更新日: 2022.09.30 国民年金
【ねんきん定期便】学生時代に猶予されていた国民年金保険料の追納をしなかった場合、どのくらい年金の「見込額」 は減りますか?
もし、保険料を追納しなかった場合、将来の老齢年金はどれくらい減るのでしょうか。
「ねんきん定期便」に記載される老齢年金の「見込額」と、国民年金保険料の追納について解説していきます。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
目次
50歳以上のねんきん定期便に記載される「見込額」とは?
「ねんきん定期便」とは、公的年金加入者の毎年の誕生月に日本年金機構から送られてくるもので、これまでの加入期間や保険料の納付状況といった年金記録のほか、加入実績に応じた年金額などが記載されています。
毎年届くねんきん定期便は、はがきタイプで簡素な内容となっていますが、35歳、45歳、59歳は節目の年として封書で届き、年金加入履歴などが詳細に記載されています。
また、50歳以上の方のねんきん定期便には、現在の加入条件が60歳まで継続した場合の老齢年金の種類と「見込額」について記載があり、原則の65歳から受け取れるであろう年金額を確認することができます。
出典:日本年金機構 「ねんきん定期便」の様式(サンプル)と見方ガイド(令和4年度送付分) 節目年齢(35歳、45歳、59歳)以外のハガキ 50歳以上の方
出典:日本年金機構 「ねんきん定期便」の様式(サンプル)と見方ガイド(令和4年度送付分) 節目年齢(35歳、45歳、59歳)の封書 59歳の方
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学生時代に猶予されていた国民年金保険料を追納する場合
日本に居住する20歳以上60歳未満のすべての方は国民年金に加入し、保険料を納付する義務がありますが、所得基準など一定の条件を満たす学生の方は、申請により学生納付特例制度を利用できます。
学生時代に学生納付特例を受けていた場合、その期間は国民年金保険料の納付が猶予されます。猶予を受けた期間は老齢基礎年金の受給資格期間には算入されますが、受給額には反映されないため、その分の保険料について追納(猶予された保険料をあとから支払うこと)をしないと、将来受け取る老齢基礎年金額が減少することになります。
保険料の追納ができるのは、納付を猶予されていた期間から10年以内とされているため、満額の国民年金を受け取りたいという場合は早めに追納することが必要です。また、猶予を受けた期間の翌年度から3年度目以降の保険料を追納する際は、一定の加算額を上乗せして支払わなければなりません。
追納を考えている場合、最寄りの年金事務所で申し込みを行い、受け取った納付書で保険料を支払うことになります。
保険料を追納しないままでは、どれくらい年金額が減ってしまうのか
学生時代に納付を猶予されていた期間の国民年金保険料を追納しなかった場合、50歳以上のねんきん定期便に記載される老齢年金の見込額はどれくらい減ってしまうのか計算してみます。
令和4年度の老齢基礎年金の受給額は、下記の計算式で算出することができます。
出典:日本年金機構 老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額
一般的な大学生の場合、20歳から2年程度の期間で学生納付特例を利用することが多いため、ここでは2年(24月)分の国民年金保険料の納付猶予を受け、その後は60歳までの38年間(456月)で保険料を全額納付したと仮定し、65歳から受け取れる老齢基礎年金額を計算すると、年額で73万8910円となります。
老齢基礎年金は令和4年度の満額で77万7800円のため、このケースでは50歳以上のねんきん定期便に記載される老齢年金の見込額は3万8890円減ってしまうことになります。
納付の猶予を受けた期間から10年を経過している場合は?
ねんきん定期便に老齢年金の見込額が記載される50歳以上になると、学生時代に納付猶予を受けた分の保険料を支払っていない場合は、すでに猶予期間から10年を超えているため追納できないという方がほとんどでしょう。
そういった方は、60歳以降も就労して厚生年金に加入する(厚生年金の加入期間中は国民年金にも加入しており、厚生年金保険料には国民年金保険料が含まれます)、または60歳以降で国民年金に任意加入して保険料を支払うという方法で、実質的には追納した場合と同様に老齢基礎年金額を満額に近づけることができます。
学生時代に2年間猶予された国民年金保険料を追納しない場合、年間4万円近く年金額が減少
学生時代の2年間、納付猶予を受けていた国民年金保険料を追納していない場合、令和4年度の老齢基礎年金額を基にすると、50歳以上のねんきん定期便に記載される老齢年金の見込額が4万円ほど少ないことが想定されます。
これは将来の老齢年金が1年間で4万円減少する可能性があるということであり、10年、15年と年金を受け取り続けると、この差はどんどん大きくなっていきます。
学生納付特例で保険料を猶予されていた期間がある方は、追納や任意加入などで保険料を支払い、満額の老齢基礎年金を受け取れるように対応してみてください。
出典
日本年金機構 国民年金保険料の学生納付特例制度
日本年金機構 老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額
日本年金機構 「ねんきん定期便」の様式(サンプル)と見方ガイド(令和4年度送付分)
執筆者:柘植輝
行政書士