更新日: 2022.11.15 国民年金

国民年金の過去の未払い分は、60歳以上になってもカバーできる?

執筆者 : 堀江佳久

国民年金の過去の未払い分は、60歳以上になってもカバーできる?
国民年金は、20歳以上60歳未満の国民のすべての人が加入しなければならない公的年金制度です。20歳から60歳までの40年間(納付月数480月)国民年金保険料を支払うと65歳から満額の年金が支給されます。
 
しかし、学生時代は払っていなかった、年金支払いを免除されていたなど、なんらかの理由で全額支払いをしないと満額を受け取ることができません。
 
今回は、こういった未払い分を60歳以上でカバーする国民年金任意加入制度について解説します。
堀江佳久

執筆者:堀江佳久(ほりえ よしひさ)

ファイナンシャル・プランナー

中小企業診断士
早稲田大学理工学部卒業。副業OKの会社に勤務する現役の理科系サラリーマン部長。趣味が貯金であり、株・FX・仮想通貨を運用し、毎年利益を上げている。サラリーマンの立場でお金に関することをアドバイスすることをライフワークにしている。

国民年金任意加入制度とは?

(1)国民年金任意加入制度とは?

国民年金をなんらかの事情により全額支払いできなかった場合に、本人の申し入れにより、60歳以上65歳未満の5年間、納付月数480月まで、国民年金保険料を納付することで、未納分をカバーして、65歳から受け取れる老齢基礎年金を増額することができる制度です。
 

(2)加入条件

この国民年金任意加入制度に加入するには、次の1~5のすべての条件を満たす必要があります。
 

1. 日本国内に住所を有する 60 歳以上 65 歳未満の方
2. 老齢基礎年金の繰上げ支給を受けていない方
3. 20 歳以上 60 歳未満までの保険料の納付月数が 480 月(40 年)未満の方
4. 厚生年金保険、共済組合等に加入していない方
5. 日本国籍を有しない方で、在留資格が「特定活動(医療滞在など)」や「特定活動(観光等を目的とするロングステイなど)」で滞在する方ではない

 
上記のほか、次の方も加入できます。
 

A. 年金の受給資格期間を満たしていない65歳以上70歳未満の方
B. 外国に居住する20歳以上65歳未満の日本人

 
なお、上記のとおり、60歳以上で厚生年金に加入している人はこの制度には加入できませんが、厚生年金に加入していることで、保険料納付月数が480月になるまで経過的加算額として老齢厚生年金受給額に加算されます。
 

(3)手続方法

お住まいの市(区)役所、もしくは町村役場の国民年金窓口で手続きができます。
 
なお、手続きの際は、以下のものが必要です。
 

1. 基礎年金番号通知書または年金手帳等の基礎年金番号がわかる書類
2. 預貯金等通帳、印かん(金融機関届出印)

 

国民年金任意加入制度加入のメリット

(1)受け取る老齢基礎年金を増額できる

保険料を納付した金額が多くなればなるほど、65歳から受け取れる年金は増えます。ただし、納付月数480月までの納付が可能で、年金の受け取りができる満額は令和4年度で年額77万7800円となっています。
 
なお、年金は一生涯受け取れる制度ですので、下記のとおり、長生きすればするほど受け取れる年金の総受取額は増えるのでメリットがあるといえます。ただし、早く亡くなった場合には、そのメリットを享受することができません。
 
【年金の増額例】
 
国民年金を「60歳から65歳未満」の5年間加入した場合の保険料納付額(総額)と5年間の加入によって65歳から受け取れる年金の増加額を、令和4年度の保険料額と年金額で計算した場合には以下のとおりとなります。
 

1. 5年間の保険料納付金額(総額) : 99万5400円
 
2. 65歳から受け取れる年金の増加額
●70歳までの5年間(総額) : 約48万6000円
●75歳までの10年間(総額) : 約97万2000円
●80歳までの15年間(総額) : 約145万8000円

 

(2)万が一の備えができる

加入している期間に、要件を満たすことができれば、障害が残ったときに受け取れる障害基礎年金や被保険者が死亡したときに、遺族に対して支給される遺族基礎年金を受け取ることができます。
 

(3)保険料が社会保険料控除を受けることができる

このように、国民年金任意加入制度加入にはさまざまなメリットがありますので、未払いがある方は検討されてみてはいかがでしょうか。
 

出典

日本年金機構 令和4年4月分からの年金額等について

日本年金機構 年金の「未納」「未加入」「免除」期間がある 60 歳以上の方へ

 
執筆者:堀江佳久
ファイナンシャル・プランナー

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