更新日: 2022.10.28 厚生年金
遺族厚生年金の要件は男女で異なる? 女性より厳しい男性の受給要件とは?
このうち会社員であった方の遺族が受け取れる「遺族厚生年金」の要件は、子どもの有無と男女別で異なり、特に男性に厳しい要件は、多様化する生活スタイルのなかで時代にそぐわないという指摘も多いのが現状です。
国として改善にむけた取り組みが始まりつつありますが、まずは、遺族厚生年金の受給要件の現状について解説します。
執筆者:大竹麻佐子(おおたけまさこ)
CFP🄬認定者・相続診断士
ゆめプランニング笑顔相続・FP事務所 代表
証券会社、銀行、保険会社など金融機関での業務を経て現在に至る。家計管理に役立つのでは、との思いからAFP取得(2000年)、日本FP協会東京支部主催地域イベントへの参加をきっかけにFP活動開始(2011年)、日本FP協会 「くらしとお金のFP相談室」相談員(2016年)。
「目の前にいるその人が、より豊かに、よりよくなるために、今できること」を考え、サポートし続ける。
従業員向け「50代からのライフデザイン」セミナーや個人相談、生活するの観点から学ぶ「お金の基礎知識」講座など開催。
2人の男子(高3と小6)の母。品川区在住
ゆめプランニング笑顔相続・FP事務所 代表 https://fp-yumeplan.com/
遺族年金とは
公的年金と言うと、「老齢給付」のイメージが強いかもしれませんが、重度の障害を負い働けなくなってしまった場合の「障害給付」や、家計を支えていた方が亡くなった場合に遺族が受け取る「遺族給付」など、それぞれ困難を抱える人を社会全体でサポートするのが、公的年金制度の目的であり役割です。
公的年金制度は、会社員などの場合、20歳以上60歳未満のすべての人が加入する「国民年金」とともに、「厚生年金」に加入することで、2階建て構造で成り立っています。
元気で老齢給付の年金を受け取ることができれば何よりなのですが、障害や死亡といったリスクは誰にでも起こり得ます。国民年金または厚生年金保険の被保険者または被保険者であった方が亡くなったときに、その方によって生計を維持されていた遺族が、一定の要件を満たすことにより生活保障として受けることのできる年金が「遺族給付」です。
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遺族給付を受給できるのは、どんな人?
遺族年金には、「遺族基礎年金(国民年金の被保険者等が亡くなった場合)」と「遺族厚生年金(厚生年金の被保険者等が亡くなった場合)」があります。
亡くなった方の加入期間や加入状況、遺族年金を受け取る方の年齢・優先順位などの要件をすべて満たしている場合に受け取ることができます(※1、2)。
■遺族厚生年金の受給要件【1】 亡くなった方の要件(以下のいずれかの要件を満たしている場合)
(1)厚生年金保険の被保険者または、被保険者期間に初診日がある病気やけがが原因で初診日から5年以内に死亡したとき*
(2)1級・2級の障害厚生(共済)年金を受けとっている方が死亡したとき
(3)老齢厚生年金の受給権者(受給資格を満たした方ふくむ)であった方が死亡したとき
*(1)について、死亡日の前日における保険料納付済期間や未納がないことなどの要件もあります。
■遺族厚生年金の受給要件【2】 受給対象となる遺族の要件(以下のいずれも満たしている場合)
(1)生活維持要件
「同居していること」「前年の収入が850万円未満であること」を満たす必要があります。別居していても、生活費を受け取っている、健康保険の扶養親族であるなどの証明があれば認められます。
(2)対象遺族の範囲(下図参照)
生活維持要件については、いずれの年金も同様ですが、遺族厚生年金を受け取ることのできる遺族については、遺族基礎年金よりも範囲が広がり、優先順位の高い人が受給することになります。先順位の人が受給者となった場合、後順位の人には支給されません。
なお、遺族厚生年金の年金額は、死亡した方の老齢厚生年金の、報酬比例部分の4分の3の額となります。報酬比例部分の計算において、厚生年金の被保険者期間が300月(25年)未満の場合は、300月とみなして計算します。
女性よりも厳しい男性の遺族厚生年金の受給要件
遺族厚生年金を受け取る人が「配偶者」である場合、男性と女性では受給要件が異なります。
夫を亡くした妻が30歳以上であれば、生涯にわたって遺族厚生年金が支給されますが、男性には、「55歳以上」という年齢制限が存在します。妻を亡くした夫は、夫が55歳未満で死別した場合、遺族厚生年金が支給されません。55歳以上で死別した場合には受給権がありますが、受け取れるのは60歳以降となります。
なお、子のない30歳未満の妻は、5年間の有期給付となります。
女性に手厚く支給する一方、男性への条件が厳しい現状です。生き方や働き方が多様化するなかで、妻の収入が家計を支えるケースも増えてきました。妻の死亡により、夫の生活に影響が出てしまう可能性もあります。
1960年代に作られた制度であるため、現在の社会環境を考えると、時代にそぐわない制度であることは否めません。男女で差を設けるべきではないとの指摘も多く、裁判で争われた事例もあります。
まとめ~今後の制度改正への期待と自助努力の必要性~
厚生労働省は、会社員など厚生年金の加入者の遺族が受け取る「遺族厚生年金」の受給要件について、男女差を解消する方向で、社会保障審議会での見直しに向けた議論を始めることを検討しています。
実現にはしばらく時間がかかりそうですが、よい方向に変わることを願いつつ、いざというときに困らない自助努力でのリスク対策を考えておきたいものです。
出典
(※1)日本年金機構 遺族年金ガイド(令和4年度版)
(※2)日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)
執筆者:大竹麻佐子
CFP🄬認定者・相続診断士