更新日: 2022.03.23 年金

60歳以降も働くと年金はどうなる?

執筆者 : 鈴木一成

60歳以降も働くと年金はどうなる?
筆者はご相談者さまに対し、60歳以降も働かれるなら社会保険に加入して働くことをお勧めしています。
 
このようなお話をしますと、以前であれば「社会保険料を引かれて手取りが少なくなるから、短時間のパートで働きたい」との返事をいただくことが多かったものです。
 
しかし、今は少し様子が変わってきました。公的年金、特に老齢厚生年金の仕組みへの理解が進んできたからかもしれません。
 
鈴木一成

執筆者:鈴木一成(すずき かずなり)

1959年生まれ。一成FP社会保険労務士事務所代表。

社会保険労務士、AFP、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCアドバイザー(DC協会)、企業年金管理士(企業年金連合会)、日本年金学会会員

企業勤務時代も含め20年以上にわたり公的年金を中心とした社会保険・DCをメインに、企業年金運営、ライフプランセミナー、年代別セミナー講師といった分野の業務に携わっています。企業・NPO法人等での講師経験も多数あります。

経験から得たものを付加価値として「顧客視点」でお伝えできます。「この人に出会えて良かった」と思っていただける仕事をします。

ねんきん定期便の意義

60歳以降も厚生年金保険に加入して働くと、年金はどうなるのでしょうか。まずはねんきん定期便についてお話しします。
 
高年齢雇用安定法では、65歳未満の定年年齢を定めている企業に対して、65歳まで雇用確保措置を講じる事を義務化しています(高年齢者雇用安定法第9条)。そのなかであえて60歳以降とするのは、ねんきん定期便を活用できるからです。
 
ねんきん定期便は、国民年金の加入者に対して年金に関する個人の情報に関する通知書として平成21年4月から郵送で始まりました。年金情報の「見える化」といえるもので、複雑で分かりづらかった公的年金を身近に感じるものとして大きな役割を果たすこととなりました。
 

50歳以上の方に送付されるねんきん定期便と見方

下図は、50歳以上の方に郵送されるねんきん定期便です。赤枠部分には「3.老齢年金の種類と見込額(年額)」といった表記を確認できます。その後の( )内は、非常に大きな意味を持つものです(現在の加入条件が60歳まで継続すると仮定して振込額を計算しています)。
 
あなたが、厚生年金保険の被保険者であれば、ねんきん定期便を受け取ったタイミングでの報酬(給与)・賞与の額が60歳まで継続することを前提に(老齢)年金見込額を計算しているということです。
 
「何歳から受給できるのですか?」「年金額はどのくらいですか?」私たちは自身の年金記録として知りたい大きな2点を「年齢」と「金額」を明確に示してくれているものです(私たちが納めた保険料額、加入期間といった年金額の計算基礎となっているデータが正しいという前提があってです)。
 

【例】


■学生時代:20歳~就職するまで国民年金保険料は納めていません(未納期間:2年)

■国民年金保険料納付済期間:38年(入社22歳・定年60歳、厚生年金保険加入期間:38年間)

■加入期間は月数で表しますので38年は456ヶ月となります。

 


(出典:日本年金機構「「ねんきん定期便」の様式(サンプル)と見方ガイド(令和3年度送付分)」(※1))


1. 一般厚生年金加入期間:456月
2. 受給開始年齢:65歳
3. 老齢基礎年金:74万1855円
4. 報酬比例部分:123万4567円
5. 経過的加算部分:513円

上記1~5について説明します。


1. 20~60歳で厚生年金保険料納付済期間のみ

2. 性別・生年月日より65歳から「老齢基礎年金」「老齢厚生年金」を受給開始

3. 令和3年度老齢基礎年金額:78万900円
老齢基礎年金は保険料納付済期間40年で78万900円
456月の場合は78万900円×456/480月=74万1855円

4. 下記(A)ご参照

5. 下記(B)ご参照

 

詳しい計算方法を見てみよう

(A)報酬比例部分
報酬比例部分の計算式は、以下のとおりです。
 

<ア>+<イ>

・平成15年4月以降、賞与からも厚生年金保険料の控除が始まりました。
・そのため、月額給与のみの平均標準報酬月額に対して賞与を含む平均標準報酬額となっています。
 

<ア>平成15年3月以前の期間

平均標準報酬月額 × 7.125/1000 × 平成15年3月までの被保険者月数
 

<イ>平成15年4月以降の期間

平均標準報酬額 (※2) × 5.481/1000 × 平成15年4月以降の被保険者月数
 
(※2)平均標準報酬額:平成15年4月以後の被保険者期間の各月の標準報酬月額と標準賞与額の総額を、平成15年4月以後の被保険者期間の月数で除して得た額です。
 
(B)経過的加算部分
経過的加算額 = 定額部分(※3) - 厚生年金保険に加入していた期間について受取れる老齢基礎年金額(日本年金機構:老齢年金ガイド)
 
