更新日: 2023.06.08 その他年金

「老後の年金」がもらえない!? 加入年数が短い人は「合算対象期間」を確認!

執筆者 : 西岡秀泰

「老後の年金」がもらえない!? 加入年数が短い人は「合算対象期間」を確認!
2021年度末時点の国民年金保険料の納付率は、保険料免除された人を含めて73.9%でした。未納者が3割近くいることになりますが、未納が多いと老後に年金が受け取れなくなる可能性もあります。
 
公的年金受給に必要な保険料納付要件を満たさない人を救済するために設けられた制度が、「合算対象期間(カラ期間)」です。この記事では、合算対象期間について解説します。保険料の未納が多い人は、この記事を参考に自分が年金を受けられるかを確認しましょう。
西岡秀泰

執筆者:西岡秀泰(にしおか ひでやす)

社会保険労務士・FP2級

10年以上加入しないと老齢年金はもらえない

老齢年金を受け取るためには、「受給資格期間」が10年以上必要です。受給資格期間とは、「保険料を納付した期間」と「保険料が免除・猶予された期間」などを合計した期間をいいます。
 
「保険料が未納の期間」は受給資格期間に含まれません。また、「保険料の納付猶予を受けて未払いの期間」は受給資格期間としてカウントできますが、年金額には反映しません。
 
2017年8月、受給資格期間は「25年以上」から「10年以上」に短縮されました。
 

合算対象期間(カラ期間)とは

合算対象期間とは、保険料を納付したり免除されたりしていないにもかかわらず、受給資格期間にカウントできる期間のことをいいます。合算対象期間とされるのは次の期間です。

●国民年金に任意加入できたが任意加入しなかった期間
●制度上国民年金に加入できなかった期間

合算対象期間は、受給資格期間にカウントできますが年金額には反映しません。また、保険料が納付されてないことなどから「カラ期間」と呼ばれることもあります。
 

合算対象期間(カラ期間)になる主な期間

合算対象期間(カラ期間)になる期間はさまざまなケースがあり、その内容は少し複雑です。主な合算対象期間をピックアップして紹介します。
 

1991年3月までの学生であった期間

1991年3月までの学生(20歳以上60歳未満、夜間制などは除く)で国民年金に任意加入していなかった期間は、合算対象期間となります。1991年4月からは学生も強制加入になりましたが、それ以前は任意加入であったため未加入の人もいました。
 

海外で暮らしていた期間

海外で暮らしていて国民年金に加入していなかった期間は、合算対象期間です。1986年(昭和61年)3月まで、海外在住者は国民年金に加入できませんでした。同年4月から、国民年金に任意加入できるようになりました。
 
合算対象期間になるのは、「1986年3月以前の海外在住期間」と「1986年4月以降で任意加入しなかった海外在住期間」です。
 

厚生年金加入者の配偶者で国民年金に任意加入しなかった期間

1986年(昭和61年)3月以前に厚生年金加入者の配偶者で国民年金に任意加入しなかった期間も、合算対象期間です。厚生年金加入者の配偶者が「第3号被保険者」として年金加入できるようになったのは1986年(昭和61年)4月で、それ以前は任意加入でした。
 

合算対象期間(カラ期間)の注意点

合算対象期間(カラ期間)について注意したい点を紹介します。
 

申し出をしないと判明しない合算対象期間がある

合算対象期間は、自分の年金記録で判明しているものと申し出をしないと判明しないものがあります。年金記録で判明している合算対象期間は、次の通りです。

●20歳未満または60歳以上で厚生年金に加入していた期間
●1986年3月以前で厚生年金保険の脱退手当金を受けた期間 など

上記期間については、毎年誕生月に日本年金機構から送付される「ねんきん定期便」の「これまでの年金加入期間」欄に記載されています。
 
しかし、「合算対象期間(カラ期間)になる主な期間」で解説した期間については、年金事務所で申し出をしないと合算対象期間とは認められないので注意しましょう。
 

合算対象期間は年金額に反映しない

合算対象期間は年金額に反映しないため、合算対象期間を使って年金受給権が発生しても年金額は少額です。具体例を使って年金額を計算してみましょう。保険料免除がない場合の老齢基礎年金の計算方法は次の通りです。
 
・老齢基礎年金額=77万7800円(2022年度)×保険料納付月数÷480ヶ月
 
保険料納付によって受給資格期間を満たした場合と、合算対象期間を使って満たした場合を比較します。
 
(ケース1)国民年金の保険料納付が10年(その他の期間は未納)
 
・老齢基礎年金額=77万7800円×120ヶ月÷480ヶ月=19万4450円
 
(ケース2)国民年金の保険料納付が5年(その他の期間は未納)、合算対象期間が5年
 
・老齢基礎年金額=77万7800円×60ヶ月÷480ヶ月=9万7225円
 
老齢基礎年金額は保険料納付月数に比例するため、保険料納付が少ないと年金額も少なくなります。
 

受給資格期間が10年未満の人は合算対象期間の確認を

老齢年金を受け取るためには、受給資格期間が10年以上必要です。保険料納付期間と保険料免除期間の合計が10年未満でも、合算対象期間を加えて10年以上になれば年金の受給権が発生します。
 
保険料の未納期間が長く年金が受け取れるか心配している人は、ねんきん定期便で受給資格期間を確認しましょう。受給資格期間が10年未満ならば、合算対象期間がないかを年金事務所に相談するなど対応が必要です。また、条件を満たすことで国民年金に任意加入することも可能です。
 
老後の生活基盤となる年金を受け取るため、対処法を確認しておきましょう。
 

出典

日本年金機構 合算対象期間
日本年金機構 老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額
 
※2023/6/8 記事を一部修正いたしました。
 
執筆者:西岡秀泰
社会保険労務士・FP2級

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