国民年金保険料の納付期間が「5年延長」になるって本当ですか…?
配信日: 2023.03.15
これはすでに確定していることなのでしょうか。もし延長された場合、私たちにはどのような影響があるのでしょうか。考えていきます。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
目次
国民年金保険料の納付期間は現状何年?
現状、国民年金保険料の納付期間は最大で480ヶ月、つまり40年間です。40年間保険料を納めることで、国民年金を満額(令和4年度においては約77万7800円)受け取ることができます。
なお、国民年金を受け取るだけなら40年間保険料を納める必要はなく、保険料を納めた期間や免除された期間などを合わせた受給資格期間が10年以上あればよいとされています。ただし、その場合に受け取れる年金額は満額ではなく、加入履歴に応じた額となることにご注意ください。
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国民年金保険料の納付期間が5年延長されるのは本当?
最近、国民年金保険料の納付期間が40年から45年へ5年延長になり、被保険者の負担が増えると一部で騒がれていますが、これは本当のことなのでしょうか。
実際のところ、この話はまだ確定したわけではありません。現状は、あくまでも審議・検討されている段階です。しかし、2019年に行われた財政検証の中で、保険料拠出期間を45年に延長した場合の試算がすでになされていたことを考えると、近い将来に現実となる可能性は相当に高いのではないでしょうか。
政府は次回の財政検証が行われる2024年に結論を出し、2025年の通常国会で関連法改正案の提出を目指しているようです。これが実現した場合、早ければ2026年ごろには国民年金保険料の納付期間が5年延長され、45年間となるでしょう。
納付期間の延長によって年金にどのような影響が出る?
保険料の納付期間が延びることで、私たちが将来受け取る年金額も増加する可能性があります。
参考までに、2019年の財政検証では、保険料の納付期間が5年延長されることで、2058年における所得代替率(年金受給開始時点の年金額が、現役世代の手取り収入額と比較してどのくらいの割合かを示すもの)が51%を維持できる可能性があると示唆しています。
仮に保険料の納付期間が現行の40年のままだとすると、2058年には所得代替率が44.5%と大きく減少してしまいます。将来受け取る年金額が維持されるというのは、私たちにとって良い影響といえます。
支払う保険料も大きく増える
ただし、納付期間が5年延長になるということは、私たちが納める保険料もその分多くなるということです。現在の国民年金保険料は月額1万6590円で、5年分にすると99万5400円と100万円近い金額になります。
つまり、私たちが将来、年金を満額受け取るために払わなければならない保険料が100万円増えるということです。特に、自営業者など国民年金のみの加入者にとっては、大きな負担となるでしょう。
また、会社員など厚生年金に加入していた方についても、年金を満額受け取るためには定年の延長や自身で国民年金保険料を払っていくなどの対応が必要となり、なんらかの負担が生じることが予想されます。高所得者など金銭的に余裕のある層はともかく、平均程度の収入層においては、これらの負担は特に重く感じられるでしょう。
国民年金保険料の納付期間延長を前提にライフプランを考える
政府は現在、国民年金保険料の納付期間を現行の40年から45年に延長させることを検討しています。これが実現した場合、私たちが将来受け取る年金額が増加する可能性はあるものの、その分負担も大きくなってしまいます。
国民年金保険料の納付期間の延長は、自営業者などの国民年金のみの加入者だけではなく、厚生年金に加入している会社員にも影響を及ぼすことが予想されます。
今後も、年金制度は時代に合わせて変わっていくことでしょう。年金についてひとごととは思わず、常に関心を持ち、制度変更に合わせた柔軟な対応ができるようにライフプランを考えておきたいものです。
出典
厚生労働省 「2019(令和元)年財政検証結果レポート」
執筆者:柘植輝
行政書士