更新日: 2022.06.28 厚生年金
夫が亡くなったのに遺族厚生年金を受け取れない! その理由とは?
特にお金の問題は重要です。それまで夫の収入で家計が支えられてきたなら、目の前が真っ暗になるかもしれません。そんなときに遺族厚生年金を受け取れれば、大きな助けになります。
ところが、受け取れるものとばかり思っていた遺族厚生年金が支給されないケースがあります。3つの例を挙げながら、説明します。
執筆者:蟹山淳子(かにやま・じゅんこ)
CFP(R)認定者
宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー
蟹山FPオフィス代表
大学卒業後、銀行勤務を経て専業主婦となり、二世帯住宅で夫の両親と同居、2人の子どもを育てる。1997年夫と死別、シングルマザーとなる。以後、自身の資産管理、義父の認知症介護、相続など、自分でプランを立てながら対応。2004年CFP取得。2011年慶應義塾大学経済学部(通信過程)卒業。2015年、日本FP協会「くらしとお金のFP相談室」相談員。2016年日本FP協会、広報センタースタッフ。子どもの受験は幼稚園から大学まですべて経験。3回の介護と3回の相続を経験。その他、宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー等の資格も保有。
遺族厚生年金の受給に必要な加入期間
<事例1>
K子さんの夫(66歳)は退職後、老齢基礎年金と老齢厚生年金を受け取っていました。専業主婦だったK子さんの年金は、老齢基礎年金だけです。
夫が亡くなった後は遺族厚生年金を受け取れると期待していたのですが、年金事務所に問い合わせたところ、遺族厚生年金は受け取れないという答えが返ってきました。
<事例1は、なぜ遺族厚生年金を受け取れなかったのか>
K子さんの夫はかつて俳優を目指し、アルバイトで生計を立てていました。生活が苦しかったため、国民年金には加入しませんでした。
K子さんと結婚して子どもが生まれ、夢をあきらめて就職したのは37歳のときです。それから60歳で定年退職するまで23年間、厚生年金に加入していました。
老齢年金は、加入期間が10年以上あれば受け取ることができます。ですから、加入歴が23年のK子さんの夫は、老齢基礎年金と老齢厚生年金の両方を受け取っていました。
ところが、退職して厚生年金に加入していない状況で亡くなった場合、配偶者が遺族厚生年金を受給するには、25年以上の加入期間が要件です。そのため、K子さんは遺族厚生年金を受け取ることができません。
遺族基礎年金も18歳以下(18歳到達年度の末日まで)の子どもがいない場合は、受け取ることができません。K子さんの子どもは成人しているため対象となりませんでした。
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厚生年金の加入歴
<事例2>
U子さんの夫は会計事務所に勤めていました。58歳で亡くなった後、U子さんは、「夫は在職中に亡くなったのだから遺族厚生年金が受け取れるのではないか」と思って年金事務所に問い合わせたのですが、厚生年金に加入していなかったので、遺族厚生年金は受け取れないと言われてしまいました。
<事例2は、なぜ遺族厚生年金を受け取れなかったのか>
U子さんは自分が会社員で厚生年金に加入していたため、給与所得者の夫も厚生年金に加入していると思っていました。
ところが、U子さんの夫が務めていた会計事務所は、厚生年金制度の適用事業所ではありませんでした。夫が厚生年金に加入していなかったので、U子さんは遺族厚生年金を受け取れません。子どもがいないので、遺族基礎年金も受け取れません。
夫が亡くなったときに、妻が60歳から65歳未満であれば寡婦年金の対象となったのですが、U子さんは50代でした。U子さんの夫はこれまで国民年金保険料を39年間納めてきましたが、受け取ることができたのは死亡一時金の32万円だけでした。
妻の年齢が30歳未満
<事例3>
I子さんは27歳で結婚し、専業主婦となって2年だったのですが、夫が病気で亡くなってしまいました。
I子さんの夫は会社員でした。年金加入期間は短いのですが、厚生年金加入中に亡くなったので遺族厚生年金の対象となります。I子さんは遺族厚生年金を受け取ることができたのですが、受け取れるのは5年間だけと分かりました。
<事例3は、なぜ受給期間が短いのか>
厚生年金に加入している夫が亡くなったときに、妻の年齢が30歳以上であれば、妻は遺族厚生年金を終身で受け取ることができます。
妻が30歳未満の場合、子どもがいれば遺族厚生年金を終身で受け取ることができるのですが、子どもがいないと遺族厚生年金の受給は5年間に限られます。I子さんは29歳で子どもがいなかったので、5年の有期年金となってしまいました。
まとめ
誰しも、万一のことは想像したくないものですが、家計を支えている人が亡くなったとき、配偶者に遺族年金の受給資格があるか、必ず確認しておきましょう。
もしも、遺族年金を受け取れないのであれば、それも考慮しながら、保険や貯蓄で万一の備えをしておくと安心です。
執筆者:蟹山淳子
CFP(R)認定者