更新日: 2022.08.23 厚生年金
【厚生年金拡大】飲食店経営者です。法改正で厚生年金の加入が義務付けられたらどうなりますか?
それにより、現在は厚生年金保険に加入していなくても、加入が必要になるケースが出てくることが考えられます。その際には加入の手続きが必要ですが、その前にやっておかなければならないこともあります。
法改正によって厚生年金の加入対象となった場合に必要な手続きや、注意点について解説します。
執筆者:新井智美(あらい ともみ)
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
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法改正の概要
まず、2022年10月より、従業員数が101~500人の規模の企業で働くパートやアルバイトの人が、新たに厚生年金保険、および健康保険の適用対象になります。
そして2024年10月からは、従業員が51人~100人の規模の企業で働くパートやアルバイトの人が、新たに厚生年金保険そして健康保険の適用対象になります。
また、従業員数の数には、フルタイムの従業員の数に加え、週の労働時間がフルタイムの4分の3以上の従業員(パートやアルバイトも含む)の数の合計数で判断します。
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厚生年金の加入が義務化された場合の手続き
厚生年金の加入が義務化された場合の手続きは、厚生年金保険の「被保険者資格取得届」を届け出ることですが、そのためにはさまざまな準備が必要です。
■加入対象者の把握
新たに厚生年金に加入することになる対象者を把握します。新規加入対象者は以下の条件をすべて満たす人です。
・週の所定労働時間が20時間以上30時間未満である(なお、契約上の所定労働時間が20時間未満だったとしても、実際の労働時間が2ヶ月連続で週20時間以上となり、その状態が今後も続くことが見込まれる場合は、3ヶ月目から厚生年金保険加入の対象となります)
・月額賃金が8万8000円以上である(基本給と諸手当の合計で判断します。従って、残業代や臨時賃金は含まれません)
・2ヶ月を超える雇用見込みがあること
・学生ではないこと(休学中の学生や夜間学生は対象です)
■社内周知を行う
新たに加入対象となる人に対し、法律が改正された内容が分かりやすく確実に伝わるよう、社内のイントラネットやメールなどを活用して周知するようにしてください。
■説明会および個人面談を行う
必要に応じて、個人面談や説明会を行います。個人面談の際には、以下の点を伝えるようにしてください。
・厚生年金保険および健康保険の新たな加入対象者になること
・厚生年金保険および健康保険に加入することでどのようなメリットがあるか
・今後の労働時間をどうするか
そして、本人が希望すれば、労働時間の延長や正社員への転換を提案することも可能です。
加入することにおけるメリットについては、ガイドブックなどを利用すると便利です。
具体的には、老後受け取る年金について、老齢基礎年金に上乗せされた老齢厚生年金が受け取れることや、障害の状態になった際や、万が一の際に遺族が受け取れる年金額が、国民年金だけの状態よりも手厚くなることが挙げられます。
また、健康保険の手当も充実します。国民健康保険では受け取れない傷病手当金や、出産手当金の対象になるなどのメリットを、分かりやすく伝えるようにしましょう。
出典:厚生労働省 社会保険適用拡大ガイドブック(※)
被保険者資格所得届の届出
事前準備が済んだら被保険者資格所得届の作成、届け出を行います。
2022年10月より対象となる事業者には、2022年8月までに日本年金機構より新たな対象となる旨を記載した通知書類が届きます。その後、届書を作成し、2022年10月5日までに「被保険者資格所得届」をオンラインで届け出します。
■施行期日よりも前に適用を拡大するとメリットがある
従業員数500人以下の企業において、施行期日よりも前であっても、労使の合意があれば、パートやアルバイトの人を厚生年金保険および健康保険に加入させることができます。そうすることで、支援策の1つである「キャリアアップ助成金」を受け取れます。
さらに、ものづくり補助金などといった生産性向上のための補助金が、優先的に受け取れるといったメリットもあります。
まとめ
改正によって新たに厚生年金保険および健康保険に加入した人の保険料は労使折半となるため、事業主の負担が増えることになります。
新たにどのくらいの人数が加入するのか、そして保険料負担はどのくらい増えるのかを把握し、負担増に耐えられるよう、業務の効率化などといった働き改革に着手するきっかけにもなるでしょう。
もちろん、これまで加入対象ではなかったパートやアルバイトの人にとっても、社会保障が手厚くなることはメリットでしょう。今後新たに人材を採用する際にも強みとなることが期待されます。
保険料の負担が増えるという事実ばかりに目が行きがちですが、それ以上のメリットがあることを理解し、今後の事業拡大に向けて有効に活用していきましょう。
出典
(※)厚生労働省 社会保険適用拡大ガイドブック
執筆者:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員