更新日: 2022.07.22 国民年金

国民年金保険料を40年間「全額免除」は可能? 年金はいくらもらえるの?

執筆者 : 伊達寿和

国民年金保険料を40年間「全額免除」は可能? 年金はいくらもらえるの?
年金は老後の収入の柱になるものですが、受け取るためには保険料を納める必要があります。
 
自営業者など国民年金の第1号被保険者は、厚生年金に加入している会社員や公務員といった第2号被保険者や、配偶者の扶養に入っている第3号被保険者とは異なり、自分で国民年金保険料を納めます。
 
収入の減少など、経済的な事情で国民年金保険料の納付が難しいときは、保険料の免除を受けられる可能性がありますが、全額が免除となるのはどのようなケースなのでしょうか? また、全額免除になった場合、将来受け取れる年金額はいくらぐらいになるのでしょうか?
 
国民年金保険料の免除制度や、免除を受けた場合の受給額への影響について説明します。
伊達寿和

執筆者:伊達寿和(だて ひさかず)

CFP(R)認定者、1級ファイナンシャルプランニング技能士、相続アドバイザー協議会認定会員

会社員時代に、充実した人生を生きるには個人がお金に関する知識を持つことが重要と思いFP資格を取得。FPとして独立後はライフプランの作成と実行サポートを中心にサービスを提供。

親身なアドバイスと分かりやすい説明を心掛けて、地域に根ざしたFPとして活動中。日本FP協会2017年「くらしとお金のFP相談室」相談員、2018年「FP広報センター」スタッフ。
https://mitaka-fp.jp

国民年金保険料の免除制度とは

収入が少ない、または失業などによって国民年金保険料を納めるのが難しい場合、申請を行って承認されることにより、保険料の納付が免除されます。
 
国民年金保険料の免除には次の4種類があり、本人・配偶者・世帯主、それぞれの前年の所得(1月から6月までに申請する場合は前々年の所得)によって決まります。

・全額免除
・4分の3免除(保険料の4分の1は納める必要がある)
・半額免除(保険料の2分の1は納める必要がある)
・4分の1免除(保険料の4分の3は納める必要がある)

免除が適用されていた期間は、保険料を納めていない「未納」とは次のような点で違いがあります。

・免除された期間も老齢基礎年金の受給資格期間に反映される
・免除された期間について、老齢基礎年金の受給額に一定の割合が反映される
・障害基礎年金や遺族基礎年金の受給資格期間に反映される

経済的な事情で保険料の納付が難しい場合は、未納のままで放置せず、年金事務所に相談をして免除申請をしましょう。
 
また、免除制度のほかに保険料の納付猶予制度もあります。20歳以上50歳未満の人が対象で、本人・配偶者それぞれの前年の所得(1月から6月までに申請する場合は前々年の所得)が一定額以下の場合に、保険料の納付が猶予される制度です。保険料の納付猶予は、免除制度より所得の基準が緩く設定されています。
 
また、猶予された期間は受給資格期間に反映されますが、保険料の追納(10年以内に保険料を納付すること)をしない限り、老齢基礎年金の受給額には反映されない点が免除とは異なります。
 

国民年金保険料が全額免除になるケース

国民年金保険料が全額免除となる所得の基準は、次のとおりです。
 
(扶養親族等の数+1)×35万円+32万円
 
扶養親族がいない場合は67万円以下、扶養親族が1人いる場合は102万円以下となります。この所得基準は、本人・配偶者・世帯主それぞれの所得について審査が行われるので、注意しましょう。
 
また前述したとおり、所得基準は前年の所得(1月から6月の申請は前々年の所得)で判断されますが、失業や新型コロナウイルス感染症の影響で収入が減少した場合などは特例措置が受けられますので、年金事務所に相談してください。
 
なお、次のケースに該当する場合は法定免除制度により、申請をすることで保険料が全額免除となります。

・生活保護の生活扶助を受けている人
・障害基礎年金ならびに被用者年金の障害年金(2級以上)を受けている人
・国立ハンセン病療養所などで療養している人

このように保険料の免除を受けられるケースはさまざまで、全額免除が国民年金の全加入期間となる40年間続くこともあるでしょう。
 

全額免除となった場合に将来受給できる年金額

保険料が全額免除になった場合、老齢基礎年金の受給額にはどのように影響するのでしょうか?
 
老齢基礎年金の受給額の計算では、全額免除された期間は次のように扱われます。

・全額納付した場合の年金額の3分の1(平成21年3月以前)
・全額納付した場合の年金額の2分の1(平成21年4月以降)

例えば、平成21年4月以降、20歳から60歳までの40年間で全額免除を受けた場合、老齢基礎年金の受給額は38万8900円(令和4年度の満額77万7800円の2分の1)となります。月換算すると3万2408円であり、老後の収入としてはかなり少ない金額になってしまいます。
 

まとめ

国民年金保険料の全額免除が認められると、経済的な負担が減る一方、将来の老齢基礎年金の受給額が減少してしまいます。ただし、免除期間について、10年以内であれば保険料を追納することができ、その分だけ年金の受給額を増やせます。
 
年金は老後の主な収入であり、将来の受給額は老後の生活設計に影響を及ぼします。収入の減少などで保険料の全額免除を受けた場合は、収入が回復したタイミングで追納を利用して、将来の年金額を増やすことも検討しましょう。
 

出典

日本年金機構 国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度
日本年金機構 国民年金保険料の法定免除制度
日本年金機構 新型コロナウイルス感染症の影響による減収を事由とする国民年金保険料免除について
 
執筆者:伊達寿和
CFP(R)認定者、1級ファイナンシャルプランニング技能士、相続アドバイザー協議会認定会員

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