更新日: 2023.01.27 その他年金

年金を繰上げ受給したいけど、年金額はどのくらい減る? そのほか注意点は?

年金を繰上げ受給したいけど、年金額はどのくらい減る? そのほか注意点は?
蓄えだけでは家計が苦しく年金の繰上げ受給を検討している人のなかには、年金が減額されることが気がかりでなかなか踏み切れない人もいるのではないでしょうか。
 
そこで本記事では、繰上げ受給で年金がどれだけ減るのかを具体的にイメージしやすいように、計算方法や年金額の試算例を紹介します。
 
また、繰上げ受給にともなう減額以外の注意点もまとめました。繰上げ受給を検討するときの判断材料として、ぜひ活用してください。
FINANCIAL FIELD編集部

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)

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高橋庸夫

監修:高橋庸夫(たかはし つねお)

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住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。

繰上げ受給すると年金は最大24%減額になる

年金の繰上げ受給は、原則として65歳から受け取りがスタートする老齢基礎年金・老齢厚生年金を、60~65歳になるまでの希望する時期に受け取り開始できる制度です。ただし、繰上げ受給を選択すると、受け取りを開始する時期に応じて年金が一定率(最大24%)減額されます。
 
以下で、繰上げ受給の減額率の計算方法と金額の計算例を見てみましょう。
 

繰上げ受給による減額率の計算方法

繰上げ受給で減額される年金額は原則として、老齢基礎年金(振替加算を除く)と老齢厚生年金(加給年金額を除く)に、次の式で計算した減額率を掛けて計算します。
 
繰上げ受給による減額率=0.4%(※)×受給開始月(繰上げ請求月)から65歳に達する日の前月までの月数
 
※昭和37年4月1日以前生まれの人は0.5%
 
繰上げできる月数は60歳0ヶ月~64歳11ヶ月の最大60月なので、繰上げ受給による減額率は0.4%(64歳11ヶ月に繰上げ時)~最大で24%(60歳0ヶ月に繰上げ時)となります。
 

繰上げ受給をした場合の年金額の計算例

厚生労働省年金局「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」による、老齢年金の平均受給月額(老齢基礎年金と老齢厚生年金の合計額)に近い14万6000円をもとに、繰上げ受給した場合に減額される金額と年金月額を計算してみましょう。

■64歳0ヶ月に繰上げた場合

減額率:0.4%×12ヶ月=4.8%
減額分:14万6000円×4.8%=7008円
年金月額:14万6000円-7008円=13万8992円

■63歳0ヶ月に繰上げた場合

減額率:0.4%×24ヶ月=9.6%
減額分:14万6000円×9.6%=1万4016円
年金月額:14万6000円-1万4016円=13万1984円

■62歳0ヶ月に繰上げた場合

減額率:0.4%×36ヶ月=14.4%
減額分:14万6000円×14.4%=2万1024円
年金月額:14万6000円-2万1024円=12万4976円

■61歳0ヶ月に繰上げた場合

減額率:0.4%×48ヶ月=19.2%
減額分:14万6000円×19.2%=2万8032円
年金月額:14万6000円-2万8032円=11万7968円

■60歳0ヶ月に繰上げた場合

減額率:0.4%×60ヶ月=24.0%
減額分:14万6000円×24.0%=3万5040円
年金月額14万6000円-3万5040円=11万960円

受給開始時期が早くなるほど減額される金額が大きくなり、年金額が少なくなります。また、一見、減額される金額がそれほど大きくないように見えても、受給期間が20年、30年と長くなると累計額は膨れることに注意が必要です。
 

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年金を繰上げ受給するときの注意点

お金がないからと安易に繰上げ受給をすると、長い目で見た場合に損をする可能性があります。繰上げ受給をするときには、年金が減額されることに加えて、次のルールにも注意しましょう。

追納や国民年金の任意加入制度が利用できなくなる

ほかの年金との併給ができない

 
それぞれどのようなルールなのか、以下で解説します。
 

追納や国民年金の任意加入制度が利用できなくなる

繰上げ受給を選択して年金の受給を開始するとその時点で年金額が決まるため、免除や猶予を受けた国民年金保険料の追納や、納付済期間が40年に満たない場合の任意加入制度が利用できなくなります。
 
そのため、免除・猶予を受けた期間が長い人や国民年金保険料の納付済期間が少ない人は、それ以上年金額を増やせないことに注意しましょう。
 

ほかの年金との併給ができない

老齢年金を繰上げ受給すると、原則としてほかの年金との併給ができません。そのため、次のようなケースに注意が必要です。

・寡婦年金の受給中 ⇒ 繰上げ請求すると寡婦年金が終了
・繰上げ受給開始後に障害状態になる ⇒ 原則として障害年金の請求不可
・遺族年金の受給事由が発生 ⇒ 65歳までは併給不可のため老齢年金と遺族年金のいずれかを選択

ほかの年金との兼ね合いを考慮して、本当にこのタイミングで繰上げ受給をしても後悔しないか、よく検討することが重要です。
 

繰上げ受給は請求前に十分な試算が必要

老齢年金の繰上げ受給は、経済状況などに合わせて年金の受け取り時期を調整できる便利な制度です。
 
ただし、受け取れる年金額が減額されること、国民年金の追納や任意加入ができなくなること、ほかの年金を同時に受け取れないことなどから、長い目で見ると思ったよりもデメリットが大きくなる可能性があります。
 
繰上げ受給を選択する前に、減額される金額などを十分に試算して、慎重に検討することが大切です。
 

出典

日本年金機構 年金の繰上げ受給
厚生労働省年金局 令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況
日本年金機構 国民年金保険料の追納制度
日本年金機構 任意加入制度
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
 
監修:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー

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