(※3)定額部分の計算式:1628円(令和3年度分)×(厚生年金保険加入月数、上限480ヶ月)
 
定額部分とは、「特別支給の老齢厚生年金」として65歳前に支給されていた老齢年金の一階部分でのことです。この定額部分は65歳になると老齢基礎年金として支給されるものですが、計算方法に違いがあり、通常ですと定額部分の金額が大きくなっています。
 
そのため、差額を埋める意味からも65歳以降は老齢厚生年金の一部として給付されるものです。上記の式を確認すると、2つの部分に着目できます。
 
1つは、老齢基礎年金額の計算根拠となる期間が「厚生年金保険に加入していた期間」となっていることです。今回の例では、「ねんきん定期便の説明3.」の456月の場合で78万900円×456月/480月=74万1855円
 
2つめは、厚生年金保険加入月数「上限が480ヶ月」となっていることです。これは40年であり、国民年金の加入期間と同じですが、今回は「ねんきん定期便の説明3.」の456月です。1628円×456月=74万2368円となります。
 
計算の結果、74万2368円-74万1855円=513円となります。
 

60歳以降も働くと老齢年金は……

以下の理由により報酬比例部分の年金額が増えます。
 
(1)上記<イ>の式である平均報酬月額が大きくなります。被保険者月数も増えます。
(2)国民年金の加入者期間が40年(480ヶ月)に不足している場合、補うことができます。
 
■月額給与25万円(賞与なし)で令和3年度の1年間働いた場合を想定
 
(A)報酬比例部分

<イ>平成15年4月以降の期間

平均標準報酬額 (※2) × 5.481/1000 × 平成15年4月以降の被保険者月数
25万円 × 5.481/1000 × 12ヶ月=1万6443円となります。
 
(実際は平均標準報酬月額には再評価率(※4)が乗ぜられます。令和3年度:0.936)
 
よって1万6443円×0.936=1万5391円が報酬比例部分として増加されます。
 
(※4)再評価(率):過去の低い標準報酬をそのまま平均すると、年金の実質価値が低くなってしまいますので、過去の標準報酬を現役世代の手取り賃金の上昇率に応じて見直した上で平均しており、これを再評価といいます。
 
具体的には、過去の標準報酬に一定の率(再評価率)を乗じることで、現在の手取り賃金水準に読み替えます。
 
(B)経過的加算部分
「ねんきん定期便の説明3.」の456月に12ヶ月がプラスされ468月となり、1628円×468月=76万1904円
結果、76万1904円-74万1855円=2万49円です。
 
■月額給与25万円(賞与なし)で令和3年度と同じ状況(※5)で5年間働いた場合を想定
 
(※5)令和3年度と同じ状況:定額単価:1628円・再評価率(0.936)・老齢基礎年金額(78万900円)
 
(A)報酬比例部分

<イ>平成15年4月以降の期間

平均標準報酬額 (※2) × 0.936 × 5.481/1000 × 平成15年4月以降の被保険者月数
25万円 × 0.936 × 5.481/1000 × 60 =7万6953円 の増
 
(B)経過的加算部分
「ねんきん定期便の説明3.」の456月に上限(480月)までの24ヶ月がプラスされます。
 
1628円×480月=78万1440円
結果、78万1440円-74万1855円=3万9585円です。
 
ねんきん定期便の老齢基礎年金額74万1855円、ここに経過的加算部分3万9585円を加えますと、74万1855円+3万9585円=78万1440円です(令和3年老齢基礎年金額:78万900円)。
 

まとめ

60歳以降も働くことで得られるものは何でしょうか。当然のことですが、労働収入があります。そして、社会保険加入して働くことのメリットは大きいものがあるのです。
 
ここまで書いてきましたが、厚生年金保険に加入することで老齢厚生年金が増えます。増えた年金額を終身受給することとなります。公的年金に限れば老齢年金の繰り下げ請求へのメリットにつながるといえるでしょう。公的年金は将来への安心を産んでくれるものですね。
 
(※1)日本年金機構「「ねんきん定期便」の様式(サンプル)と見方ガイド(令和3年度送付分)」
(出典)日本年金機構 ホームページ
 
執筆者:鈴木一成
1959年生まれ。一成FP社会保険労務士事務所代表。
社会保険労務士、AFP、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCアドバイザー(DC協会)、企業年金管理士(企業年金連合会)、日本年金学会会員

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