更新日: 2022.03.29 国民年金

国民年金の繰上げ受給の減額率が緩和。63歳から受給開始すると何%になる?

執筆者 : 伊達寿和

国民年金の繰上げ受給の減額率が緩和。63歳から受給開始すると何%になる?
人生100年時代といわれるように、平均寿命が延びている状況で気になるのが老後のお金ではないでしょうか。老齢年金は、老後の主な収入として生活に欠かせないものでしょう。
 
令和4年4月での年金制度の改正では、繰下げ受給の上限年齢の引き上げが注目されていますが、繰上げ受給の減額率についても見直しが行われます。
そこで、年金の繰上げ受給と今回の改正点について紹介します。
伊達寿和

執筆者:伊達寿和(だて ひさかず)

CFP(R)認定者、1級ファイナンシャルプランニング技能士、相続アドバイザー協議会認定会員

会社員時代に、充実した人生を生きるには個人がお金に関する知識を持つことが重要と思いFP資格を取得。FPとして独立後はライフプランの作成と実行サポートを中心にサービスを提供。

親身なアドバイスと分かりやすい説明を心掛けて、地域に根ざしたFPとして活動中。日本FP協会2017年「くらしとお金のFP相談室」相談員、2018年「FP広報センター」スタッフ。
https://mitaka-fp.jp

年金の繰上げ受給とは

老齢年金(老齢基礎年金、老齢厚生年金)は、原則として65歳から受け取ることができます。ただし、受け取りの開始時期は自分で選ぶことができ、令和4年4月からは受給開始の期間が60歳から75歳まで(令和4年3月までは70歳)に拡大されます。
 
年金の繰上げ受給とは、60歳から65歳になるまでの間に老齢年金を受け取ることをいいます。逆に65歳以降、75歳まで(令和4年3月までは70歳)の間に受け取る場合は繰下げ受給といいます。
 
老齢年金は終身年金であり、亡くなるまで生涯にわたり受け取ることができますので、繰上げ受給をすると年金を受け取る期間を長くできることは事実です。
 
しかし、繰上げ受給をした場合、受け取ることができる老齢年金の金額が減額されてしまいます。さらに、減額率(減額される割合)は亡くなるまで変わりませんので、65歳から受け取る場合に比べて、少ない年金額が生涯続くことになります。
 

令和4年4月から繰上げ受給の減額率が緩和

繰上げ受給について、令和4年4月から減額率が緩和されます。
 
これまでの減額率は繰り上げする月数に対して、1月当たり0.5%となっていましたが、令和4年4月からは0.4%となります。この減額率について、以下で繰上げ受給の開始年齢による例を紹介します。

60歳から繰り上げ受給するケース

繰上げ期間が5年間、つまり60ヶ月になりますので、受け取れる年金の減額率は次のように計算されます。

(改正前)0.5%×60=30%
(改正後)0.4%×60=24%

改正前は減額率が30%なので、本来の年金額の70%しか受け取ることができなかったのが、改正後は減額率が24%となり、本来の年金額の76%を受け取ることができるようになります。
 

63歳から繰り上げ受給するケース

繰上げ期間が2年間(24ヶ月)になるため、年金の減額率は次のように計算されます。

(改正前)0.5%×24=12%
(改正後)0.4%×24=9.6%

この場合、改正前は減額率が12%であり、受給できるのは本来の年金額の88%ですが、改正後は減額率が9.6%となるので、本来の年金額の90.4%を受け取れるようになります。
 
仮に65歳からの年金受給額が年額200万円のケースで考えると、改正前は176万円、改正後は180万8000円となり、年4万8000円(月4000円)の増額となります。
 
また、改正の内容が適用される方と、適用されない方がいることにも注意しましょう。減額率の改正が適用されるのは、昭和37年4月2日以降に生まれた方となっており、昭和37年4月1日以前に生まれた方の場合、減額率はこれまでと同じく1月当たり0.5%です。
 
令和4年4月時点で63歳の方が繰上げ受給をする場合、その方は昭和37年4月1日以前生まれですので、減額率は0.5%で計算されます。繰上げ受給については、自分の生年月日で改正後の減額率が適用されるかどうかを確認しておきましょう。
 

繰上げ受給の注意点

繰上げ受給をすると、65歳からの受け取りに比べて年金額が減額になりますが、それ以外にも注意すべき点があります。
 
まず、繰上げ受給を請求したあとは取り消すことができません。そして繰上げ受給は、老齢基礎年金と老齢厚生年金の両方を同時に請求する必要があります。
 
繰下げ受給では、老齢基礎年金だけ、老齢厚生年金だけという選択肢がありますが、繰上げ受給では認められていません。
 
さらに繰上げ受給をすると、その後、病気やケガなどで生活に支障が出るような状況になっても、障害基礎年金・障害厚生年金の請求ができなくなります。また、国民年金の寡婦年金を受ける権利もなくなります。
 

まとめ

60歳以降、収入が減って生活が厳しくなる場合、年金を早めにもらうために繰上げ受給を考えるかもしれません。
 
しかし、減額率が緩和されたとはいえ、生涯にわたって受け取る年金が減額される上、障害年金の請求の権利を失うなどのデメリットもありますので、繰上げ受給については慎重に判断するのがいいでしょう。
 
出典
日本年金機構 年金の繰上げ受給
日本年金機構 令和4年4月から年金制度が改正されます
厚生労働省 年金制度改正法(令和2年法律第40号)が成立しました
 
執筆者:伊達寿和
CFP(R)認定者、1級ファイナンシャルプランニング技能士、相続アドバイザー協議会認定会員

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