更新日: 2022.04.14 年金

「ねんきん定期便」に書かれていない年金とは? 年金が増えそうな方はこんな人

執筆者 : 酒井 乙

「ねんきん定期便」に書かれていない年金とは? 年金が増えそうな方はこんな人
毎年誕生月になると送られてくる「ねんきん定期便」。しかし、これを見て「老後にもらえる年金はこれがすべてか……」なんて誤解していませんか? 実は、すべての年金が「ねんきん定期便」に書かれているとは限らないのです。
 
そこで本記事では、
1.「ねんきん定期便」に書かれていない年金にはどんなものがあるか。
2.どんな方が対象になるのか。
 
についてご紹介します。
 
酒井 乙

執筆者:酒井 乙(さかい きのと)

CFP認定者、米国公認会計士、MBA、米国Institute of Divorce FinancialAnalyst会員。  
 
長期に渡り離婚問題に苦しんだ経験から、財産に関する問題は、感情に惑わされず冷静な判断が必要なことを実感。  
 
人生の転機にある方へのサービス開発、提供を行うため、Z FinancialandAssociatesを設立。 
 

「ねんきん定期便」とは?

まずは「ねんきん定期便」のことをよくご存じない方のために、「ねんきん定期便」についておさらいします。
 
「ねんきん定期便」とは、国民年金や厚生年金の加入者に向けて、毎年誕生日までにハガキや封書で送付される書類です(ただし、ねんきんネットを利用中で、かつ郵送不要の登録をしている方には郵送で届かないので注意)。
 
そこには「これまで年金に加入した期間」や「将来の年金見込額」「保険料の納付履歴」など、私たち受給者が知りたい情報がひと目で分かるようにまとめられています。 
 
【図表1】

図表1

(出典:日本年金機構「令和4年度「ねんきん定期便」50歳未満」(※1))
 
そんな「ねんきん定期便」ですが、実は始まったのは比較的最近で、今から13年前。きっかけは旧社会保険庁(現・日本年金機構)が管理する「年金記録」が多数不明となり、受け取るべき年金が受け取れない方が続出した問題でした。その影響は大きく、現在でも約1783万件もの年金記録が持ち主不明になっています(※2)。
 
そこで、年金記録が正しいかどうかを確認することを目的のひとつとして「ねんきん特別便」が2007年より発送され、それが現在の「ねんきん定期便」につながっています。
 
ここで、こんな疑問を持った方もいるのではないでしょうか?
 
「ねんきん定期便とは、年金が漏れてないかを確認するための書類なのに、なぜそこに書かれていない年金があるの?」
 
それには理由があります。次に、「ねんきん定期便」に書かれていない年金について見てみましょう。
 

書かれていない年金1:50歳未満の方の将来の年金額

届いた「ねんきん定期便」の中で一番目立つのが「将来の年金見込額」の棒グラフです。ただし50歳未満の方と50歳以上の方では、年金額の計算方法に違いがあることをご存じでしょうか?
 
図表2は、「ねんきん定期便」(ハガキ)に書かれている年金見込額を比べたものです。50歳未満のものは「これまでの加入実績に応じた年金額」となっているのに対して、50歳以上のものには「老齢年金の見込額」と書かれています。 
 
【図表2】

図表2

(日本年金機構「ねんきん定期便」の様式(サンプル)と見方ガイド(令和4年度送付分)」(※1)を筆者が一部加工)
 
これは何を意味するのでしょうか? 端的にいえば、50歳未満の方の年金見込額とは、年金を受け取る年齢になったときに実際にもらえる額ではありません。一方、50歳以上の方の年金額は、実際に受け取る金額に近いもの(ただし、目安として(※3))となっています。
 
この違いは、今後支払う保険料に見合った年金額が含まれているか、いないかによります。このように年齢によって計算方法を変える理由は、50歳未満の方はまだまだ働き方を変えることで年金額が大きく変わる可能性が高く、年金額の予想が難しいことなどが挙げられます。
 
くれぐれも50歳未満の方は、「ねんきん定期便」に書いてある年金額が、将来もらえる年金額のすべてと勘違いしないようにしましょう。
 

書かれていない年金2:加給年金と振替加算

「ねんきん定期便」に載らない年金2つ目は「加給年金」です。
 
何やら難しそうな名前ですが、いったいこれは何でしょうか? 簡単にいってしまえば、これらは年金を受け取る方の「家族手当」です。会社員で配偶者やお子さんがいる方ならご存じの方もいらっしゃるでしょう。
 
具体的には、原則、厚生年金に20年以上加入した方(※4)で65歳未満の配偶者、または18歳になって最初に迎える3月31日以前のお子さま(例えば高校卒業前)がいれば、加給年金を受けることができます(図表3)。
 
【図表3】

図表3

(出典:日本年金機構「加給年金額と振替加算」(※4)に筆者加工)
 
