更新日: 2022.11.10 その他年金

【知らないと損!】離婚時、「年金分割制度」があることを知ってる?

執筆者 : 勝川みゆき

【知らないと損!】離婚時、「年金分割制度」があることを知ってる?
婚姻期間中に築いた財産は、夫婦2人の共有財産です。年金も共有財産に含まれ、離婚するときには、「年金分割制度」という納めた厚生年金を分割できる制度が利用できます。
 
この制度は、「申請」が必要であるため、知らないと申請ができず損をする可能性があります。ここでは、年金制度の仕組みと「年金分割制度」とはどのような制度なのかを解説します。
勝川みゆき

執筆者:勝川みゆき(かつかわ みゆき)

ファイナンシャルプランナー2級・AFP

年金制度の仕組み

日本の年金制度は、公的年金と呼ばれる国民年金と厚生年金、さらに私的年金からなる、いわゆる3階建ての構造となっています。20歳から60歳までのすべての方が加入する国民年金は1階部分に相当します。会社員や公務員などの方は国民年金に加え2階部分に当たる厚生年金に加入します。
 
公的年金の第1号被保険者は、自営業者や学生、無職などの方とその配偶者です。会社員や公務員など、厚生年金の加入者は第2号被保険者となります。第2号被保険者に扶養される専業主婦(主夫)などの配偶者(原則、年収130万円未満、厚生年金保険に加入していない方)は、第3号被保険者となります。
 
また、公的年金とは別に保険料を納め、公的年金に上乗せして将来受け取る年金を確保する企業年金や個人年金などの私的年金は、3階部分に当たります。
 

「年金分割制度」とは?


 
離婚した場合に、婚姻期間中に納めた厚生年金を分割し、それぞれ自分の年金分とすることができる制度です。
 
「年金分割制度」は、年金制度の2階部分に当たる厚生年金のみを分割する制度です。つまり、夫婦のどちらかまたは両方が会社員や公務員である、または過去に会社員や公務員だった期間がある場合に、婚姻期間中、納めた厚生年金について利用できる制度なのです。離婚時の厚生年金の分割には、「合意分割」と「3号分割」の2種類があります。
 

合意分割

合意分割とは、婚姻期間中の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)を当事者間で分割することができる制度です。
 
合意分割をするためには、当事者間で按分割合を決める必要があります。按分割合とは、分割の対象となる期間における2人の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)合計額のうち、分割した後、増額される側の持ち分割合のことです。これは、厚生年金保険法で、2分の1以下と決まっています。
 
もしも、当事者間で合意がまとまらない場合には、裁判所が按分割合を決めることも可能です。
 
分割をした方は、自身の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)から、相手に分割した額を除いた残りの標準報酬月額・標準賞与額に基づき、年金額が計算されます。分割を受けた方は、自身の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)と、相手から分割された標準報酬に基づき年金額が計算されます。
 
つまり、収入の多い方の年金額は減額し、収入の少ない方の年金額は増額するということになります。
 

3号分割

3号分割とは、婚姻期間中に国民年金の第3号被保険者であった期間がある方が、その期間における相手の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)の2分の1を分割して受けることができる制度です。この制度は、2008年4月1日以降の厚生年金記録に限られます。
 
3号分割は、当事者間の合意は必要ありません。第3号被保険者であった方の請求で、分割することが可能です。
 
合意分割の請求がされた場合、3号分割の対象となる期間が含まれるときには、2つの分割の請求があったとみなされます。また、どちらの制度も請求期限は、原則、離婚等をした日の翌日から起算して2年以内となっています。
 

離婚時は老後の年金についても考えよう

厚生労働省の厚生年金保険・国民年金事業の概況(2020年度)によると、2020年の離婚等に伴う保険料納付記録分割件数は、2万9781件でした。厚生労働省による人口動態統計速報では、2020年度の離婚件数は19万2062組となっているので、離婚した人のおよそ15.5%の方が、「年金分割制度」を申請していることになります。
 
離婚件数には、「年金分割申請制度」の対象とならない方も含まれていると考えられますが、中には制度を知らないために申請していない方もいるのではないでしょうか。
 
また、年金を分割したことにより、納付記録を分割した方の年金額は平均2万9098円マイナスとなり、納付記録の分割を受けた方の年金額は平均3万774円プラスとなっています。「年金分割制度」は、婚姻期間中の収入が少ない方にメリットとなる制度なのです。
 
離婚する際には、老後の年金のことも忘れずに考えましょう。特に、婚姻期間中に育児や家事など家庭の事情で仕事をセーブしていた方、自分自身の収入が少なかった方は、将来受け取れる年金額が少ない方もたくさんいます。
 
また、年金収入のみでは、老後に安心した生活を送るには十分でない場合も少なくありません。離婚の際には、老後の経済設計を含めたライフプランを、ぜひ考えてみてください。
 

出典

厚生労働省 年金制度の仕組み 22年度版年金制度のポイント

厚生労働省 厚生年金保険・国民年金事業の概況 令和2年度

日本年金機構 離婚時の年金分割

 
執筆者:勝川みゆき
ファイナンシャルプランナー2級・AFP

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