離婚前に知っておきたい「年金分割制度」。分割後は1ヶ月当たりいくら増える?
配信日: 2022.04.17
年金分割制度とはどのような制度で、もし将来の年金が増える場合はどれくらい増額するのか、確認していきます。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
目次
年金分割制度とは
年金分割制度とは夫婦が離婚したとき、2年以内にどちらか一方、または双方からの請求によって、婚姻期間中の厚生年金の加入記録を分割し、夫婦それぞれの年金加入記録とすることができる制度です。
分割が行われると、加入記録を分けた方は、分けた残りの記録に基づいて将来年金を受け取ることになります。また、加入記録を分けてもらった方は、その期間分の加入記録に基づいた年金を受け取れます。
つまり、年金分割制度を利用すれば、婚姻期間中に専業主婦であった方でも、その間の夫の加入記録に基づいた厚生年金を受けられるということです。なお、年金分割は厚生年金特有の制度であり、国民年金については分割できません。
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2つの年金分割制度
年金分割制度には、当事者の合意、あるいは裁判手続きによって分割の割合を定めて行われる「合意分割」と、国民年金第3号被保険者(専業主婦の妻など)からの請求により、相手の厚生年金記録を2分の1ずつ分割する「3号分割」があります。
どちらの分割制度も原則、離婚の翌日から2年以内に請求を行う必要があるため、年金分割について考えている場合は速やかに手続きをしなければなりません。
年金分割をする場合は合意分割と3号分割のいずれも、まずは分割に必要な情報通知書の請求手続きをして、最寄りの年金事務所から郵送で「年金分割のための情報通知書」を受け取るところから始まります。
その後、合意分割の場合は分割の割合について話し合いを行い、まとまれば年金事務所などで年金分割の請求の手続きを、もし合意できなかったら家庭裁判所に裁判手続きを申し立て、分割の割合を定めた後に申請手続きとなります。
一方、3号分割の場合は当事者の同意は必要なく、婚姻期間中に国民年金第3号被保険者であった方が単独で手続きできます。
具体的な手続きの流れや詳細などについては、最寄りの年金事務所でご確認ください。
年金分割で将来受け取る年金はどのくらい増えるのか
年金分割によって婚姻期間中の厚生年金の加入記録について分割を受けた場合、将来受け取る年金がどれくらい増えるのかは、婚姻期間、婚姻期間中の配偶者の収入など個別の事情によって異なります。
参考までに厚生労働省「令和2年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によれば、年金分割で増える年金額は令和2年度の平均で月額3万774円となっています。そのうち、専業主婦など扶養に入っていた方が行う3号分割のみの場合では、増える年金額の平均は月額5950円でした。
年金分割制度は年金額を分割する制度ではない
年金分割によって増える年金額が平均で月額3万円程度、3号分割にいたっては約6000円という統計について、多くの方が「思ったより少ない」と感じるのではないでしょうか。
これは年金分割が、あくまでも婚姻期間中の厚生年金の加入記録を分割するものであるためです。間違っても、将来相手に支給される年金額の半分がもらえる制度だと勘違いしないようにしてください。
離婚後、年金分割によって増える年金額は平均3万円程度
年金分割は、婚姻期間中の相手の厚生年金の加入記録について分割を受けられる制度ですが、分割によって増える年金額の平均は月額3万円程度と、それだけで老後は安泰といえるような金額にならないのが現実です。
しかし、専業主婦など婚姻期間中に厚生年金に加入していなかった方や、将来の厚生年金の受給額が少ない方にとっては、老後の生活の一助となることも事実です。
年金分割を検討している方は、離婚後2年という期間内に手続きができるよう、早めに準備をするようにしてください。
出典
厚生労働省 令和2年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況
日本年金機構 離婚時の年金分割について
執筆者:柘植輝
行政書士