額とは? 対象となる報酬や決定・改定事項
標準報酬月額は、毎月の給与から支払う年金保険料の算出や、将来受け取る年金額を計算するもとになる重要な数字です。
 
しかし、会社から受け取る給与のなかで何が対象となる報酬なのか、など詳しく知らないという人が多いかもしれません。
 
この記事では、標準報酬月額の対象となる報酬、決定方法と時期について、さらに改定が行われる場合の条件まで、詳しく解説します。
FINANCIAL FIELD編集部

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)

ファイナンシャルプランナー

FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。

編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。

FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。

このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。

私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。

新井智美

監修:新井智美(あらい ともみ)

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

聞くのは耳ではなく心です。
あなたの潜在意識を読み取り、問題解決へと導きます。
https://marron-financial.com

標準報酬月額とは? 対象となる報酬には何が含まれる?

「標準報酬月額」は、厚生年金保険で保険料や年金額の計算のもととなる数字のひとつです。
 
1ヶ月あたりの報酬を、最低8万8000円から最高65万円まで(65万円を超える場合は65万円とされます)、一定の幅で32等級に区切ったものをいいます。標準報酬月額に含まれる報酬は、労働の対償として、事業所(勤務先の会社など)から経常的かつ実質的に受ける報酬であることが条件です。
 
具体的には、基本給のほか、能率給や役付手当、日直・宿直手当、残業手当や通勤費なども含まれます。
 
なお、支給される現金給与以外に、事業所が提供する寮・社宅費や食事代などのうち、相場よりも格安で提供されたものは、現物給与として標準報酬月額の計算に入るのが意外な点といえるかもしれません。
 
ボーナスや賞与は、年4回以上支給される場合は標準報酬月額に含まれますが、支給が年3回までの場合は「標準賞与額」という別の項目に入ります。
 

・「標準報酬月額」により厚生年金保険料が決定される

毎月の給与から差し引かれて支払う厚生年金保険料は、「標準報酬月額」に保険料率をかけて算出したものです。
 
厚生年金の保険料率は、平成29年9月以降18.3%で固定されていますが、事業者と被保険者が半分ずつ負担するため、給与から引かれる年金保険料の割合は9.15%です。
 
ちなみに、「標準賞与額」はボーナスから支払う厚生年金保険料の計算に使われ、同じく18.3%の保険料率の半分を被保険者が負担します。
 

・年金の支給額にも関わる「標準報酬月額」

老齢厚生年金でもらえる年金額は、「定額部分」「報酬比例部分」(場合により「加給年金額」)を足して決定されます。「標準報酬月額」は、この「報酬比例部分」の年金額を計算するもととなる、重要な数字です。
 

標準報酬月額の決定・改定方法と時期について

・標準報酬月額の決定

標準報酬月額を決定する方法は、2通りあります。
 
1つめは、事業所に雇用される際に、雇用契約などをもとにした報酬から標準報酬月額を導き出す、「資格取得時の決定」です。1月1日~5月31日までに雇用された場合はその年の8月まで、6月1日~12月31日までに雇用された場合は、翌年の8月まで使用します。2つめは「定時決定」といい、毎年1回、4~6月分の報酬月額の平均から導き出した標準報酬月額を、その年の9月~翌年8月まで使用するものです。
 
そのため、4~6月が繁忙期の職場で、残業手当が通常よりも多く加算された場合などは、その年支払う年金保険料が高くなってしまう可能性があるでしょう。保険料を抑えるためには、4~6月の報酬も抑えたほうがよいと思うかもしれません。
 
しかし、標準報酬月額は、将来受け取る年金の「報酬比例部分」を決める数字でもあるのです。支払う保険料が高くなった分、受給できる年金が増える可能性もありますので、どちらがいいかはよく考えてみるとよいでしょう。
 
定時決定の条件は、平均を取る月で報酬のもとになる日数が17日以上あること、となっています。これは実際に勤務した日数だけではなく、休日も含めた勤務期間として考える日数です。例えば、5月の半分を休職して勤務期間が15日となった場合、5月は条件を満たさないため、4・6月の2ヶ月分の報酬から標準報酬月額を決定します。
 

・標準報酬月額の改定

大幅な昇給や降給があった場合、標準報酬月額と実際の報酬月額が大きくかけ離れてしまうことがあります。このような場合には、事業主が届け出をして「随時改定」を行うことが可能です。
 
改定を行う目安としては、32等級ある標準報酬月額の区分で2等級分以上の差が発生したときと考えるとよいでしょう。随時改定された標準報酬月額の使用は8月までですが、7月以降に随時改定された場合は、翌年の8月まで使用する決まりです。
 
そのほか、育児休業明け以降3ヶ月間の報酬総額を平均して標準報酬月額を決定し、その翌月から使用する「育児休業等終了時の改定」があります。
 

まとめ

以上のように、標準報酬月額は、毎月支払う年金保険料と将来受け取る年金額、両方の計算のもととなる重要な数字です。毎年1回決定されますが、途中で実際の報酬と大きくかけ離れた場合は、改定もできます。
 
決定後に給与や勤務状況が変わって、支払う保険料を見直したいと思ったときには、改定が可能か会社と相談するなど、この記事の知識をぜひ生かしてみてください。
 
出典
日本年金機構 厚生年金保険の保険料
日本年金機構 標準報酬月額は、いつどのように決まるのですか。
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
 
監修:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

ライターさん募集