更新日: 2022.10.29 その他年金

年金が「払い損」にならないか心配。世代間で給付と負担の格差は生じてしまうの?

年金が「払い損」にならないか心配。世代間で給付と負担の格差は生じてしまうの?
少子高齢化に伴い、国民年金の保険料納付期間について政府が5年の延長を議論する方針を決定したことなどから、年金が払い損にならないか心配されている方もいるでしょう。そこで公的年金の保険料の払い損や、世代間の年金格差について考えてみます。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

国の見解では年金保険料の払い損は基本的にない


2022年7月17日時点での首相官邸のホームページでは、年金制度において保険料の払い損はないという国の見解が記載されていました。
 
その内容では、2005年生まれの方を例にした場合、老齢厚生年金では支払った保険料に対して2.3倍、国民年金の場合は1.7倍の給付が受けられる計算になっています。
 
図表
 

 
出典:国立国会図書館 インターネット資料収集保存事業 「首相官邸 疑問3 「払い損」になるのではないですか?」
 
支払った保険料以上の年金給付が受けられる理由について、国民年金は国庫負担分、厚生年金は事業主負担があるためとしており、国庫負担や積立金の運用収入などによって将来の保険料負担の上昇を抑制するという説明もあります。
 
実際には、年金の受給開始から早期に亡くなって受け取る年金総額が少なくなることや、長生きをして多く受けられるケースもあると思いますが、支払った保険料以上に年金を受け取れないことを「損」とするのであれば、現状の年金制度で基本的に損はないという見解になるようです。
 
なお、この見解はあくまでも政府の試算に基づいたものとなっています。試算の方法や前提条件、また年金制度の内容が変われば、結論が変わる可能性もあることにご留意ください。
 

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年金の世代間格差はなぜ生まれるのか

国は年金の払い損については基本的にないと説明していますが、世代間格差について否定はしていません。
 
上記の「世代ごとの給付と負担」の計算を生まれた年で見てくと、厚生年金の場合、1935年生まれの方は支払った保険料の6.4倍の年金給付となっているものの、2005年生まれの方は2.3倍と、保険料の負担と給付の比率では2倍以上の差が付いています。その理由は、年金制度と人口の年齢分布にあります。
 
日本の年金制度では、現役世代が負担する保険料が高齢者に支払われる年金の原資となっています。現役世代が高齢者の数よりも多ければ潤沢に原資をプールすることができますが、現役世代が高齢者の数に比べて少なければ年金原資の確保は難しくなっていきます。
 
日本は少子高齢化が進んでおり、総人口に占める65歳以上の高齢者の割合が増加しています。年金の原資が少なくなってしまい、国庫負担などにも限界が生じると世代間格差として表れることになるのです。
 
今後、国民年金の保険料納付期間の延長や老齢年金の受給開始年齢の後ろ倒しが実施されたり、受給額の減少、保険料の引き上げが起こらない可能性がないとは言い切れません。これらを踏まえると、これからも年金の世代間格差が広がっていく可能性は否定できないでしょう。
 

保障範囲の広さが公的年金制度の特徴

今後の可能性も含め、保険料が払い損になるケースがないとは言い切れないことや、世代間で給付に格差が生じている面はあるものの、公的年金制度による給付は老齢年金だけではありません。
 
病気やけがなどで対象となる障害が生じた場合、障害年金の給付を受けられます。また、万が一、家族の生活を支えている方が亡くなってしまった場合は、遺族年金によって残された家族は生計を維持していくことができます。こういった保障範囲の広さは、公的年金制度ならではの特徴といえます。
 

まとめ

国の見解によれば、公的年金について保険料の払い損にはならないとはいえ、老齢年金の給付には世代間による格差が生じているのは事実です。少子高齢化がさらに進むことによって今後、払い損にならない可能性もゼロではありません。
 
保障範囲の広さから見ると公的年金は優秀な保険商品といえますが、年金制度が今後どうなっていくのか、現役世代の方は自身の老後のためにもしっかりと注視する必要があるでしょう。
 

出典

国立国会図書館 インターネット資料収集保存事業 首相官邸 疑問3 「払い損」になるのではないですか?

 
執筆者:柘植輝
行政書士

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