更新日: 2022.11.24 厚生年金

【年金相談】40歳です。ずっと専業主婦で厚生年金を払ったことがありません。年金の受給額はいくらになりますか?

【年金相談】40歳です。ずっと専業主婦で厚生年金を払ったことがありません。年金の受給額はいくらになりますか?
Aさんは、大学卒業後すぐに結婚し専業主婦になりました。そのため、会社勤め経験がなく、自分で厚生年金保険料を払ったことがありません。40歳になり、自分の年金受給額に不安を感じてきました。共働きの兼業主婦とどのくらい受給額の差があるのか確認し、今後働くか否かを決めたいとのご相談です。
林智慮

執筆者:林智慮(はやし ちりよ)

CFP(R)認定者

確定拠出年金相談ねっと認定FP
大学(工学部)卒業後、橋梁設計の会社で設計業務に携わる。結婚で専業主婦となるが夫の独立を機に経理・総務に転身。事業と家庭のファイナンシャル・プランナーとなる。コーチング資格も習得し、金銭面だけでなく心の面からも「幸せに生きる」サポートをしている。4人の子の母。保険や金融商品を売らない独立系ファイナンシャル・プランナー。

このままだと1ヶ月6万円もない

日本は20歳になると、国民年金に加入しなければなりません。20歳の時に学生であったAさんは、納付を猶予できる学生納付特例制度を利用しました。
 
そして、卒業と同時に結婚し、会社員である夫(国民年金第2号被保険者)の扶養配偶者(国民年金第3号被保険者)となりました。これまで会社に勤めることもないので、厚生年金の加入期間はありません。また、追納しないまま、追納可能な期間10年は過ぎたため、追納はしていません。
 
そのため、A子さんがこのまま専業主婦でいると、受け取れるのは国民年金のみです。
 
国民年金は、保険料を納めた月数により、年金額が変わってきます。40年間保険料を支払うことで満額を受け取ることができます。ただし、第3号被保険者(専業主婦・主夫)の期間は、保険料を納めなくても納めたこととみなされます。よって、大学卒業後すぐ第3号被保険者になったA子さんは、学生納付特例制度の3年分が不足するだけです。
 
では、いくら受給できるのでしょうか。令和4年4月からの国民年金受給額は、満額で77万7800円です。年金保険料を納めた月数により年金額が変わるので、77万7800円×(40-3)/40=71万9465円が、A子さんの年金額となります。1ヶ月にすると5万9957円。月に6万円もありません。
 

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月5万円の差、これから働くとどうなる?

厚生労働省 『令和2年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』P13、表13「厚生年金保険(第1号) 老齢年金受給権者状況の推移(女子)」によれば、令和2年65歳以上の女子の平均受給額は10万9205円(年額で約131万円)であり、A子さんの国民年金の予定額5万9957円との差が4万9248円です。約5万足りません。
 
では、60歳になるまでの20年で1ヶ月5万円(年額60万円)の年金を増やすには、どのくらいの報酬が必要なのでしょう。
 
日本年金機構の報酬比例部分の計算式より、60万円÷5.481×1000÷240≒45万6121円、65歳になるまで加入した場合でも、60万円÷5.481×1000÷300≒36万4897円という報酬が必要になり、今まで専業主婦だったA子さんにとって現実的な数字ではありません。
 
もし、20万円の報酬月額で厚生年金に加入すれば、1ヶ月ごとに20万円×5.481÷1000≒1096円の報酬比例部分が増えます。65歳まで加入すると約33万円になるだけでなく、経過的加算により3年分の基礎年金部分の不足分が埋められるため、年金は約110万円(1ヶ月約9万円)になります。
 
女性の年金の平均11万円に、あと2万円足りない状態まで増やせます。
 

65歳以降も働くという選択

65歳以降70歳まで20万円の報酬月額で厚生年金に加入した場合、70歳からの報酬比例部分の年金は約39万円。もし、厚生年金に加入しつつ厚生年金を受け取る場合は、70歳までの間に前年の報酬に応じ増額された年金が受け取れます。
 
では、働き続けて給与だけで生活できるのなら、年金を繰り下げる方法もあります。70歳からの受け取りとすると65歳時の1.42倍(約156万円)になり、厚生年金に加入して70歳まで同条件で働くなら、65歳以降の報酬比例分が加わり約162万円の年金額になります。ただし、繰り下げている間は、毎年の報酬に応じた増額部分については受け取れません。
 
もし、将来給与収入が増えて、標準報酬月額と賞与の月平均に年金の月額を合計して47万円を超える場合、超えた分の1/2だけ年金額が停止され、繰り下げる場合も停止された年金額で計算します。
 
また、40歳から65歳までの25年、iDeCoに加入して月々2万3000円を拠出する方法もあります。終身年金ではありませんが、65歳から90歳までの25年分の年金に上乗せできる以外にも、掛金全額所得控除により、所得税・住民税が軽減できます。
 
年金保険料を支払わなくても将来年金がもらえるのは、今は魅力的ですが、一時的に手取りが減ることになっても、将来受け取る年金を作ること・増やすことを考えましょう。
 

出典

厚生労働省年金局 令和2年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況(令和3年12月)

日本年金機構 老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額

日本年金機構 令和4年4月分からの年金額等について

日本年金機構 国民年金保険料の追納制度

日本年金機構 任意加入制度

日本年金機構 付加保険料の納付のご案内

 
執筆者:林智慮
CFP(R)認定者

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