会社員の妻と自営業者の妻。夫に先立たれた場合に受け取る遺族年金にどのくらいの差がある?
配信日: 2022.07.14
そこでこの記事では、夫が亡くなった場合、会社員の妻と自営業者の妻が、受け取る遺族年金にどれくらいの差があるのか考えてみます。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
遺族年金の種類
遺族年金には、「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2つがあります。どちらの遺族年金も、亡くなった夫に生計を維持されていた妻であれば、要件を満たすことで受け取ることができるものです。
遺族基礎年金は、国民年金に加入していた方に生計を維持されていた子がいる配偶者、または子が受給対象です。国民年金の第1号被保険者である自営業者の妻が受け取る遺族年金は、通常、遺族基礎年金となります。
それに対して遺族厚生年金は、厚生年金に加入していた方に生計を維持されていた遺族のうち、優先順位の高い方が受け取ることができます。厚生年金の被保険者である会社員の夫に生計を維持されていた妻は、要件を満たしている場合に遺族厚生年金と遺族基礎年金を合わせて受け取れます。
ちなみに、夫が自身の経営する会社で厚生年金に加入しているようなケースでは、妻は遺族厚生年金の受給対象となります。
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受け取る遺族年金の差は?
万が一、夫が亡くなった場合、会社員の妻と自営業者の妻が実際に受け取れる遺族年金にはどれくらいの差があるか、以下の条件を前提に計算してみます。
●遺族年金の受給要件は満たしている
●18歳未満の子が2人いる
●自営業者の夫は過去、厚生年金には加入していない
●会社員の夫は平成15年4月以降に厚生年金に加入(加入期間は25年未満)
自営業者の妻が受け取る遺族年金の額
子がいる自営業者の妻が受け取る遺族基礎年金の金額は、一律で年額77万7800円(令和4年度)となります。
また、子(18歳になった年度の3月31日までの間にある子、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある子)の人数に応じて、加算額が上乗せされた金額を受け取れます。
子の加算額は2人目までは1人につき22万3800円、3人目以降は1人につき7万4600円です。子が2人いる妻が受け取る遺族基礎年金は、年間で122万5400円となります。
会社員の妻が受け取る遺族年金の額
会社員の妻が受け取る遺族厚生年金の金額は、亡くなった方の厚生年金の加入期間や収入を基に計算されます。
平均標準報酬額×5.481÷1000×平成15年4月以降の加入期間の月数×4分の3
上記の平均標準報酬額とは、平成15年4月以降の厚生年金加入期間の給与や賞与によって決まるものです。また、平成15年4月以降の加入期間の月数について、300月未満の場合は300月として計算されます。
平均標準報酬額を40万円と仮定すると、会社員の妻が受け取る遺族厚生年金の金額は49万3290円となります。
40万×5.481÷1000×300月×4分の3=49万3290円
さらに会社員の妻は、要件に該当していれば遺族基礎年金も合わせて受け取ることができます。子が2人いる妻の遺族基礎年金は年間122万5400円となるため、受け取る遺族年金の合計額は171万8690円となります。
会社員の妻と自営業者の妻では遺族年金に差がつく
基本的に会社員の妻と自営業の妻では、前者の方が受け取る遺族年金の額は大きくなります。会社員の妻は、遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方を受け取れる可能性があるのに対し、自営業者の妻は遺族基礎年金しか受け取ることができないからです。
また、子どもの数など同じ条件の場合、亡くなった夫が加入していた年金制度によって、妻の遺族年金には差がつきます。万が一のときに備える場合、遺族年金として支給される金額を踏まえて、必要な保障について考えるべきでしょう。
遺族年金の詳細は、最寄りの年金事務所へお問い合わせください。
出典
日本年金機構 遺族年金ガイド 令和4年度版
執筆者:柘植輝
行政書士