更新日: 2023.05.25 厚生年金

4月から6月に「残業」が増えると「手取りが減る」?「損」といわれる理由を解説

4月から6月に「残業」が増えると「手取りが減る」?「損」といわれる理由を解説
基本給が大幅に上がらない以上、できるだけたくさん残業をして収入を増やしたい、残業代で稼いで少しでも家計の足しにしたいと考える人も多いかもしれません。ただし、「4月から6月に残業をすると手取りが減るから注意して」といわれることもあります。
 
本記事では、4月から6月に残業が増えると損するといわれる理由、本当に残業を抑えたほうがいいのかを解説します。
FINANCIAL FIELD編集部

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4月から6月に残業が増えると手取りが減るといわれる理由

結論からいえば、残業などで収入が増えると厚生年金保険の保険料が上がり、手取りが減る可能性があります。
 
会社員であれば源泉徴収制度によって毎月給料から自動的に天引きされることも多い厚生年金の保険料はどのように決まるのでしょうか。
 
厚生年金保険の保険料は、毎月の給与と賞与に共通の保険料率をかけて計算され、事業主(勤務先)と被保険者(会社員)が半分ずつ負担しています。具体的にはそれぞれ下記の計算式によって決まります。保険料率は18.3%です。
 

・毎月の保険料額=標準報酬月額×保険料率
・賞与の保険料額=標準賞与額×保険料率

 
標準報酬月額は会社員が受け取る税引前の給与を一定の幅で区分した報酬月額に当てはめて決定したものです。1から32までの等級に当てはめられます。毎年9月に4月から6月の報酬月額をもとに改定が行われ、年間の保険料を決める仕組みになっています。
 
「4月から6月に残業すると社会保険料の負担が増える」といわれるのは、標準報酬月額の計算対象に基本給だけでなく残業代や通勤手当なども含まれるためです。
 

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4月から6月は残業を減らしたほうがいい?

4月から6月の収入が標準報酬とみなされるなら、残業はできる限り減らして社会保険料の負担を減らしたほうがいいのでしょうか。
 

残業すればすぐに損するわけではない

「5月はいつもより残業が10時間増えたから損した」と考える人がいますが、4月から6月に残業すればいつでも保険料の負担が増えるわけではありません。32等級に区分されている標準報酬月額の計算のもとになる報酬月額にはそれぞれ幅があるからです。
 
例えば、15等級の標準報酬月額は22万円です。この場合の報酬月額は21万円以上23万円未満です。仮に通常の給料が21万円で、残業して21万5000円や22万3000円などになったとしても、幅の範囲内のため等級は変わりません。つまり保険料は同じです。
 

保険料が上がっても損とは限らない

仮に残業が増えて収入が増え一時的に等級が上がって保険料の負担が増えてしまったとしても、必ずしも損するとは限りません。なぜなら厚生年金の保険料が上がると、将来的に受け取れる年金額を増やせるからです。
 
老齢厚生年金は報酬比例部分と経過的加算、加給年金額を合計した金額がもらえます。報酬比例部分は年金額計算の基礎となるもので、標準報酬月額と標準賞与額の総額をもとに計算される平均標準報酬額や年金加入期間が増えるほど金額は高くなります。
 
短期的には負担が増えますが、長期的に考えると将来の年金額が増えるため、「4月から6月に残業が増えると損する」とは言い切れません。
 

まとめ

今回は4月から6月に残業が増えると手取りが減るのか、損するといわれる理由を解説しました。
 
残業が増えると標準報酬月額が高くなる可能性があり、厚生年金保険料の負担が増えることもあります。その一方で保険料が増えると将来の年金額が増えます。そのため人それぞれ考え方や価値観が異なることを考えると「4月から6月に残業すると損だからやめたほうがいい」とは言い切れないでしょう。
 

出典

日本年金機構 厚生年金保険の保険料
日本年金機構 令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表(令和5年度版)
日本年金機構 老齢厚生年金の受給要件・支給開始時期・年金額
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
 

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