令和4年から「眼の障害」の認定基準が改正。障害年金額が変わるのはどんな人?
配信日: 2022.04.23
視力障害や視野障害に対する判定方法の変更や、基準の数値が緩和されています。改正後の基準で認定が適用されると、新たに障害年金の受給対象となるケースや受給額が増える可能性があります。
まずは「眼の障害」における改正、そして、どのような方が年金額増額となるのかお伝えします。
執筆者:大竹麻佐子(おおたけまさこ)
CFP®認定者・相続診断士
ゆめプランニング笑顔相続・FP事務所 代表
証券会社、銀行、保険会社など金融機関での業務を経て現在に至る。家計管理に役立つのでは、との思いからAFP取得(2000年)、日本FP協会東京支部主催地域イベントへの参加をきっかけにFP活動開始(2011年)、日本FP協会 「くらしとお金のFP相談室」相談員(2016年)。
「目の前にいるその人が、より豊かに、よりよくなるために、今できること」を考え、サポートし続ける。
従業員向け「50代からのライフデザイン」セミナーや個人相談、生活するの観点から学ぶ「お金の基礎知識」講座など開催。
2人の男子(高3と小6)の母。品川区在住
ゆめプランニング笑顔相続・FP事務所 代表 https://fp-yumeplan.com/
目次
令和4年1月1日からの障害年金の認定基準「眼の障害」改正のポイント
「眼の障害」は、大きく分けると、「視力(物体を識別する能力)障害」と「視野(見える範囲)障害」「その他」に分類されます。「その他」には、瞼(まぶた)の著しい欠損や調節機能、輻輳(ふくそう)機能障害などが挙げられます。令和4年1月1日より認定基準が改正されたのは、「視力障害」と「視野障害」についてです。
まずは、改正のポイントを見てみましょう。
■視力障害
認定基準が、「両眼の視力の和」から「良い方の眼の視力」に変更されました。
■視野傷害
これまではゴールドマン型視野計に基づく認定基準のみでしたが、広く普及している自動視野計に基づく認定基準が創設されました。
求心性視野狭窄(きょうさく)や輪状暗点といった症状による限定から、測定数値による認定へと変更されました。
ゴールドマン型視野計に基づく認定基準についても整理が行われ、新たに視野障害1級および3級の規程が追加されました。
平成24年(2012年)以降、厚生労働省では障害年金の認定(眼の障害)に関する専門家会合において、判断基準やあいまいな記述について議論が継続されてきました。
今回の改正は、平成30年(2018年)7月に改正された身体障害者福祉法の視覚障害認定基準に沿った内容となっており、障害年金の受給者だけでなく、判定する医療従事者にも注目されています。
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1、視覚障害の改正点~何が、どのように変わったの?
視覚障害についてはどのように改正されたのか、具体例で見てみます。
なお、改正前との比較は、図表1が参考になります。
(改正前)両目で0.05のため2級 →(改正後)右目(良い方)0.03のため1級
*これまでの1級の認定基準は「両眼の視力の和が0.04以下」
(改正前)両目で0.09のため3級 →(改正後)右目(良い方)0.05のため2級
図表1の太枠部分を見ると、改正前と比較して、等級が上がっていることが分かります。
【図表1】
(出典:「厚生労働省・日本年金機構「障害年金に関するお知らせ」」
【図表2】
2、視野障害の改正点~何が、どのように変わったの?
視野障害については、これまでのゴールドマン型視野計による測定では、周辺視野を図る8方向での角度がそれぞれ10度以内であることが基準でした。そのため、1方向だけが11度であった場合には認定されませんでした。改正により、周辺視野角度の和が80度以下が基準と変更されたため、上記のような方向によるばらつきがある場合でも認定されることになります。
ゴールドマン型視野計は「角度」を測定しますが、自動視野計は、「点数」で数値化する測定方法と言われています。両眼開放エスターマンテストで測定した「両眼開放視認点数」と、10-2プログラムで測定した「両眼中心視野視認点数」により判定を行います。改正により、自動視野計で計測結果を記載する欄が増えるなど、診断書の様式が変更になっていますので注意が必要です。
今回の改正での注目すべき点は、これまで視野障害については、障害の程度が2級のみだったものが、1級および3級が追加されたことではないでしょうか。これまで2級の基準と見なされず障害手当金を受け取っていた方で、今回の改正により追加された3級に該当する方は、障害厚生年金を受給できる可能性があります。
状態を適正に判断するための基準改正、早めの手続きを。
障害年金の認定は、申請者から提出された診断書等から、規定されている障害の状態に該当するかを判断します。「労働に制限」や「労働により収入を得ることができない」「日常生活に影響」といった「状態」の判断は、判断する側にとっても難しく、基準となる数値が明確かつ納得のいくものである必要が求められます。
これまで視力や視野に障害があるものの認定されなかった方にとっては、朗報と言える改正です。また、改正により等級が下がることのないよう配慮がされている点にも「社会全体での支え合い」が読み取れます。
自分自身のほか、身近な方やお知り合いの方で、もしかしたら該当するのでは、と思われる場合には、年金事務所に問い合わせてみることをおすすめします。そして、該当する場合には、改定請求の手続きを早めにおこないましょう。
出典
日本年金機構 令和4年1月1日から「眼の障害」の障害認定基準が一部改正されます
日本年金機構 障害年金に関するお知らせ
執筆者:大竹麻佐子
CFP🄬認定者・相続診断士