更新日: 2022.12.14 その他年金

「熟年離婚」を検討中です。年金分割制度について教えてください

執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部

「熟年離婚」を検討中です。年金分割制度について教えてください
熟年離婚を考えたときにネックとなるのが、離婚後の生活費の問題です。特に、これまで専業主婦(夫)をしていた人であれば、「ひとりではとても老後の生活が立ち行かない……」と離婚を躊躇(ちゅうちょ)する人もいるでしょう。
 
そのようなときに離婚後の経済的な問題を緩和できる方法のひとつが、年金分割制度です。本記事では、離婚時の年金分割制度について、概要や制度の種類、手続き期限の注意点などをまとめました。
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離婚時の年金分割制度は2種類

離婚時の年金分割制度とは、離婚した元夫婦が、婚姻期間中に納付した厚生年金保険料の金額に対する厚生年金を、分割してそれぞれの年金にできる制度です。
 
婚姻期間中に築いた財産は夫婦の共有財産とみなされ、離婚時には財産分与をするのが一般的です。婚姻期間中に保険料を支払った年金も夫婦の共有財産として分割しようというのが、年金分割制度の趣旨です。
 
ただし、年金を受け取ってから分割するのは困難であるため、婚姻期間中の厚生年金記録を分割する方法で、将来もらえる年金を分け合うことになります。離婚時の年金分割制度には「合意分割制度」と「3号分割制度」の2種類があります。
 

合意分割制度

合意分割制度は、当事者の片方または両方の請求によって、年金を分割する方法です。合意分割制度で年金分割ができるのは、次の条件に当てはまる場合です。

●婚姻期間中の厚生年金記録がある
●当事者の合意または裁判手続きを経て按分割合を決めた
●請求期限内(原則、離婚日翌日から2年間)である

当事者で按分割合の合意に至らない場合は、どちらか片方からの請求で裁判手続きを取ることができます。
 
なお、婚姻期間中に3号分割の対象期間がある場合は、合意分割の請求と同時に3号分割も請求したとみなされます。そのため、3号分割の対象期間については、3号分割による厚生年金記録の分割と合わせて合意分割による分割も行われます。
 

3号分割制度

3号分割制度は、夫婦いずれかに国民年金の第3号被保険者期間があった場合、第3号被保険者であったほうが請求できる可能性がある制度です。3号分割を請求するには、次の条件を満たしている必要があります。

●婚姻期間中に平成20年4月1日以降の第3号被保険者期間がある
●請求期限内(原則、離婚日翌日から2年間)である

3号分割を請求すると、平成20年4月1日以降の婚姻期間における第3号被保険者期間について、相手方の厚生年金記録を2分の1ずつ分割できます。
 
3号分割制度の利用にあたって、当事者の合意は不要です。ただし、相手方が障害厚生年金の受給権者で、分割請求の対象期間を基礎として年金額が算出されている場合は、3号分割の請求は認められないことに注意しましょう。
 

年金分割制度の利用期限は原則離婚から2年

年金分割の請求期限は、次のタイミングから起算して原則、2年以内と定められています。

●離婚をした日の翌日
●婚姻の取り消しをした日の翌日
●国民年金第3号被保険者資格を喪失し事実婚関係を解消した日の翌日

そのため、離婚などにあたって年金分割を希望する場合は早めに当事者間の話し合いなどを行い、2年を経過する前に手続きできるように準備することが大切です。
 

分割請求期限の特例とは

年金分割の請求期限には特例があり、次に該当するケースに限っては、該当する日の翌日から6ヶ月経過するまで期限が延長されます。

●離婚から2年以内までに審判・調停を申し立て、請求期限経過後もしくは請求期限経過日前6ヶ月以内に審判が確定または調停が成立した。
●按分割合に関する附帯処分を求める申立てを行い、本来の請求期限経過後もしくは請求期限経過日前6ヶ月以内に判決確定または和解が成立した。

また、合意分割のために按分割合を決定したのち分割請求前に当事者の片方が亡くなった場合、死亡日から1ヶ月以内に限って請求が認められます。
 

年金分割制度を利用して婚姻期間中の年金をしっかり受け取ろう

離婚時の年金分割制度を利用すると、婚姻期間中に配偶者が納めた厚生年金保険料の記録に従って、分割した年金を将来受け取れるようになります。
 
特に長年専業主婦(夫)として配偶者を支えていた人は、この制度を使うことで、熟年離婚をしてひとりで老後を迎えた生活費の不安をある程度は緩和できるのではないでしょうか。制度について利用条件などを整理し、活用できるよう準備しましょう。
 

出典

法務省 年金分割
日本年金機構 離婚時の年金分割
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部

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