夫が亡くなりました…「遺族年金」を受給できると聞いたけどどうすれば良いでしょうか?
配信日: 2023.01.30
遺族年金には国民年金加入者が受給できる遺族基礎年金と、厚生年金加入者が受給できる遺族厚生年金があります。それぞれ受給要件が異なるため、受給できると思っていたら実際に受け取れなかったということもあり得るのです。
本記事では、遺族年金の受給要件や受給額について解説します。
執筆者:古田靖昭(ふるた やすあき)
二級ファイナンシャルプランニング技能士
遺族年金の受給要件とは
遺族年金とは、国民年金または厚生年金保険の被保険者または被保険者だった人が亡くなった場合に、その人に生計維持されていた遺族が受け取れる年金です。遺族年金には、自営業者などが対象となる「遺族基礎年金」と、会社員や公務員などが対象となる「遺族厚生年金」があります。なお会社員や公務員は、受給要件を満たせば遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方を受け取れます。
ただし遺族年金を受け取るためには、亡くなった人の年金保険料の納付状況や、遺族年金を受け取る人の年齢や優先順位などの要件を満たす必要があります。
遺族基礎年金の受給要件
遺族基礎年金は図表1の要件を満たす必要があります。
図表1
遺族基礎年金の受給要件 | |
---|---|
1 | 国民年金の被保険者期間中に亡くなったとき |
2 | 国民年金の被保険者であった60歳以上65歳未満の人で、日本国内に住所を有していた人が亡くなったとき |
3 | 老齢基礎年金の受給権者であった人が亡くなったとき |
4 | 老齢基礎年金の受給資格を満たした人が亡くなったとき |
日本年金機構 遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額) より筆者作成
図表1のうち1と2の要件は、亡くなった日の前日までに保険料免除期間を含めた保険料納付済期間が、国民年金加入期間の3分の2以上でなければなりません。ただし亡くなった日が2026年3月末日までのときに65歳未満であれば、亡くなった月の前々月までの1年間に保険料の未納がなければよいことになっています。
図表1の3と4の要件は、保険料免除期間を含めた保険料納付済期間が25年以上ある人に限られます。
遺族基礎年金は亡くなった人に生計維持されていた場合、「子どものいる配偶者」、「子ども」であれば受け取れます。
なお受給対象者である「子ども」は18歳になった年度の3月31日までの人、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある人が対象です。
生計を維持されている要件は、(1)同居している、別居していても仕送りを受けていたりしている、健康保険の扶養親族などで生計を同じくしていること。(2)収入要件として、受給する側の前年の年収が850万円未満、または所得が655万5000円未満の人。の2点を満たしていることが必要になります。
遺族厚生年金の受給要件
遺族厚生年金は図表2の要件を満たす必要があります。
図表2
遺族厚生年金の受給要件 | |
---|---|
1 | 厚生年金保険の被保険者期間中に亡くなったとき |
2 | 厚生年金の被保険者期間中に初診日がある病気やけがが原因で初診日から5年以内に亡くなったとき |
3 | 1級または2級の障害厚生年金の受給者が亡くなったとき |
4 | 老齢厚生年金の受給権者であった人が亡くなったとき |
5 | 老齢厚生年金の受給資格を満たした人が亡くなったとき |
日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)より筆者作成
図表2のうち1と2の要件は、亡くなった日の前日までに保険料免除期間を含めた保険料納付済期間が、国民年金加入期間の3分の2以上でなければなりません。ただし亡くなった日が2026年3月末日までのときに65歳未満であれば、亡くなった月の前々月までの1年間に保険料の未納がなければよいことになっています。
図表2の4と5の要件は、保険料免除期間を含めた保険料納付済期間が25年以上ある人に限られます。
遺族厚生年金の受給対象者は、配偶者や子どもだけではなく亡くなった人に生計維持されていた遺族となり、「子どものある配偶者または子ども」「子どものない配偶者」「父母」「孫」「祖父母」の優先順位で受け取れます。なお子どもの要件は遺族基礎年金と同じです。
遺族基礎年金では子どもがいない配偶者の受給はできませんでしたが、遺族厚生年金では子どもがいない配偶者でも受給できます。ただし30歳未満の妻は5年間のみ受給が可能で、夫は55歳以上である必要があります。
子どもがいない妻が40歳以上の場合であれば、65歳になるまで遺族厚生年金に中高齢寡婦加算があります。また「夫」「父母」「祖父母」の場合は55歳以上という要件があり、受給は60歳からとなります。ただし夫に関しては、遺族基礎年金を受給できる場合は55歳から60歳の間でも遺族厚生年金の受給が可能です。
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遺族年金の受給額はどのくらいか
遺族基礎年金と遺族厚生年金の年金額は図表3で計算します。
図表3
年金の種類 | 年金受給額 |
---|---|
遺族基礎年金 | 子のある配偶者:77万7800円+子の加算額(※1) 子:77万7800円+2人目以降の子の加算額(※1) |
遺族厚生年金 | 死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3(※2) |
※1 加算額は、2人目の子までが各22万3800円、3人目以降の子が各7万4600円
※2 報酬比例部分は、平均標準報酬月額×7.125÷1000×2003年3月までの加入月数+平均標準報酬額×5.481÷1000×2003年4月以後の加入月数で計算
日本年金機構 遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)、遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額) より筆者作成
自営業者で18歳未満の子どもがいる配偶者であれば、77万7800円+22万3800円となり、年額100万1600円です。
平均月収25万円の会社員で18歳未満の子どもがいる配偶者の場合、25万円×5.481÷1000×300月(25年)×3/4+77万7800円+22万3800円となり、約130万9900円となります。
遺族年金を理解しておくことが大切
遺族年金制度は遺族基礎年金と遺族厚生年金で受給要件などが異なるため、それぞれ理解しておけば、被保険者が万が一亡くなった場合に受給対象者なのか、またどのくらい受給できるかが把握できます。
もし遺族年金だけでは生活に不安がある場合には、生命保険に加入するなど万が一に備えて準備しておくとよいでしょう。
出典
日本年金機構 遺族年金
日本年金機構 遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)
日本年金機構 さ行 生計維持
日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)
日本年金機構 は行 報酬比例部分
執筆者:古田靖昭
二級ファイナンシャルプランニング技能士