更新日: 2022.06.30 その他年金

離婚時の「年金分割」が合意に至らないときは「3号分割制度」にすべき? 「合意分割」との違いやメリット・デメリットを解説

離婚時の「年金分割」が合意に至らないときは「3号分割制度」にすべき? 「合意分割」との違いやメリット・デメリットを解説
年金分割は、婚姻期間中の厚生年金納付記録を分割することで、専業主婦(夫)だった人などの高齢期の所得保障を図る制度です。ただし、この年金分割は原則的に2人の合意に基づいて分割割合を決めることが前提となっています。
 
本記事では、合意分割ができないときに利用できる「3号分割」について解説します。離婚時に万が一、意見がまとまらなかった場合の選択肢として参考にしてみてください。
西岡秀泰

執筆者:西岡秀泰(にしおか ひでやす)

社会保険労務士・FP2級

合意分割と3号分割の違い

まず、合意分割と3号分割の違いについて確認しましょう。
 

分割の対象となる期間の違い

年金分割とは、婚姻期間中の厚生年金納付記録(標準報酬という)を分割することです。標準報酬は、将来の老齢厚生年金額を決める計算基礎となるもので、標準報酬が高いほど年金額も大きくなります。
 
合意分割の場合、婚姻していた全期間について標準報酬の分割が行われます。一方、3号分割については、「2008年(平成20年)4月1日以降で夫婦の一方が厚生年金加入、もう一方が国民年金の第3号被保険者であった期間」の標準報酬のみが分割の対象です。
 
つまり3号分割の場合は、2008年3月31日以前の期間や、夫婦ともに厚生年金に加入していた期間については年金分割の対象に含まれないことになります。
 

分割する割合の違い

標準報酬を分割する割合は、合意分割の場合、夫婦であった2人の合意によって任意で決めることができます。ただし、分割を受ける人の上限は、標準報酬の50%と定められています。
 
一方、3号分割の場合、分割する割合は一律50%と定められています。分割の対象期間は限定されますが、制度上は合意の有無に関わらず標準報酬の半分が分割されることになります。
 

請求者の違い

合意分割は夫婦であった2人の合意が必要であるため、原則2人で請求します。ただし、分割する割合などが記載された公正証書や離婚調停調書の謄本などがあれば、どちらか一方のみで請求手続きできます。
 
3号分割の場合、請求するのは婚姻期間中に第3号被保険者であった人です。相手の合意なしで単独で分割を請求することができます。
 

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3号分割のメリットとデメリット

3号分割のメリットは、第3号被保険者であった人が相手の合意なしで分割請求できる点にあります。相手が将来の年金額が減ることを嫌がって合意に至らない場合や、どちらかが話し合いを拒否している場合などでは、3号分割を選択せざるを得ないこともあります。
 
一方、3号分割のデメリットは、合意分割と比較して将来の年金額が少なくなる可能性があることです。特に、2008年3月31日以前の婚姻期間が長い専業主婦(夫)や、パートなどで給与(標準報酬)が少なかった人ほど、3号分割によるデメリットは大きくなります。
 
ただし、2008年4月1日以降に結婚してから婚姻期間中はずっと第3号被保険者であった人の場合、合意分割でも3号分割でも年金額は変わらないため、手続きが簡単という意味では、3号分割を選ぶメリットが大きくなります。
 

状況に応じて見極めを

離婚時の年金分割の割合で合意に至らない場合に3号分割を選択しますと、将来の老齢厚生年金額が少なくなるケースもあります。まずは合意分割の実現に向け、相手方としっかりと協議しましょう。うまくいかない場合は、家庭裁判所の審判や調停に頼るという方法もあります。
 
その上で、3号分割を選択せざるを得ない場合には、老後の生活を支える貴重な収入源を確保するため、忘れずにしっかり手続きを進めましょう。
 

出典

日本年金機構 離婚時の年金分割
日本年金機構 離婚時の厚生年金の分割(合意分割制度)
日本年金機構 離婚時の厚生年金の分割(3号分割制度)
最高裁判所 年金分割の割合を定める審判又は調停
 
執筆者:西岡秀泰
社会保険労務士・FP2級

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