更新日: 2023.07.04 その他年金

実際に年金を「繰り下げ受給」している人は、日本にどれくらいいるの?

執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部

実際に年金を「繰り下げ受給」している人は、日本にどれくらいいるの?
年金の繰下げ受給では、老齢基礎年金(国民年金)や老齢厚生年金(厚生年金)を、65歳からは受け取らずに、66歳から75歳までの間に年金の請求手続きを行います。繰下げ受給の増額率は、1ヶ月あたり0.7%となり、最大84.0%まで、年金額の増額が可能になります。
 
しかし、繰下げ受給で年金額を増やしたいものの、実際には、どれくらいの人が繰下げ受給を選択しているのかが、気になるのではないでしょうか。「本当に繰り下げてよいのか」「何か気を付けるべきポイントがあるのだろうか」といった疑問を持つ人もいることでしょう。
 
本記事では、年金の繰下げ受給の制度概要と、年金の繰下げ受給を選択した人の割合、繰下げ受給の注意点について解説します。
FINANCIAL FIELD編集部

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)

ファイナンシャルプランナー

FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。

編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。

FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。

このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。

私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。

年金の繰下げ受給とはどんな制度?

年金の繰下げ受給とは、65歳から受け取る年金を、66歳から75歳までの間に遅らせて受け取る制度です。1ヶ月あたりの繰下げ増額率は0.7%ですので、年金の受給開始時期を遅らせるほどに、年金額を増やせます。
 
一度適用された増額率は、生涯にわたって変わらず、老齢基礎年金と老齢厚生年金を別々に繰り下げることが可能です。
 

年金の繰下げ受給を選択した人の割合はどのくらい?

厚生労働省の「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」では、実際に年金の繰下げ受給を選択した人の割合を伝えています。国民年金の繰下げ受給を選択した人の割合を表1、厚生年金の繰下げ受給を選択した人の割合を表2にまとめましたので、参考にしてください。
 
【表1】
 

令和3年度の繰下げ受給率 令和3年度の繰下げ受給率(*基礎のみ)
国民年金(老齢基礎年金)
受給権者の繰下げ受給状況
1.8% 1.8%
国民年金(老齢基礎年金)
70歳の繰下げ受給状況
2.5% 3.1%

 
*基礎のみとは、同一の年金種別の厚生年金保険の受給権を有しない老齢基礎年金受給権者のこと
 
【表2】
 

令和3年度の繰下げ受給率
老齢厚生年金
受給権者の繰下げ受給状況
1.2%
老齢厚生年金
70歳の繰下げ受給状況
2.0%

 
※表1・2ともに、厚生労働省「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとに筆者作成
 

国民年金は繰上げ受給率が高い

厚生労働省の「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」では、繰上げ受給状況についても伝えています。表3のように、老齢基礎年金の繰上げ受給率が高く、繰下げ受給よりも、繰上げ受給を選択する人のほうが、多いことが分かっています。
 
【表3】
 

令和3年度の繰上げ受給率 令和3年度の繰上げ受給率(*基礎のみ)
国民年金(老齢基礎年金)
受給権者の繰上げ受給状況
11.2% 27.0%
国民年金(老齢基礎年金)
70歳の繰上げ受給状況
8.6% 15.9%

 
*基礎のみとは、同一の年金種別の厚生年金保険の受給権を有しない老齢基礎年金受給権者のこと
※厚生労働省「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとに筆者作成
 

年金の繰下げ受給の注意点とは?

年金の繰下げ受給する前に、どのような注意点があるのかを、押さえておくことが重要です。注意点を把握しておけば、事前に対処法を講じやすくなりますし、繰下げ受給を行うべき適切なタイミングも、判断できるでしょう。
 
年金の繰下げ受給についての注意点は、以下の3点です。
 

●社会保険料や税金が増える
●加給年金額や振替加算額は増額されない
●繰下げ受給で年金額を増やせるのは75歳まで

 
注意点別に内容を解説します。
 

社会保険料や税金が増える

最長である75歳まで、年金の繰下げ受給を行った場合、社会保険料や税金が増える場合がありますので、注意が必要です。年金は所得となり、年金額に応じた社会保険料や税金を納付しなければなりません。年金の繰下げによって、年金額が増えても、想定したよりも手取り額が増えない可能性も高いのです。
 

加給年金額や振替加算額は増額されない

繰下げ受給をしても、加給年金額と振替加算額は、増額されません。また、繰下げ待機期間中は、受け取ることができない点にも注意しましょう。
 
加給年金とは、厚生年金の被保険者期間が20年以上ある人が、65歳に到達した際に、生計を維持している65歳未満の配偶者、または子がいる場合に、加算される年金額です。
 
振替加算とは、加給年金が打ち切られた配偶者が、老齢基礎年金を受給できる場合に、一定の基準を満たすことで、老齢基礎年金に加算された額を受け取れます。
 

繰下げ受給で年金額を増やせるのは75歳まで

繰下げ受給によって年金額を増やせるのは、最長で75歳0ヶ月までと定められています。75歳以降は、年金を繰り下げて受け取ることはできません。
 
75歳0ヶ月を過ぎた後に、年金の請求手続きを行っても、繰下げ増額率は84.0%のままで、75歳までさかのぼった年金が支払われます。また、年金の請求手続きを行わなかった場合、5年が過ぎた分の年金は時効により受け取れなくなりますので、適切なタイミングで請求手続きを行うことが重要です。
  

健康状態や資産状況を考慮して繰下げ受給をするか検討しよう

繰下げ受給によって、受け取れる年金額を、最大84.0%にまで増額することが可能になります。老齢基礎年金と老齢厚生年金の、どちらか一方のみを繰下げ受給することもできますので、老後の資金計画に合った選択をするとよいでしょう。
 
ただし、繰下げ受給で年金額を増やせるのは、75歳までですし、それまで、自分の寿命が確実に保証されているわけではありません。年金額を増やすことだけを重要視するのではなく、自分の健康状態や資産状況を考慮して、年金の請求手続きを行いましょう。
 

出典

厚生労働省 令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況

日本年金機構 年金の繰下げ受給
加給年金額と振替加算
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

 

ライターさん募集