更新日: 2022.12.26 その他年金

年金受給を「70歳から」にすると健康寿命まで「5年弱」!? 「繰下げ受給」のメリット・デメリットを解説

執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部 / 監修 : 高橋庸夫

年金受給を「70歳から」にすると健康寿命まで「5年弱」!? 「繰下げ受給」のメリット・デメリットを解説
年金の受け取り開始は原則65歳からですが、本人の希望によって1ヶ月単位で開始時期を早めたり(繰上げ受給)、逆に遅らせたりすること(繰下げ受給)が可能です。年金は、開始時期を変えることで受け取れる金額が変わる仕組みなので、どのように受け取ることが最適なのか悩んでしまう人も多いでしょう。
 
本記事では、年金の受け取り開始を「70歳に繰り下げた場合」を仮定し、メリットとデメリットについて解説します。
FINANCIAL FIELD編集部

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)

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高橋庸夫

監修:高橋庸夫(たかはし つねお)

ファイナンシャル・プランナー

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サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。


 

70歳から繰下げ受給した場合のメリット

年金の繰下げ受給を請求した場合、繰り下げた月数×0.7%の割合で年金額が増額され、増額率が生涯続きます。つまり、70歳に繰り下げた場合の増額率は60ヶ月×0.7%で42%です。
 
例えば、65歳から受け取る場合の老齢基礎年金額が77万7800円の場合には、42%増額され110万4476円にまで増やすことができます。長生きをした場合には、総受給額を増やせるでしょう。なお、老齢基礎年金と老齢厚生年金の繰下げ請求は別々に行えます。
 

70歳から繰下げ受給した場合のデメリット

年金を70歳から受け取るということは、繰下げ受給開始までの生活費を、公的年金以外の収入や貯蓄で補わなくてはならないということです。70歳までの生活を支える収入がない場合には、老後のための貯蓄が減ってしまうことになります。
 
また、繰下げ受給が有利になるのは長生きを想定した場合です。平均より早く亡くなった場合、本人が受け取れる年金額が少なくなってしまう可能性があります。加えて、年金は所得税法の「雑所得」として扱われ、所得税がかかりますので、受け取る金額が増えれば同時に税金も増えます。
 

日本人の健康寿命はどのくらい?

年金の繰下げ受給を検討する上では、日本人の平均寿命と健康寿命(日常生活に制限のない期間の平均)を知っておくことが大切です。厚生労働省が公表している平均寿命と健康寿命の推移によると、2016年の日本人男性の平均寿命は80.98歳、健康寿命は72.14歳という結果でした。
 
一方、女性の平均寿命は87.14歳、健康寿命は74.79歳でした。つまり、健康寿命で見ると、年金の受給開始を70歳に繰り下げた場合、男性は2年強、女性でも5年弱しか残っていないことになります。年金を使って旅行に出掛けたいなど、アクティブに過ごしたい人にとっては不安が残るデータかもしれません。もちろん、これはあくまでも全体の平均値であり、健康寿命の長さは個人の健康状態によって異なります。
 
また、寿命については「平均余命」という概念でも考える必要があるでしょう。平均余命とは、その年齢に達した人が平均であとどのくらい生きるかを示したものです。厚生労働省の令和3年簡易生命表の概況によると、令和3年での65歳の男性の平均余命は19.85歳(寿命の期待値が84.85歳)、65歳の女性の平均余命は24.73歳(同じく89.73歳)でした。
 

繰下げ受給が向いているのは収入や貯蓄が多く健康に自信がある人

年金をいつからどのように受け取るのが良いかは、個人の経済状況や健康状態によって異なります。繰下げ受給の一番のメリットは年金を生涯にわたって増額できることです。70歳まで繰り下げた場合の増額率は42%です。年金以外に収入や貯蓄が十分にあり、健康状態も良好な人の場合は、繰下げ受給も選択肢の一つでしょう。
 

出典

日本年金機構 年金の繰下げ受給
日本年金機構 老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額
日本年金機構 年金から税金が差し引かれています。どうしてですか。
厚生労働省 厚生労働白書 図表1-2-6 平均寿命と健康寿命の推移
厚生労働省 令和3年簡易生命表の概況 主な年齢の平均余命
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
 
監修:高橋庸夫
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