更新日: 2022.04.25 その他年金

遺族年金がもらえないのはどんなとき? ケースごとに解説

執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部 / 監修 : 高橋庸夫

遺族年金がもらえないのはどんなとき? ケースごとに解説
世帯の大黒柱となる働き手や年金を受給している人が亡くなられた場合、受給要件を満たす遺族が「遺族年金」を受け取ることができます。
 
しかし、遺族年金は全ての遺族に給付されるものではなく、亡くなられた人の年金の納付状況や遺族の年齢によって、遺族年金がもらえないケースがあります。
 
この記事では、遺族年金の受給要件と遺族年金がもらえない4つのケースについて解説します。
FINANCIAL FIELD編集部

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)

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高橋庸夫

監修:高橋庸夫(たかはし つねお)

ファイナンシャル・プランナー

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サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。

遺族年金の受給要件とは?

 
遺族年金には、国民年金の被保険者が亡くなったときに支給される「遺族基礎年金」と、厚生年金の被保険者が亡くなったときに支給される「遺族厚生年金」の2種類があります。
 
遺族基礎年金と遺族厚生年金では、受給要件に違いがありますので注意が必要です。また、遺族基礎年金と遺族厚生年金の双方の受給要件を満たしていれば、遺族基礎年金に遺族厚生年金を上乗せして受け取ることができます。
 

遺族基礎年金の受給要件

 
遺族基礎年金は、以下のいずれかの要件を満たした人が亡くなったときに、受給要件を満たす遺族に支給されます。

●国民年金の被保険者
●60歳以上65歳未満で日本国内に住所がある人
●老齢基礎年金の受給権者
●老齢基礎年金の受給資格を満たした人

この受給要件を満たす死亡した人から、生計を維持されていた子のある配偶者、または子が遺族基礎年金を受け取れます。
 
なお、子には年齢要件があります。

●18歳になった年度の3月31日までにある人
●20歳未満で障害年金の障害等級1級、2級の人

また、国民年金の独自給付として「寡婦年金」と「死亡一時金」があります。
 
寡婦年金は、死亡日の前日において国民年金の第1号被保険者として保険料を納めた期間、および国民年金の保険料免除期間が合計10年以上ある夫が亡くなったときに、10年以上婚姻関係にある、かつ死亡当時にその夫に生計を維持されていた妻に対して支給されるものです。
 
一方、死亡一時金は、死亡日の前日において国民年金の第1号被保険者として保険料を納めた月数が36月以上ある人が、老生基礎年金や障害基礎年金を受けないまま亡くなったとき、生計を同じくしていた遺族に支給されるものです。
 

遺族厚生年金の受給要件

 
遺族厚生年金は、以下のいずれかの要件を満たした人が亡くなったときに、受給要件を満たす遺族に支給されます。

●厚生年金保険の被保険者
●厚生年金の被保険者期間に初診日のある傷病が原因で、初診日から5年以内に亡くなった人
●1級、または2級の障害厚生(共済)年金を受け取っている人
●老齢厚生年金の受給権者
●老齢厚生年金の受給資格を満たした人

この受給要件を満たす死亡した人に生計を維持されていた、以下、図表1にある遺族のうち、最も優先順位の高い遺族に遺族厚生年金が支給されます。
 
図表1

優先順位 続柄
1 子のある妻
子のある55歳以上の夫
2 子のない妻
子のない55歳以上の夫
3 55歳以上の父母
4
5 55歳以上の祖父母

※子のある妻または子のある55歳以上の夫が遺族厚生年金を受け取っている間は、子には遺族厚生年金は支給されません
 
出典:日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)より筆者作成
 
なお、遺族厚生年金には下記2つの加算給付があります。
 
・中高齢寡婦加算
遺族厚生年金を受ける妻が、40~65歳までの間、遺族厚生年金に加算してもらえる制度です。
 
以下のいずれかに該当する妻が受ける遺族厚生年金には、年間58万3400円が加算されます。

●夫の死亡時に40歳以上65歳未満で、生計を同じくしている子がいない妻
●遺族厚生年金と遺族基礎年金を受けていた子のある妻が、子が18歳到達年度の末日に達した等のため、遺族基礎年金を受給できなくなったとき

