更新日: 2022.08.30 厚生年金

老齢厚生年金が「支給停止」となるケースってあるの?

執筆者 : 柘植輝

老齢厚生年金が「支給停止」となるケースってあるの?
老齢厚生年金は、受給要件を満たす方ならば、原則として65歳以降に受け取ることができる年金です。
 
ただし、所定の事由に該当すると、本来支給されるはずの老齢厚生年金の全額ないし一部が支給停止となることもあります。
 
今回は、老齢厚生年金が支給停止となるケースについて紹介します。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
◆お問い合わせはこちら
https://www.secure-cloud.jp/sf/1611279407LKVRaLQD/

2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

老齢厚生年金が支給停止となる仕組み

老齢厚生年金を受け取っていたとしても、70歳未満の働いている方は、勤務時間など加入要件を満たすならば厚生年金保険に加入しなければなりません。
 
老齢厚生年金には在職老齢年金という仕組みがあります。在職老齢年金とは、老齢厚生年金を受給している方が、厚生年金保険に加入している場合、老齢厚生年金の基本月額と総報酬月額相当額に応じて年金額の全部または一部が支給停止となる仕組みです。
 
在職老齢年金でいう基本月額とは、加給年金額を除いた老齢厚生年金のうち、報酬比例部分の月額をいいます。総報酬月額相当額とは、その月の標準報酬月額にその月以前1年間の標準賞与額を12で割った額を足したものになります。
 
簡単に説明すると、老齢厚生年金を受け取っている方が、就労し厚生年金にも加入している場合、年金額と給料を合わせた収入が一定額を上回ると、収入に応じて老齢厚生年金のうち全部または一部が支給停止となるという仕組みになります。
 

具体的にはどんなときに老齢厚生年金が支給停止になる?

給料と年金額の合計額が47万円を超えた時に、老齢厚生年金の全額ないし一部の支給が停止されます。支給停止となる金額は次の計算式で算出できます。

(総報酬月額相当額+基本月額-47万円) ×1/2×12

例えば、老齢厚生年金額が120万円(基本月額10万円)、総報酬月額相当額が41万円(標準報酬月額32万円、標準賞与額の月額換算9万円)の方の場合、下記のとおりになります。
 
支給停止額=(41万円+10万円-47万円)×1/2×12=24万円(月額2万円)
 
1ヶ月あたりで支給予定の老齢厚生年金10万円のうち、支給停止額は2万円ですので、実際に支給される額は8万円となります。
 

給料と年金額の合計が47万円を超えていなくとも、支給停止されることも

給料と年金額の合計が47万円を超えていなくても、老齢厚生年金がカットされることがあります。それは、65歳未満の方が、高年齢雇用継続給付を受け取る場合です。該当する場合、最大で標準報酬月額の6%が支給停止されます。
 
高年齢雇用継続給付とは、雇用保険の加入期間が5年以上ある60歳以上65歳未満の加入者に対して、賃金額が60歳到達時の75%未満となった方を対象に、最高で賃金額の15%に相当する額が雇用保険等から支払われるものです。
 
例えば、老齢厚生年金額120万円(基本月額10万円)の方で、60歳到達時点で月額35万円だった給与が20万円に下がり、高年齢雇用継続給付を3万円受け取っている場合、給料と年金の合計は47万円を超えていないため在職による支給停止の対象とはなりません。
 
しかし、高年齢雇用継続給付を受けていることから、標準報酬月額(20万円)×6%=1万2000円が老齢厚生年金から支給停止されることになります。そのため、1ヶ月あたりで支給予定の老齢厚生年金10万円のうち、最終的に支給される額は8万8000円となります。
 

老齢厚生年金は収入次第で支給停止となることもある


 
老齢厚生年金は基本的に減額されることなく、それまでの加入実績に応じた金額を受け取れるものになりますが、年金を受け取りながら働く場合は要注意です。
 
老齢厚生年金の金額と給与の合計が47万円を超えたり、47万円を超えていなくとも高年齢雇用継続給付を受けていたりすると、老齢厚生年金の全額ないし一部が支給停止されてしまい、年金を想定どおりには受け取れないことがあります。
 
定年後も働くことを考えている方は、在職老齢年金や高年齢雇用継続給付によって、老齢厚生年金の金額が減少する可能性があることを知っておくべきでしょう。
 

出典

日本年金機構 在職老齢年金の支給停止の仕組み
 
執筆者:柘植輝
行政書士

ライターさん募集