更新日: 2022.10.26 国民年金

農業は自営業? 医療保険や年金、労働保険はどうなる?

農業は自営業? 医療保険や年金、労働保険はどうなる?
コロナ禍で密を避けて地方へ移住し、のどかな田舎で農業を行ういわゆる脱サラの方もいらっしゃるでしょう。仮に会社員であれば、病気やけが、死亡、失業などをした場合には、一定の給付が受けられる社会保険制度に強制加入されますが、農業従事者の場合はどうなるのでしょうか?
 
今回は、農業従事者の社会保険(医療保険と公的年金)と労働保険について、どのような仕組みになっているのかを解説してみます。
堀江佳久

執筆者:堀江佳久(ほりえ よしひさ)

ファイナンシャル・プランナー

中小企業診断士
早稲田大学理工学部卒業。副業OKの会社に勤務する現役の理科系サラリーマン部長。趣味が貯金であり、株・FX・仮想通貨を運用し、毎年利益を上げている。サラリーマンの立場でお金に関することをアドバイスすることをライフワークにしている。

社会保険の適用について

農業従事者は、大きく分けて個人経営と法人経営に分かれます。病気やけがなどを対象とした医療保険と公的年金について、個人経営と法人経営の違いを確認します。
 

(1)個人経営の場合

個人経営の場合には、原則として、医療保険については国民健康保険が適用され、公的年金は国民年金が適用されます。その場合には、従業員がいたとしても保険料の事業主負担はなく、従業員が全額個人負担です。
 
ただし、個人経営であっても、従業員が常時5人以上いる場合には、医療保険は健康保険、公的年金は厚生年金が強制適用となります。同様に、事業所で使用される者の過半数以上の合意と厚生労働大臣の許可があれば、健康保険と厚生年金保険を適用できます。
 

(2)法人経営の場合

株式会社や合同会社などの法人として農業を行う法人経営の場合は、医療保険については健康保険が、公的年金については厚生年金が強制適用となります。
 

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労働保険の適用について

労働保険には、労働者の業務上もしくは通勤による疾病を対象とした労災保険(労働者災害補償保険)と、労働者が失業した場合を対象とする雇用保険の2つがあります。この労働保険について、個人経営と法人経営の違いについて確認してみます。
 

(1)個人経営の場合

労働者が常時5人未満の個人経営の場合には、「暫定任意適用事業」といわれ、原則として任意加入です。ただし、危険もしくは有害作業に該当する事業と事業主が労災保険特別加入制度に加入している場合には、強制加入となります。
 

(2)法人経営の場合

法人経営の場合には、労災保険と雇用保険の両制度の加入は強制適用となります。
 

農業者年金について

公的年金については、原則として、個人経営は国民年金、法人経営は厚生年金が強制適用されますが、JA(農業協同組合)が取扱窓口となっている、農業者を対象とした「農業者年金制度」があります。
 
この年金は、「確定拠出型」年金で、年金額が保険料と運用益で決まり、65歳から一生受けとることができる終身年金です。
 

(1) 加入資格

1. 年齢要件:60歳未満
2. 国民年金の第1号被保険者であること(保険料納付免除者でないこと)
3. 年間60日以上農業に従事する者

 
なお、農業経営者だけでなく、配偶者、後継者などの家族従事者および自分名義の農地を持たない農業者も加入できます。
 

(2) 農業者年金の特徴

1. 加入と脱退
農業者年金制度は任意加入制度ですので、脱退は自由です。ただし、脱退された場合は、加入期間に関係なく、それまでに払い込んだ保険料と運用益は、年金として支給され、脱退一時金としては支給されません。
 
2. 保険料
月額2万円から6万7000円までの間で、千円単位で自由に選択できます。また、保険料は、いつでも見直すことができます。
 

(3)農業者年金のメリット

1. 国からの助成がある
2. 保険料は全額社会保険料控除対象となる(ただし、80万4000円が限度)
3. 付加年金が支給される(65歳から老齢基礎年金とともに付加年金(年額「200円×保険料納付済期間の月数」分)が支給されます。)

 

まとめ

今回は、農業従事者の社会保険と労働保険、農業者年金の仕組みについて見てきました。農業従事者の方は老後などに備え、自分の加入状況について一度確認しておくことをおすすめします。
 

出典

農林水産省 【労務管理】農業者には他産業にはない様々なルールがある

 
執筆者:堀江佳久
ファイナンシャル・プランナー

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