・経過的寡婦加算
遺族厚生年金を受給している妻が65歳となり、自分の老齢基礎年金を受給するようになったときに、65歳までである中高齢寡婦加算に代わりに加算される制度です。
 
以下のいずれかに該当する場合、遺族厚生年金に経過的寡婦加算が加算されます。

●昭和31年4月1日以前生まれの妻に、65歳以上で遺族厚生年金の受給権が発生したとき
●中高齢寡婦加算がされていた昭和31年4月1日以前生まれの遺族厚生年金の受給権者である妻が65歳に達したとき

「中高齢寡婦加算」「経過的寡婦加算」ともに手続きは必要ありません。遺族厚生年金の受給権がある人には、条件に応じて新規加算や切り替えが行われます。
 
なお、65歳以上で遺族厚生年金と老齢厚生年金を受ける権利がある人は、老齢厚生年金が全額支給となり、遺族厚生年金は老齢厚生年金に相当する額の支給が停止となります。
 

遺族年金がもらえないケース

 
遺族年金は、遺族基礎年金・遺族厚生年金ともに受給要件を満たしていなければ受給できません。遺族年金を受給できるのは、遺族のうち優先度が最も高い人に限ります。
 
また、遺族年金を受給中の人でも、婚姻などの事由によって受給資格が消滅してしまうこともあります。
 
ここでは、遺族年金がもらえない、4つのケースの理由を解説します。
 

子がいない、または子の要件に該当しない

 
世帯の働き手や年金を受給している人が亡くなった場合でも、原則として、以下のようなケースでは遺族年金の受給資格がありません。
 
遺族基礎年金の受給対象者は、子のある配偶者、または子となっています。つまり、子がいない配偶者は遺族年金を受給できません。
 
一方、遺族厚生年金の場合、30歳未満の子のない妻にも受給資格はありますが、受給期間は5年間に限定されます。
 
また、遺族基礎年金、遺族厚生年金ともに子には年齢制限があり、下記に該当する子は受給対象外となります。

●18歳になった年度の3月31日を過ぎている
●18歳以上20歳未満で障害がある子ではない

さらに、年齢の要件を満たしている場合でも、子が婚姻している場合には受給の対象外となります。
 

亡くなった人からの生計維持要件に該当しない

 
遺族年金は、次に該当する遺族に支給されます。

●死亡当時、死亡した人に生計を維持されていた人
●原則として、前年の収入が年収850万円未満の人

ただし、死亡当時に年収850万円を超える人でも、退職や廃業などによっておおむね5年以内に年収が850万円未満になる見込みの人には、遺族年金が支給される可能性があります。
 

配偶者が再婚、子が婚姻した場合

 
それまで遺族年金を受給していても、配偶者が再婚した場合、子が婚姻した場合には受給資格を失います。
 
受給資格が消滅した場合、年金事務所や年金相談センターもしくは市区町村役場の窓口への届け出が必要です。
 

保険料納付要件を満たしていない

 
亡くなった人が、保険料納付要件を満たしていない場合、遺族年金は支給されません。
 
日本年金機構が公開する「遺族年金ガイド」によると、保険料納付要件は以下の通りです。

「死亡日の前日において、死亡日が含まれる月の前々月までの被保険者期間に、国民年金の保険料納付済期間および免除期間、厚生年金保険の被保険者期間、共済組合の組合員期間の合計が3分の2以上あることが必要です。なお、死亡日が令和8年3月末日までのときは、死亡した人が65歳未満であれば、死亡日の前日において、死亡日が含まれる月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければよいことになっています。」
出典:日本年金機構 遺族年金ガイド 令和4年度版

 

遺族年金の受給要件は、特に子の年齢に注意が必要

 
遺族年金は、一家の大黒柱を失った遺族の生計を維持するための、救済となるものです。
 
ただし、遺族年金の受給には要件があります。特に子が受け取る場合には、原則として18歳未満までという年齢制限がある点に注意が必要です。
 
また、亡くなった人が保険料納付要件を満たしていない場合も遺族年金がもらえませんので、存命中に保険料の未納期間を解消しておくようにしましょう。
 

出典

日本年金機構 遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)
日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)
日本年金機構 遺族年金ガイド 令和4年度版
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
 
監修:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー

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