更新日: 2022.08.16 その他年金

収入をより多く得て年金を手放すのと、支給停止にならない範囲で働くのではどちらがお得?

執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部

収入をより多く得て年金を手放すのと、支給停止にならない範囲で働くのではどちらがお得?
日本の公的年金制度では、仕事をして収入を得ている現役世代が少なくなると、年金支給額が見直されてしまう可能性があります。そこで、なるべく年金に頼らずに、仕事を続けようと考える人たちも出始めているのです。かといって、収入を上げすぎると年金の支給が停止される可能性もあります。
 
この記事では、年金受給と老後の仕事の関係について考えてみます。
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年金制度の今後の見通し

老後になって受給する年金は、生活資金として重要な財源と考える人が多いでしょう。しかしながら、年金だけで老後の生活を賄っていけると考えている人は少ないようです。厚生労働省が平成30年に発表した統計データによれば、15〜64歳の生産年齢人口割合は平成4年をピークに減少しています。日本の公的年金は「賦課方式」という、生産年齢人口に該当する世代が保険料を納付し、積み立てられたものを年金として分配する仕組みを採用しています。
 
つまり、日本の年金制度は生産年齢世代の労働者に支えられているため、この人口が減ってしまうと年金の原資も減るわけです。結果として、支給開始年齢の引き上げや減額給付の可能性が現実味を帯びてきているのです。このような現状に対して、年金で賄えない部分については、若いうちから貯蓄を殖やしておくという考え方があります。
 
また、年金をもらいながら生涯現役で働いて収入を得るという方法もあります。ところが、ここで注意すべき問題があるのです。加入する年金の種類や収入額によっては、年金が減額されてしまう可能性があるのです。
 

年金の支給停止をどう考えるか


 
リタイアせずに働きながら受給する場合の年金を「在職老齢年金」と呼び、ある条件を満たすと年金額の一部または全部が支給停止になります。年金支給の構成を見ると、国民年金に加入してきた自営業者には「老齢基礎年金」、会社員にはそこに「老齢厚生年金」が上乗せされて支給されます。支給停止対象になるのは、この老齢厚生年金の部分です。老齢基礎年金は対象外です。
 
さらに、支給される老齢厚生年金と賃金の合計が一定額を超えた場合のみ、一部または全部が支給停止となります。以下、簡単な事例で考えてみましょう。
 

・老齢厚生年金受給者で、かつ労働収入を得ている65歳以上のケース

受給している老齢厚生年金額を12で割った「基本月額」と、毎月の賃金と賞与の合計額を12で割った「総報酬月額相当額」の合計が47万円を超える場合に老齢厚生年金の一部が支給停止となります。老齢基礎年金は停止されません。
 
この例にみられるように、現実的にはかなりの収入を得ない限り、年金の支給停止にはなりません。老後はできるだけ年金に頼って、生活費で足りない分だけを、働いて補いたいという人にとっては、支給停止問題はそれほど気にする必要はないといえるでしょう。
 
もちろん、支給停止になったとしても支給される予定であった年金の一部であることがほとんどなので、高収入を得たい人にとっては気にせずに働くのも1つの方法でしょう。
 

老後の仕事選びはライフスタイルにあわせて

リタイアした後に働くと年金が支給停止される可能性があると聞くとネガティブなイメージを持つ人が多いかもしれません。ですが、支給停止条件の算定方法をみれば、無理なく働くレベルの仕事であれば対象外と考えてよいのです。生活費の補助の目的で働くにせよ、高収入を目指すにせよ、ライフスタイルにあわせて元気に気持ちよく老後の生活を楽しみましょう。
 

出典

厚生労働省 在職老齢年金の仕組み
厚生労働省 政策統括官(統計・情報政策担当)平成30年我が国の人口動態(平成28年までの動向)

 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部

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