受給開始時期によって年金額が2倍に! 年金の損益分岐点は何歳?
配信日: 2023.03.13
受け取れる年金額を増やしたい場合には、通常の65歳で年金を受け取らず、66歳以降75歳までの間に繰下げるとよいでしょう。繰下げた月数に応じて受け取れる年金が増額し、最大84.0%の増減率が生涯にわたって保証されます。
本記事では、年金の繰下げ受給の概要をはじめ、繰下げ受給を選択した場合の損益分岐点について解説します。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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年金の繰下げ受給の概要
年金の繰下げ受給とは、受給資格が発生する65歳で年金を受け取らずに66歳以降75歳までの間に遅らせる制度です。繰下げた期間に応じた増額率(最大84.0%)が適用され、生涯にわたって増額した年金を受け取れます。
また、老齢基礎年金と老齢厚生年金の両方、またはどちらか一方の繰下げもできるので、そのときの経済状況に合った選択が可能です。
65歳以降も給与収入や不動産収入があったり、年金以外の方法で当面の生活費を用意できたりするのであれば、ぜひ活用したい制度といえるでしょう。
年金の繰下げ受給の増額率
年金の繰下げ受給を選択した際に増額される年金額は、老齢基礎年金(振替加算額を除く)および老齢厚生年金(加給年金額を除く)に、以下の増額率を掛けて計算します。
・繰下げ受給による増額率=0.7%×65歳の誕生日から繰下げ請求月の前月までの月数
※昭和27年4月1日以前生まれの人は繰下げの上限年齢が70歳まで
年金の受取開始時期を65歳から70歳まで繰下げた場合の増減率は42.0%、最大の75歳まで繰下げれば増減率を84.0%にまで増やせます。ただし、年金の繰下げ受給後すぐに亡くなるなど万が一のことが起きれば、65歳で年金を受け取るよりも年金総額が少なくなる場合があります。
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年金の繰下げ受給による損益分岐点は何歳?
年金の繰下げ受給を選択した際に得となるのは、増額によって受け取れる年金総額が通常の65歳から受給したときの年金総額を超える年齢まで長生きした場合です。繰下げ受給の請求時の年齢別増額率とおおよその損益分岐点をまとめると図表1のとおりなので、参考にしてみてください。
図表1
請求時の年齢 | 繰下げ増額率 | 損益分岐点の年齢 |
---|---|---|
66歳0ヶ月 | 8.4% | 77歳11ヶ月 |
67歳0ヶ月 | 16.8% | 78歳11ヶ月 |
68歳0ヶ月 | 25.2% | 79歳11ヶ月 |
69歳0ヶ月 | 33.6% | 80歳11ヶ月 |
70歳0ヶ月 | 42.0% | 81歳11ヶ月 |
71歳0ヶ月 | 50.4% | 82歳11ヶ月 |
72歳0ヶ月 | 58.8% | 83歳11ヶ月 |
73歳0ヶ月 | 67.2% | 84歳11ヶ月 |
74歳0ヶ月 | 75.6% | 85歳11ヶ月 |
75歳0ヶ月 | 84.0% | 86歳11ヶ月 |
出典:日本年金機構「年金の繰下げ受給」より筆者作成
65歳から受け取る年金を100%とした場合、100%を1ヶ月あたりの増減率である0.7で割ると142.85です。これを12(ヶ月)で割ると11.904となり、繰下げ受給を請求して受給開始となったタイミングから11年11ヶ月以上経過すれば、繰下げ受給がお得になる計算です。
令和3年の平均寿命と余命は
厚生労働省の「令和3年簡易生命表」によると、男性の平均寿命は81.47歳、女性の平均寿命は87.57歳であると伝えています。また、主な年齢の平均余命をまとめると図表2のとおりです。
図表2
年齢 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
65歳 | 19.85年 | 24.73年 |
70歳 | 15.96年 | 20.31年 |
75歳 | 12.42年 | 16.08年 |
出典:厚生労働省「令和3年簡易生命表の概況」
年金の繰下げ受給は、損益分岐点となる年齢よりも長生きした場合に得となります。しかし、その年齢まで確実に生きていける保証はありませんし、寿命は誰にも分からないところでしょう。損益分岐点だけで繰下げた年金の受取年齢を決めるのではなく、自身の寿命を考慮して検討することが大切です。
自分に合った年金の受け取り方を検討しよう
平均寿命は男性が81.47歳、女性が87.57歳という結果なので、自分の寿命が繰下げ受給の損益分岐点の年齢を超える予定であれば検討してみる価値は大きいでしょう。繰下げる期間が1年や2年間であっても、通常の65歳で受け取るよりも受給額に違いが出ます。
老後の生活費をまかなう方法は限定されがちなので、少しでも多くの年金を受け取れるように適した受給開始時期を検討してみてください。
出典
日本年金機構 年金の繰下げ受給
厚生労働省 令和3年簡易生命表の概況
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部