更新日: 2022.10.25 国民年金

離婚することに! 私の年金はどうなるの?

離婚することに! 私の年金はどうなるの?
日本の年金制度は、国民年金がすべての人にとって基礎となる年金となっていますが、国民年金の上に厚生年金という2階建てで構成されており、人によってはさらに基金や確定拠出年金など上乗せされます。この公的年金は、基礎になる部分といいながら、これまでにさまざまな経過措置があることもあり、とても複雑な制度となっています。
 
女性の場合、結婚して夫の扶養家族になったり、離婚したり、再就職したりと、あらゆる環境要因を加味されます。今回は、そんな環境要因の1つ「離婚した時」の年金がどうなるのかを取り上げます。
當舎緑

執筆者:當舎緑(とうしゃ みどり)

社会保険労務士。行政書士。CFP(R)。

阪神淡路大震災の経験から、法律やお金の大切さを実感し、開業後は、顧問先の会社の労働保険関係や社会保険関係の手続き、相談にのる傍ら、一般消費者向けのセミナーや執筆活動も精力的に行っている。著書は、「3級FP過去問題集」(金融ブックス)。「子どもにかけるお金の本」(主婦の友社)「もらい忘れ年金の受け取り方」(近代セールス社)など。女2人男1人の3児の母でもある。
 

離婚の年金分割は「夫の年金が半分受け取れる」制度ではない!

まず、誤解されやすい点について訂正しておきます。「年金分割」は、離婚した時、夫の年金額が半分受け取れることを意味しているわけではありません。
 
そもそも、離婚の年金分割というのは、厚生年金を夫婦間(内縁含む)で分割する制度ですから、夫婦とも自営業で国民年金加入中などの場合には分割できません。また、夫婦とも厚生年金加入中の場合には、夫の厚生年金の半分が妻に分割されるということでもありません。
 
離婚の年金分割には「合意分割」と「3号分割」の2種類があり、その2つの間でも違いはあります。離婚等をしたときから2年以内に請求する、事前に情報提供の請求をするなど、同じ点もありますが、実はとても勘違いが多いのが離婚の年金分割です。
 
まず、「合意分割」については、当事者の一方もしくは双方の請求により、婚姻期間中の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)を当事者間で分割することができる制度と覚えてください。決して、按分割合が半分になるとは言っていません。
 
次に「3号分割」については、国民年金の第3号被保険者であった方からの請求により、相手方の年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)を2分の1ずつ当事者間で分割する制度です。平成20年5月以降の離婚についての婚姻期間ですので、それ以前に婚姻期間がある場合には、合意分割と同じ扱いになり、必ずしも2分の1ずつの按分割合になるのではないのです。
 

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年金分割は2種類! 「合意分割」と「3号分割」

「合意分割」による年金分割を請求するためには、話し合いにより「年金分割の請求をすること」と「分割する場合の按分割合」について同意しなければなりません。
 
この割合については、夫婦2人の総額の2分の1ずつでも構いませんが、それより低い合意をすることも可能です。この点が、自動的に相手方の納付記録を2分の1ずつ分割できる「3号分割」との違いです。
 
この按分割合を決めるために、請求の前に、当事者双方または一方からの請求により、合意分割を行うために必要な情報提供の請求ができます。この請求は合意分割の請求期限内、すなわち離婚などをした時から2年以内が請求期限となります。
 
この情報提供の通知書を請求する際、50歳以上もしくは障害厚生年金を受けている方については年金の見込み額が試算できます。これは離婚をする前など、はっきりと離婚が決定していない時でも一方が請求できます。
 
ただ、情報提供通知書の請求だけでは年金は分割されません。話し合いが難しいということであれば、一方が家庭裁判所に、(1)審判手続きや(2)調停手続き、(3)離婚訴訟における付帯処分の手続きなどの申し立てをし、裁判所の審判や調停により按分割合を求めることができます。
 
分割の対象となるのは、戸籍上の婚姻期間だけでなく事実婚関係でも対象となるのと、平成19年より以前の期間も対象となるのがポイントです。離婚をする際、どうしても公正証書や家庭裁判所などを利用するのはハードルが高いと思いがちです。確かに請求書は、年金事務所に備え付けの用紙でも可能ですが、養育費など他に決めたい内容がある場合には、公正証書などを利用するほうが確実です。
 

按分割合が決まった後の年金はどうなるの?

納付記録を按分する、というのは難しい言葉に感じるかもしれません。イメージとしては図表1のようになります。
 

 
ここで見ていただきたいのは、夫婦どちらも厚生年金の記録がある場合には、上限は夫婦全体の50%が上限だということです。今は夫婦共働きのご家庭も多いですし、なかには妻の給料のほうが多いケースもあります。そんな場合には、年金分割を請求しても、「分割してもらう」のでなく「分割する」ほうになってしまうこともありますので注意しましょう。
 
そして、万が一、年金分割の請求手続きをしても、その後、保険料の未納が続いたなど、そもそも自分の年金の受給資格を得なければ年金受給には結びつきません。年金分割がされても、年金保険料を未納にすることなく、さらに公的年金を充実することが老後の安心につながるでしょう。
 
執筆者:當舎緑
社会保険労務士。行政書士。CFP(R)。

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