年金の繰上げ受給はデメリットが多いと言われる理由。減額以外にも損することとは?
配信日: 2022.05.17
ここでは、繰上げ受給の仕組みに加えて、デメリットを3つ取り上げて紹介します。繰上げ受給を視野に入れている人は、デメリットも理解したうえで、じっくり検討してみてください。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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繰上げ受給は年金を早く受け取れる代わりに減額される制度
年金の繰上げ受給は、老齢基礎年金や老齢厚生年金の受給開始時期を、本来の65歳から60歳までの任意の時期に繰り上げられる制度です。ただし、繰上げ受給を開始するタイミングに応じて年金が減額され、終生減額された額の年金を受け取ることになります。
繰上げ受給で減額される年金額は、老齢基礎年金の額(振替加算額を除く)と老齢厚生年金の額(加給年金額を除く)に、次の式で求めた減額率を掛けて計算します。
減額率(最大24%)= 0.4%×繰上げ受給の開始月から65歳に達する日の前月までの月数
なお、この式は昭和37年4月2日以降生まれの人の場合です。昭和37年4月1日以前生まれの人の減額率は、0.5%(最大30%)となります。
例えば、本来は毎月15万円の年金を受給できる人が60歳0ヶ月まで開始時期を繰り上げた場合、年金額は24%(3万6000円)減額され、11万4000円に減る計算です。
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繰上げ受給の減額以外のデメリット
年金の繰上げ受給をすると年金額が減額されること以外にも、次のようなデメリットがあります。
●国民年金に任意加入できなくなる
●ほかの公的年金をもらえなくなる
●厚生年金保険の長期加入者・障害者の特例措置を受けられなくなる
いずれも、該当しない場合には問題ありませんが、該当する場合には損をする可能性があるため注意が必要です。以下でそれぞれ詳しく説明します。
国民年金に任意加入できなくなる
60歳までに老齢基礎年金の受給資格期間に到達しなかった場合や、納付済期間が40年に満たず老齢基礎年金を満額受給できない場合などには、60歳以降でも国民年金への任意加入ができます。
しかし、任意加入条件のひとつに「老齢基礎年金の繰上げ支給を受けていない方」というものがあるため、繰上げ受給を開始した時点で国民年金に任意加入する資格は失われてしまいます。
国民年金保険料を欠けることなく納めてきた人には関係ないデメリットですが、任意加入を考えている人は注意が必要です。
ほかの公的年金をもらえなくなる
公的年金には1人1年金の原則があり、老齢・障害・遺族など支給事由が異なる複数の年金は原則、並行して受給できません。そのため、老齢年金の繰上げ受給を開始すると、ほかの公的年金に関して次のようなデメリットが生じます。
●65歳になるまで遺族厚生年金や遺族共済年金などが受給できない(65歳以降は特例的に老齢年金と遺族年金の並給ができる場合がある)
●新たな障害年金の請求ができない
●寡婦年金が受給できない(受給中の人は権利が消失する)
そのため、ほかの年金を受給中の人や病気やけがの治療中で障害年金請求の可能性がある人は、繰上げ受給をすると損になる可能性があります。
厚生年金保険の長期加入者・障害者の特例措置を受けられなくなる
「厚生年金保険の長期加入者の特例」とは、44年以上厚生年金保険に加入していて、特別支給の老齢厚生年金(報酬比例部分)を受け取っている人が、定額部分の受給開始年齢に達する前に退職などで被保険者ではなくなった場合に、翌月分から報酬比例部分に加えての定額部分や対象者がいる場合は加給年金を受給できる制度です。
また「障害者特例」とは、特別支給の老齢厚生年金(報酬比例部分)を受け取っている人が、定額部分の受給開始年齢に達する前に障害の状態となった場合に、翌月分から報酬比例部分に加えての定額部分や対象者がいる場合は加給年金を受給できる制度です。
これらの特例措置に該当する可能性がある人は、老齢年金の繰上げ受給をすると適用を受けられなくなることも覚えておきましょう。
繰上げ受給はデメリットを理解して検討しよう
年金の繰上げ受給は、年金の支給開始時期を早めることで生活資金の不足などに対応できるメリットがある一方で、年金額が減額される、国民年金の任意加入やほかの年金の受給ができなくなる、一部の特例措置を受けられなくなるなどのデメリットがあります。
安易に繰り上げを選択して後悔しないように、デメリットをよく理解したうえで「それでもメリットがある」と判断できた場合にのみ、繰上げ受給を検討するのがおすすめです。
出典
日本年金機構 年金の繰上げ受給
日本年金機構 任意加入制度
日本年金機構 年金の併給または選択
日本年金機構 か行 寡婦年金
日本年金機構 44年以上厚生年金保険に加入している特別支給の老齢厚生年金(報酬比例部分)の受給者が、退職などで被保険者でなくなったとき
日本年金機構 特別支給の老齢厚生年金(報酬比例部分)を受けている方が、定額部分の支給開始年齢到達前に障害の状態になったとき
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部