更新日: 2023.04.18 iDeCo(確定拠出年金)

退職金への増税でiDeCoも増税になるってどういうこと?

執筆者 : 柘植輝

退職金への増税でiDeCoも増税になるってどういうこと?
2022年の10月、政府の税制調査会が行われ、退職金への課税が今後強化される可能性があると話題となりました。その陰でこれはiDeCoへの課税強化だ、国がiDeCoへのはしごを外しにかかったなどといった声も上がりました。
 
退職金への増税でiDeCoも増税になるのはなぜでしょうか。退職金の税制度とiDeCoの税制度について見ていきます。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

iDeCoとは

まずはiDeCoについて確認していきましょう。iDeCoとは、私的年金の1つです。加入の申し込み、掛け金の拠出、掛け金の運用の全てを自分で行い、老後資金として確保するための制度です。
 
iDeCoの魅力は税制優遇にあります。拠出時、運用時、受取時の全ての段階において税制優遇が受けられ、効率的に老後資金を用意できることから多くの方に利用されている制度になります。
 

退職金への課税が検討されているってどういうこと?

2022年10月、各メディアから「退職金への課税が強まる」と報道を受け驚いた方もいらっしゃるでしょう。国は現在退職金に関する税制を変更しようと検討しているようです。
 
日本は退職金に対する税金が非常に優遇されています。勤続年数が20年以下であれば40万円×勤続年数までは退職金が非課税となります。さらに、20年を超えていれば勤続年数から20を引いたものに70万をかけ、そこに800万円を加えた部分まで非課税となります。
 
そして、課税対象となる部分が出た場合にもその金額に2分の1をかけて出た最後の数字が課税対象となるため、非常に税負担が小さなものになります。仮に2500万円退職金を受け取っても、30年勤務していれば所得税と復興特別所得税の金額はおおよそ58万円とわずか2%程度になると考えると、その小ささが分かるでしょう。
 
【図表】


 
出典:国税庁 退職金と税
 
しかし、この制度こそが「退職金控除があるから転職を控えよう」と労働者の転職意識をそぎ雇用の流動性に悪影響を及ぼし、人や資本の動きが悪くなっているとの指摘が挙がっています。また、税制調査会の中で退職金は勤続年数に関係なく一律に課税するべきだという意見もあったようです。
 
ここが各メディアにて報道され多くの方が「退職金が増税される」と驚くことになったのです。
 
一方で、税制調査会の後の会見では既存の退職金制度を前提に生活している方への配慮も必要という旨の発言もありました。まだ明確に時期や内容が決まったわけではありませんが、政府は退職金の税制に関して変更を検討していることはたしかでしょう。
 

なぜ退職金への増税がiDeCoへの増税になるのか

iDeCoの受け取り方法は大きく分けて2つ。1つは年金形式で受け取る方法で、もう1つは一括で受け取る方法です。このうち、一括で受け取る場合は退職金と同じように控除が適用されることになっています。
 
iDeCoの魅力はこの受取時の税制優遇にあり、退職金と同様の控除の適用が受けられることを前提にiDeCoに加入している人も少なくないでしょう。
 
退職金のない自営業者や、中小企業に勤めていて自分で退職金を作るためにiDeCoに加入しているという方から見れば、iDeCoに急な増税話が持ち上がったように感じられるのも無理はありません。そのため、退職金への増税は実質的にiDeCoへの増税にもなりかねず、話題となったのです。
 
ただし、退職金が増税となったとしても、それだけであれば年金形式で受け取る場合の課税関係には変化がありませんし、掛け金の拠出時や運用益への税制優遇にも変化はありません。
 

税制は常に変更がされていくものであることを知っておくこと

今の税制は永遠で絶対に変わらないものではありません。税制は時代に合わせて常に変動を続けています。
 
iDeCoや退職金をめぐる税金関係も例外ではなく、近い将来今ほどの税制優遇は受けられなくなることも十分あり得るでしょう。近年は老後不安から資産運用や節税に関心が高まっていますが、その熱に踊らされてはいけません。
 
iDeCoへの加入を含め老後に向けた人生設計は、ある程度税金や制度に変更があったとしても対応できるよう、他人任せではなく自身で常に考え続けることが必要な時代になっているということでしょう。
 

出典

国税庁 退職金と税
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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