更新日: 2022.04.26 年金

【FP相談】働きながら年金を受け取る時に、気をつけなければならないことはありますか?

執筆者 : 三藤桂子

【FP相談】働きながら年金を受け取る時に、気をつけなければならないことはありますか?
Aさんは、間もなく定年を迎える会社員です。定年後は、同じ企業で嘱託社員として働き続ける予定です。
 
「働きながら年金を受け取ると、もらえなくなる年金があるのだとすれば、将来受け取る年金額が減り損をしてしまうのでは?」と心配しています。そもそも、働きながら年金を受け取る仕組み自体がよく分かりません。どのようなことに気をつければ良いのでしょうか。
 
三藤桂子

執筆者:三藤桂子(みふじけいこ)

社会保険労務士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、FP相談ねっと認定FP、公的保険アドバイザー、相続診断士

大学卒業後、公務員、専業主婦、自営業、会社員、シングルマザーとあらゆる立場を経験した後、FPと社会保険労務士の資格を取得し、三藤FP社会保険労務士事務所 代表 三角桂子として開業。

社会保険労務士とFP(ファイナンシャルプランナー)という二刀流で活動することで、会社側と社員(個人)側、お互いの立場・主張を理解し、一方通行的なアドバイスにならないよう、会社の顧問、個別相談などを行う。

また年金・労務を強みに、セミナー講師、執筆・監修(筆名:三藤)など首都圏を中心に活動中。

https://fp-keiko.com/

在職老齢年金とは

60歳以降、働きながら年金(老齢厚生年金)を受け取る人は、一定の金額を超えると年金額の一部もしくは全部が支給停止されます。この仕組みを在職老齢年金といいます。
 
もう少し具体的に説明すると、総報酬月額相当額と基本月額が47万円を超えると超えた額の2分の1の年金額が支給停止されます。これを式に表すと次のとおりです。
 
< 支給停止額=(総報酬月額相当額+基本月額-47万円) ×1/2 >
 
ここで、標準報酬月額は毎月の賃金(標準報酬月額)+1年間の賞与(標準賞与額)を12で割った額を総報酬月額相当額といいます。基本月額は老齢厚生年金を12で割った額であり、老齢基礎年金、経過的加算は含まれません。
 
これまで60歳前半と60歳後半の人とで計算が異なっていましたが、2022年4月1日から統一した計算方法となりました。60歳以降で、厚生年金保険の適用事業所に勤務しながら年金を受け取る人が、在職老齢年金の対象となります。
 

在職老齢年金の計算

具体的に計算してみましょう。Aさんの給与41万円(標準報酬月額)、賞与なし、基本月額が10万円とすると……。
 
支給停止額=(41万円+10万円−47万円)×1/2=2万円
 
2万円が年金額から支給停止されることにより、10万円−2万円=8万円がAさんの1ヶ月の年金額です。
 

高年齢雇用継続給付による年金の調整について

年金を受け取っている65歳未満の人が、同時に雇用保険の高年齢雇用継続給付を受けるときは、前段の在職による年金の支給停止だけでなく、さらに年金の一部(最高で標準報酬月額の6%)が支給停止されます。
 
高年齢雇用継続給付とは、雇用保険の加入期間が5年以上ある60歳以上65歳未満の加入者に対し、賃金額が60歳到達の時75%未満となった人を対象に、最高で賃金額の15%に相当する額が雇用保険等から支払われるものです。
 
具体的に計算してみましょう。Bさんの場合、総報酬月額相当額30万円、基本月額12万円、60歳到達時点で月額50万円だった賃金額が月額30万円に下がったとすると……。
 
基本月額と総報酬月額相当額の合計額が47万円を超えないため、在職による支給停止はありません。Bさんは60歳以降の賃金から次の計算式により、高年齢雇用継続給付を受け取ることができます。
 

30万円÷50万円=0.6(60%)<75%であるため、30万円×15%=4万5000円
年金の支給停止額 =30万円(標準報酬月額)×6%=1万8000円

 
Bさんは雇用保険から給付を受けることができますが、年金から1万8000円が支給停止されます。
 

65歳未満は2段階で年金が調整される可能性もある?

次にCさんの場合、総報酬月額相当額36万円、基本月額13万円、60歳到達時点で月額54万円だった賃金額が月額34万円に下がったとすると……。
 

在職老齢年金による支給停止額=(36万円+13万円−47万円)×1/2=1万円
34万円÷56万円≒0.6(60%)<75%であるため、34万円×15%=5万1000円
年金の支給停止額 =34万円(標準報酬月額)×6%=2万400円

 
Cさんは、在職老齢年金による年金額の支給停止と、雇用保険の高年齢雇用継続給付を受けていることによる年金額の支給停止と、2段階で調整されることになります。
 

65歳以上の人は1年ごとに年金額が改定される(在職定時改定)

2022年3月までは、65歳以上70歳未満の厚生年金保険の被保険者期間は、退職または70歳 にならないと年金額に反映されることなく再計算されませんでした。
 
就労を継続したことの効果を、退職を待たずに早期に年金額に反映することで、年金を受給しながら働く方の経済基盤の充実を図る観点から、2022年4月から在職中であっても年金額を毎年10月分から改定する制度が導入されました。これを在職定時改定といいます。
 
在職定時改定が導入されることで、これまで在職老齢年金の対象外だった人でも毎年、年金額が増えることにより年金が一部支給停止される可能性があります。在職老齢年金の計算で、ギリギリ47万円未満により支給停止されなかった人は、もしかすると70歳までの間で在職老齢年金の一部支給停止対象になる可能性があるので注意が必要です。
 

まとめ

60歳以上70歳未満で年金を受け取っている人が、厚生年金保険の適用事業所で働いている場合、在職老齢年金の仕組みが適用されます。同じように70歳以上の人も、厚生年金保険に加入しないため保険料の負担はありませんが、厚生年金保険の適用事業所で働いている場合、在職老齢年金の仕組みは適用されます。
 
在職老齢年金などで年金が支給停止された部分の年金は、将来受け取ることはできません。65歳以降の年金を繰り下げした場合でも、支給停止された年金額は増えることはありません。
 
在職老齢年金や雇用保険の仕組みについて理解を深め、年金の受け取るタイミングやライブプランを考えてみてはいかがでしょうか。
 

出典

日本年金機構 在職年金の支給停止の仕組み 〜働きながら年金を受けるときの注意事項〜
 
執筆者:三藤桂子
社会保険労務士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、FP相談ねっと認定FP、公的保険アドバイザー、相続診断士
 

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