更新日: 2022.09.27 国民年金
専業主婦にオススメの65歳から年金の受け取り方 ~繰下げで増額したら税金がかかる?
執筆者:蟹山淳子(かにやま・じゅんこ)
CFP(R)認定者
宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー
蟹山FPオフィス代表
大学卒業後、銀行勤務を経て専業主婦となり、二世帯住宅で夫の両親と同居、2人の子どもを育てる。1997年夫と死別、シングルマザーとなる。以後、自身の資産管理、義父の認知症介護、相続など、自分でプランを立てながら対応。2004年CFP取得。2011年慶應義塾大学経済学部(通信過程)卒業。2015年、日本FP協会「くらしとお金のFP相談室」相談員。2016年日本FP協会、広報センタースタッフ。子どもの受験は幼稚園から大学まですべて経験。3回の介護と3回の相続を経験。その他、宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー等の資格も保有。
そろそろ老齢年金を受け取り始める時期を迎える60代女性の中には、若い頃には会社勤めで働いていたけれど、結婚して子どもが生まれてからはずっと専業主婦という人も多いのではないでしょうか。そのようなケースでは年金額が、老齢基礎年金が満額で約78万円/年と、老齢厚生年金が数万円/年となることが多いでしょう。
受給時期の繰下げによる年金増額を検討していて、疑問を持った60代の女性から相談を受けました。
A子さんが65歳から受け取る年金は、年額で基礎年金が約76万円と厚生年金が約5万円です。すぐに年金を受け取らなくても生活には困らないので、繰り下げて増やそうかと考えています。5年間繰り下げたとすると年額が約115万円となります。しかし、103万円を超えるので税金が引かれることになり、損をしてしまうのではないかと心配しています。
年金は年額でいくらから課税対象となるのか?
A子さんが心配していた「103万円」は、パートやアルバイトなどで給与を受け取った場合に、所得税がかかるかどうかの目安となる金額です。
基礎控除額: 48万円
給与所得控除額: 55万円
合計: 103万円
この2つ以外に対象となる控除がない場合、給与が年間103万円を超えると所得税が課税されます。しかし、公的年金は給与ではないので給与所得控除の対象にはなりません。その代わり、公的年金等控除(65歳以上は110万円)の対象となります。
基礎控除額: 48万円
公的年金等控除額:110万円
合計: 158万円
A子さんには年金以外に収入がないので、158万円を超えていなければ、所得税が課税されることはありません。仮にA子さんが10年間繰り下げしたとしても、受け取る年金は約149万円なので、課税される心配は必要ありません。
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繰下げを検討する専業主婦が知っておきたいこと
人生100年時代と言われるように、男性も女性も平均寿命が延びています。夫婦ともに長生きできるなら、年金額は少しでも増やしたほうが安心なのですが、どちらかが先に亡くなったときの心配もしておかねばなりません。
老齢厚生年金を受け取っている夫が亡くなったら、遺(のこ)された妻は遺族厚生年金を受け取ることができます。この遺族厚生年金の金額がどのように計算されるかを確認しておきましょう。
遺族厚生年金の額は、夫の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3です。ただし、妻が65歳以上で老齢厚生年金を受給できる場合、まず遺族厚生年金から妻の老齢厚生年金に相当する額が引かれます。そして、妻は自分の老齢基礎年金+自分の老齢厚生年金+遺族厚生年金を受け取ることができます。
したがって、老齢厚生年金の受給額が少ない専業主婦が、繰下げで老齢厚生年金の受給額を増やしても、夫が亡くなった後の年金額には反映されません。一方、基礎年金の部分は、遺族年金を受け取ることになっても自分の老齢基礎年金を受け取るので、少しでも増やしておけば、増額した年金を一生受け取ることができます。どこまで繰下げるかは、家計の状況や自身の健康状況などに合わせて考えましょう。
夫婦の老齢年金額の差が大きい場合、妻が基礎年金のみ繰下げるのがオススメです。厚生年金は年に数万円でも65歳から受け取れば、他に収入がない専業主婦だからこそ、受け取る楽しみを得られるのではないでしょうか。
年金繰下げの手続き方法
年金を繰下げ受給したいときは、年金の請求手続きをせずにおけばよいのです。すでに特別支給の老齢厚生年金を受給している場合、65歳の誕生日前に日本年金機構からはがき形式の「年金請求書」が届きます。老齢基礎年金と老齢厚生年金の両方を繰下げたいときは、このハガキを返送せずにおきます。老齢基礎年金のみを繰り下げたいときは、「老齢基礎年金のみ繰下げ希望」の欄に〇を付けて送付します。
そして、そろそろ受け取り始めようと思ったときに、年金事務所に問い合わせて請求手続きをしましょう。年金は受け取る権利があっても、自分から請求しないと受け取れないので、忘れずに請求手続きをしてください。
執筆者:蟹山淳子
CFP(R)認定者