この説明だけではなかなかイメージがつきにくいと思いますので、例を挙げてみましょう。
 
例えば、夫(60歳、会社員)と妻(55歳、主婦)、子(10歳、将来高校へ進学予定)の3人家族の場合(夫婦ともに加給年金の要件をすべて満たしていると仮定します)、夫が65歳時点でもらう年金は以下の図表4のようになります。
 
【図表4】
図表4

(筆者作成)
 
つまり、夫は65歳から68歳(=子が高校を卒業)までは、22万3800円×2(子と配偶者上乗せ分)=44万7600円、それ以降70歳(=妻が老齢基礎年金を受け取る)までは22万3800円を、それぞれ毎年受け取ることができるのです。
 
さらに、妻が昭和41年4月1日以前生まれであれば、「振替加算」が妻の老齢基礎年金に上乗せされます。これは、国民年金の加入が義務となる昭和60年以前に、年金保険料を払わない期間があり老齢年金が低くなってしまう方への一種の救済制度で、生年月日に応じて年額1万4995円~22万3800円(※4)が年金に加算されます(令和4年度時点)。
 
説明が長くなりましたが、これらの年金も「ねんきん定期便」には記載されません。
 
なお、実際に自分が加給年金や振替加算を受け取ることができるのかは、自分で調べるか、年金事務所へ確認する必要があります。また、受け取るための手続きも自身で行わなければなりません(※5)。
 
「自分で調べて、なおかつ自分で申請するなんて面倒!」と思うかもしれませんが、裏を返せば、「ねんきん定期便」に書かれている年金以上の年金を受け取ることができるチャンス、ともいえます。
 
また、加給年金や振替加算には支給が停止される細かい要件(※6・7)がありますので、自己判断せず専門家や年金事務所に確認することをおすすめします。
 

書かれていない年金3:私的年金

私的年金とは、国民年金や厚生年金など国の制度である「公的年金」以外の年金です。国や企業、または自分自身が保険料を払うことで年金を受け取ることができます。
 
例えば、私的年金には以下のようなものがあります。

・厚生年金基金(代行部分を除く(※8))
・確定拠出年金(企業型、iDeCo)
・確定給付年金
・国民年金基金(※9)
・年金払い退職給付(公務員のみ)
・個人年金
・転職時に企業年金連合会へ移した年金

これらの年金も「ねんきん定期便」には書かれていません。上記の年金額を確認するには、その年金を管理する団体や企業から送られるレポートなどを確認したり、直接問い合わせをしたりするようにしましょう。
 

調べれば思わぬ年金が見つかるかも

ここまで読んで、「ねんきん定期便」に記載されていない年金がたくさんあることをご理解いただけたかと思います。
 
では、「ねんきん定期便」に書かれていない年金もすべて含めて、自分が老後にもらえる年金はいったいいくらになるのか、どうやって知ることができるのでしょうか。それを知るには、自身でレポートを集め、問い合わせをするなどして集計する必要があります。
 
これも手間はかかりますが、会社員の方で、在職中に組合などを通じて複数の個人年金に加入している方や、転職経験のある方は思わぬ年金が見つかることもあります。入念に調べておきましょう。
 
(※1)日本年金機構「令和4年度「ねんきん定期便」50歳未満」
(※2)政府広報オンライン「年金記録に「もれ」や「誤り」はありませんか?もう一度ご確認をお願いします」
(※3)日本年金機構「年金Q&A/ここに表示されている年金額は、将来必ず受け取ることができる金額ですか(50歳以上)。」
(※4)日本年金機構「加給年金額と振替加算」
 
または、中高齢者の特例に該当する場合は生年月日に応じて15年~19年。なお65歳以降に被保険者期間が20年以上になる場合は、退職改定時もしくは70歳到達時点(退職改定時とは、退職から1ヶ月経過した日の属する月において、これまで支払った厚生年金保険料が年金額に反映すること)。
 
(※5)(前略)加給年金額加算のためには、届出が必要です(日本年金機構「加給年金額と振替加算」)。
 
(※6)<令和4年4月以降の加給年金の停止と経過措置>
令和4年4月より、厚生年金の被保険者期間が20年以上ある配偶者が老齢厚生年金を受け取っていなくても、その受給権がある場合は配偶者加給年金が支給停止となる(日本年金機構「加給年金額と振替加算」)。
 
(※7)日本年金機構「年金Q&A/「年金見込額のお知らせ」では、加給年金額は除かれていますが、扶養している配偶者がいるときは加給年金額が支給されますか。」
 
障害厚生年金を受給している場合なども支給停止となる。
 
(※8)全国信用金庫厚生年金基金「令和3年度 ねんきん定期便の変更点」
(※9)日本年金機構「年金Q&A/国民年金基金に加入していましたが、「年金加入履歴」に基金加入期間が表示されていません。どうしてですか。」
 
(前略)国民年金の上乗せ制度である国民年金基金の加入記録は表示していません。
 
執筆者:酒井 乙
CFP認定者、米国公認会計士、MBA、米国Institute of Divorce FinancialAnalyst会員。

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